サラマー

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サラマーSaramā)は、インド神話に登場する神話的な雌の犬である。

『リグ・ヴェーダ』にはサラマーがインドラ神の使者としてパニ族のところに派遣された話が見られる(「サラマーとパニとの対話」)。物語の詳細は不明だが、サラマーがパニの首領との対話を通じて、パニ族が奪った雌牛を取り戻すことが述べられているとされる。

また『アタルヴァ・ヴェーダ』によると、サラマーは死神ヤマに仕える2匹の番犬サーラメーヤの母であるという[1]

悪魔 kâlakâñga は天に昇りたがるため、煙突をつくり、それを利用して天に昇ろうとした。インドラ神も参加したが、糸を結んだレンガをこっそり煙突に入れ、天に昇ったとたんに、その糸を引っ張って、皆を天から落とした。結局、皆が空中に浮かぶ蜘蛛となり、そのうち二人だけは天に飛んでいって、二匹の天狗となった。この天狗がヤマに使えるサラマーの子であると同時に、太陽と月でもある[2]

英語版Wikipediaより[編集]

マックス・ミュラー、シュリ・オーロビンド、ウェンディ・ドニガーなどの学者たちは、初期ヴェーダにおけるほとんどの文献がサラマを犬として言及していないことを強調している。彼女は、パニ族が惹かれ、自分たちの姉妹になるように頼んだ、公平な足の女神なのかもしれない。ヴェーダのイメージの後世の解釈においてのみ、サラマはパニ族を嗅ぎつけ、主人を彼らのもとへ導く神聖な猟犬となるのである。シュリ・オーロビンドによれば、サラマが子孫のために食べ物を要求するフレーズは、サラマの子供たちをサラマから生まれた犬の種族と同一視して誤解されているのだという。サラマが犬であるという概念を確固たるものにしたのは、後期の讃美歌にあるサラメヤ犬 -サラマの息子- への言及である[3][4][5]

関連項目[編集]

  • 伊邪那美命:日本神話で日月の母となった女神。子供達の日月がヤマ、すなわち饕餮に相当する高御産巣日神に仕える、とされている点が一致している。
  • アングルボザ:北欧神話の日月を食べる狼の女神の母女神。
    • ハティ:北欧神話の狼の女神。月を食べる狼と考えられている。
    • マーナガルム:北欧神話の狼の女神。月を食べる狼と考えられている。
  • シームルグ;イラン神話のシームルグと名前の子音構成が類似している。
  • コルンムーメ:ゲルマン神話の「ライ麦狼」の精霊。名前の子音構成がサラマーと類似している。

参考文献[編集]

  • 天狗食日(月)考、怪異・妖怪文化の伝統と創造──ウチとソトの視点から、王鑫、2015、巻45、p74

参照[編集]

  1. 『アタルヴァ・ヴェーダ』は紀元前1500年頃から書き始められ、紀元前500年頃に、ヴェーダ本集の一部として認められた。インドの土着民族であるアタルヴァン族とアーンギラサ族の知識を伝えたものである。外来民族のアーリア系人の思想とは異なる、インド土着民族の思想がまとめられている。(天狗食日(月)考、怪異・妖怪文化の伝統と創造──ウチとソトの視点から、王鑫、2015、巻45、p74)
  2. Hymns of the Atharva-Veda, translated by Maurice Bloomfield. Atlantic Publishers & Distri, 1990,p. 500.
  3. Aurobindo (2003). "XX: The Hound of Heaven". The secret of the Veda. Pondicherry: Sri Aurobindo Ashram Publication Dept. pp. 211–22. ISBN:81-7058-714-X.
  4. Doniger, Wendy (1975). Hindu myths: a sourcebook. Penguin Classics. pp. 72–3. ISBN:9780140443066.
  5. Singh p. 143