天道日女命

天道日女命

別名：屋乎止女命、高照光姫、高光日女、祖母命

父：神皇産霊尊または、大己貴神

配偶者：天火明命、(別名)饒速日命

子：天香山命

神社：青衾神社等

天道日女命 (あめのみちひめのみこと) は、古事記、日本書紀には表記がないが、先代旧事本紀、先代旧事本紀大成経(せんだいくじほんきたいせいきょう)や、尾張氏系図に現れる女神。

概要

父は、先代旧事本紀大成経では、神皇産霊尊(かみむすびのみこと)。尾張氏系図では、大己貴神(おおなむちのかみ)。先代旧事本紀大成経に従うと、天津神、尾張氏系図に従うと、国津神となる。先代旧事本紀大成経は、偽書とされているが、名前が「天」から始まるので天津神の方が可能性は高い。

夫は、天火明命(あめのほあかりのみこと)。別名、饒速日命(にぎはやひのみこと)。

子は、天香山命(あめのかごやまのみこと)で、越後国一宮の彌彦神社の祭神。

天香山命の異母弟に石見国一宮の物部神社の祭神の宇摩志麻遅命(うましまぢのみこと)、別名、可美真手命(うましまでのみこと)がいる。

祀る神社

• 鶴岡八幡神社(西条市)

青衾神社・名古屋市熱田区白鳥

愛知県名古屋市熱田区白鳥にある神社。式内社：尾張國愛智郡青衾神社である。熱田神宮摂社。祭神は天道日女命。尾張氏系の神社である。

江戸時代には、熱田神宮摂社に「アヲブスマ」と称する社が二つあり、東六社の中のアヲブスマは、青衾と書き、日神を祀り、西六社の中のアヲブスマは、白衾と書き、月神を祀っていた。このうち、青衾社は明治になって廃絶し、白衾社が、現在、白鳥鎮座の青衾社となった。天道日女命を祀る神社だが、祭神の異説として、天魄月、饒速日命、天香語山命、天火明命など。

櫛玉比賣命神社・松山市高田

愛媛県松山市高田に鎮座する式内社。祭神は、天道日女命・御炊屋姫命だが、天道日女命一座の説もある。応神天皇の代に勅令を奉じ、物部阿佐理命が早風の国造となり、天道日女命及び、御炊屋姫命を奉斎した、とのこと。物部氏系の神社である。

國津比古命神社と、対面している。地元では、両社を合わせて「風早宮大氏神(かざはやみやのおおうじがみ)」と呼ぶ。

國津比古命神社：祭神は、饒速日命、天照国照彦天火明櫛玉饒速日尊(あまてるくにてるひこあめのほあかりくしたまにぎはやひのみこと)、宇麻志麻治命、物部阿佐利命(もののべのあさりのみこと)、誉田別命である。

山口神社・舞鶴市堂奥

祭神は天道日女命、大山祇命。海部氏系の神社である。

当社は元は一村であった｢堂奥村｣｢多聞院村｣両村の氏神であったとされる。｢多聞院村｣には天蔵神社（祭神は天道日女命の子神・天香語山命）が鎮座する。
当地は天道日女命が老後に暮らしたとされる。｢勘注系図｣には｢天道姫命 亦たの名 屋乎止女命(ヤヲトメノミコト)、亦たの名 高光日女たこひめ命(タコヒメノミコト)、亦たの名 祖母命也｣とある。
｢丹後國風土記｣残闕の｢高橋郷 本字高梯｣に以下のようにある。『｢高橋郷｣と名付けられた所以は、天香語山命が｢倉部山｣山頂に神庫(ほくら)を造り種々の神宝を収蔵し、長梯を掛けていたので｢高梯｣と云う。峰(倉部山)の頂に天蔵と称する神祠があり天香語山命を祭る。またその山口●●国に祠があって祖母祠と称する。この国に天道日女命と称する者があって、歳老いて此の地に来居まして、麻を績ぎ蚕を養ひ、人民に衣を製する道を教えたので山口坐御衣知祖母(やまぐちにますみそしりそぼ)祠と云ふ也』

現在のこの谷を一括して祖母谷と呼び、ここを流れる川は祖母谷川という、古くから祖母谷、祖保谷、ソフ谷、曽保谷などと書かれてきた、とのこと。

｢丹後国風土記｣残闕には、

豊宇気大神の教えに依り伊去奈子嶽に天降った天村雲命が、豊宇気大神を祀ろうとしたが、泥水で神饌を炊くことができなかった。ここは豊宇気大神の坐します国であるから、清地を定めて大神を斎い奉らなければならないと言って母の天道姫命(天道日女命)が子の天香語山命に矢を授けた。そして矢を放ち留まったところが清き地である大神の神託があった。その矢は矢原山に到ったので、神籬を立てて豊宇気大神を遷し墾田を定めた(大意)

とあるとのこと。

私的考察

登美夜毘売も天道日女命の別名として良いのではないだろうか。天道日女命は物部氏、尾張氏、海部氏が共通の祖神と考えていた女神で、かつ太陽女神であることが分かる。また、高照光姫を下光比売命と「同じ女神」とすれば、登美夜毘売と下光比売命の両方から出雲系、特に富氏・大国主命の系譜にも接続できる存在と考える。

名前から出雲系の天甕津日女命と同じ女神でもあると考える。とすれば尾張氏の拠点であって、真清田神社がある愛知県一宮市に、天甕津日女命を祀る阿豆良神社が共にあることも納得できる。

海部氏の神話では、息子神の天香語山命と組み合わせて活動するように思える。母と息子神が組合わされて活動する神としては、物部氏系の丹生都比売神と子神の高野御子神がいる。その類似性からみれば、天道日女命は丹生都比売神とも「同じ神」といえると考える。

下光比売命は、古くは諏訪大社上社では建御名方命の配偶神として扱われていた形跡がある。物部守屋から名をとったと推察される守屋山を神体山とする神社は物部氏と縁が深いと推察される。諏訪の下光比売命が天道日女命にごく近い女神だとすれば、系譜の上では建御名方命は出雲系の神なのだが、天道日女命の配偶神である饒速日命や天火明命に類する神というのが本来の性質なのかもしれないと考える。

とすれば諏訪氏の祖といわれる出早雄命は、宇摩志麻遅命、天香山命に類する神なのではないだろうか。

関連項目

• 下光比売命
• 丹生都比売神
• 天甕津日女命