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咽頭扁桃の役割について
 コロナに関する一般的な知識や経験が充分浸透してきたことと思いますので、このページ以外は表示しないこととします。

 コロナ感染症の後遺症の一つに慢性上咽頭炎があり、Bスポット療法という、上咽頭に直接薬剤を塗布する治療法が有効かもしれないと言われています。個人的にはこういう基本的で簡易な治療法がもっと大切にされるべきと思います。家人の一人がコロナ様感染症後、長らく慢性上咽頭炎に悩んでいましたので、このことだけ記事に残しておきます。(2024.7.27)



 人の鼻腔下部から、口腔にかけて、「扁桃」というリンパ球から成る組織が輪のように配置されており、これを「ワルダイエル咽頭輪」と言います。

舌根にある左右の舌扁桃
口蓋舌弓と口蓋咽頭弓の間にある左右の口蓋扁桃
耳管開口部の周囲にある左右の耳管扁桃
咽頭円蓋にある咽頭扁桃

です。
生体防御の最初の砦とされる。口や鼻からの感染に際して炎症を起こしやすいので臨床上重要である。(Wikipediaより)

とされています。咽頭扁桃は「アデノイド」ともいい、
6〜7歳をピークとする生理的肥大がみられ、さらに感染により肥大します。その後、自然退縮が始まり通常成人ではみられません。(学校保健より)

とのことですが、風邪を引いて「喉が痛い」とは咽頭痛のことを指すことが多いので、生体防御のリンパ系器官としての機能は成人しても残っている、と私は考えています。
そして、COVID-19感染症の場合も、初期症状として風邪様症状がありますので、一般的なコロナウイルスの場合と同様、咽頭扁桃、口蓋扁桃が最初の生体防御の盾と考えられます。
すなわち、鼻炎、咽頭扁桃を含む咽頭炎、扁桃炎(口蓋扁桃炎)がまず生じます。鼻腔はリンパ組織ではありませんが、粘膜下にはリンパ球が存在して、IgAという免疫グロブリンを産生して分泌し、感染予防のために働いています。
そして、鼻腔粘膜、咽頭扁桃、口蓋扁桃等にいるリンパ球が、侵入したウイルスという異物に対して免疫を獲得するのに大きく働いています。彼らが侵入者を解析し、侵入者を破壊する「抗体」を産生するのです。
解析が完了して「抗体」の産生が円滑に行われるようになると、ウイルスが侵入してきても、速やかに抗体が産生されてウイルスを破壊しますので感染は起きません。
だから、一般的には初感染の場合、鼻炎、咽頭炎、扁桃炎が起きている時期は、ウイルスは人間の細胞に侵入して破壊しようとしますが、人間の方はリンパ球がウイルスを解析して抗体産生の準備をしている時期といえます。
この2つの作業が同時に行われて生じる現象が「炎症」なのだと思います。
「抗体」はウイルスの種類によって一つ一つ異なりますので、新しいウイルスの侵入がある度に、新しく作られる必要があります。

 COVID-19は若年者ほど症状の軽い人が多く、年齢が上がるほど、重症化する可能性が高くなります。そして、「軽症」として隔離された人達の中にも、高熱を発し、強い「喉の痛み」に苦しんだ人達がいるそうです。
若年者と高齢者とでいったい何が異なるのでしょうか? 一番大きな差は「咽頭扁桃の活動が盛んであるか否か」なのではないでしょうか。

 これを一般的なコロナウイルス感染と比較してみましょう。「一般的」とは要するに「風邪」のことです。産まれたばかりの赤ん坊は自前の「抗体」を持ちませんので、母乳から風邪に対する抗体を貰います。
そして、母乳からの抗体が切れた頃に、風邪を引いて、その時に自力で獲得した免疫が終生続きます。この際に、重症化して肺炎を起こし、死に至る子供は希であると思います。(でも、当然0ではありません。)
だから、一般的なコロナウイルスには、赤ん坊は感染しても、静かに暖かくしておく、とか水分をとらせる、とか一般的な対症療法で、たいして重症化せずに免疫を獲得する、といえます。

 では、一方、これが大人だったらどうなるでしょうか。そこで私達は気が付かねばなりません。私達は、大人が一般的なコロナウイルスに初感染したら「どんな症状を起こすのか知らない」のです。
なぜなら、風邪はあまりにもありふれた病気であって、誰もが赤ん坊の頃に感染し、免疫を獲得しているから、大人になって初感染する人は、まずいません。

 だから、私はこう考えます。コロナウイルスやアデノウイルスといったありふれた「風邪」のウイルスの免疫獲得には、咽頭扁桃が大きく関わっており、こういう「ありふれたウイスル」の免疫を獲得するために子供の咽頭扁桃は活発に活動しているのです。
一通り一般的なウイルスに対する免疫を獲得して、大人になると咽頭扁桃はその主な役割を終えて、活動は低下し、見た目では消退してほとんど分からなくなります。
そして、大人になって活動が低下している咽頭扁桃に対して、新たな「コロナウイルスの暴露」があった際に、免疫獲得の担当者である咽頭扁桃は再び無理をして働かなければならなくなるのではないでしょうか。
高齢になって、もはや咽頭扁桃がその役割を果たせないほどに消退してしまった人は、喉での炎症がほとんど起きず、抗体が産生できないので、ウイルスはあっという間に肺まで入り込んで重篤な肺炎を引き起こします。
「軽症」と言われる人も、抗体獲得速度が遅く、鈍くなるので、抗体でウイルスを抑える力よりも、ウイルスが増殖して組織を破壊する力の方が大きくなりがちで、激しい咽頭炎、扁桃炎を起こすのではないでしょうか。

 だから、咽頭で免疫を獲得するための炎症が生じている際には、2次感染を防ぎ、体を休めて、リンパ球が抗体産生までの過程を速やかに、かつ穏やかに行うことが可能となるように、口腔内の清潔と対症療法としての咽頭の消毒は必要なのだと考えます。咽頭のウイルスの量を減らせば、それだけ組織は大量のウイルスの攻撃にさらされずに、抗体産生の努力を続けることができます。それで、COVID-19による重症化(肺炎発症)の確立を下げる可能性があると思うのです。

 私はこのように、COVID-19は生体の中で、一般的なコロナウイルスに準じる動きをするので、感染初期に、咽頭への対症療法としてルゴール液の塗布療法あるいは、それに準じる療法が有効だと考えるのです。咽頭捲綿子を使った薬液塗布に自信がなければ、せめてイソジン等でうがいをするようにお勧めするのは、このような理由です。

ご注意


 生体が免役を獲得する過程の正確な反応や機序は、多少は知識がありますし、サイトカインとか、サイトカインが出過ぎると組織破壊性が増すとか、知らないわけではないですが、ここでは詳しく書きません。
なぜなら、私が免疫学を習ったのは25年も前の話で、あんまり覚えていない上に、その知識が現在でも100%有効かどうか分からないからです(科学は進歩しますから 汗)。
でも、麻疹は子供が比較的軽症で、大人になってかかるほど重症化する、ということは覚えてます。そもそも、コロナウイルスも一般的にこの点で、麻疹と同じような性質を持つのではないかと思います。
 大人の方が(起きる人は)激しい咽頭炎が起きる、というのは、大人の咽頭扁桃は「免疫獲得のための器官」としての機能は残っていても、それが速やかに働かず、「生体防御のための器官(異物に対するサイトカイン産生等)」としての働きが優位になりすぎてしまって、恒常性のバランスが悪くなるからなんじゃないかと思いますが??? (敢えて書けば私の見解はこうなります。本来であれば、ウイルスも生体細胞も破壊するサイトカインを産生したり、抗体を産生したりして、複合的な働きでウイルスを撃退するのがリンパ系器官の役割であると思います。)

追記


 どうやら、最新の研究では、COVID-19はTリンパ球に感染するようです。(だから、どうなるのか、ということまでははっきりしていないようですが。)HIVのように、継続的にウイルスが体内に留まって、Tリンパ球を破壊し続ける、ということはないと思いますが(もし、そうだったら、世界はそれこそ急激に大量の死者が発生して、今頃大パニックになっているような???)、Tリンパ球の軽度の機能低下等は生じる可能性があるのかなあ、と思います。(そもそも、感染してもTリンパ球を破壊する、という情報は現段階ではないようです。)
 Tリンパ球の軽度の機能低下が、免疫系の脆弱さを招いて、重症化する人は、しやすくなる、ということはあるのかなあ、と思いますが、良く分かりません。そういうことが、もしあった場合は、COVID-19感染症が完治して、ウイルスが陰性になった後も、Tリンパ球の機能が回復するまで、しばらく注意して生活しないと、普通の風邪にかかりやすくなる、とかそういうことはあるのかもしれない?? とか、そういう疑問も生じます。今後の詳細な研究の結果が待たれます。(2020.4.27追記)

追記その2


 COVID-19感染症では、血管炎が生じ、血栓ができやすくなって「イタリアやベルギー、クウェートなどから、病状とは無関係に新型コロナウイルス感染症の患者に水疱瘡やしもやけのような皮膚症状が表れていることが報告されています。血管の炎症による血栓がもたらしたもの、とみられています。(コロナ感染の新たな予兆か 全身に水疱瘡やしもやけ症状が【新型コロナを正しく恐れる】)」だそうです。
 血栓ができやすくなる、ということは血小板が消費されますので、症状が乏しい初期の患者にも、血小板の低下が来る可能性はないのでしょうか。病状からPCR検査の対象外とされた人でも、COVID-19感染症の可能性を早期に発見するための鑑別の材料に血小板の値が利用できるとすれば、治療にも役立ち得ると思いますが??(2020.4.29追記)

謝辞


 咽頭扁桃が成人になると消退する組織であることと、COVID-19の年齢による症状差との関連性は考えられないだろうか、と私はある人から教わりました。
私は指摘されるまで、「COVID-19感染における咽頭扁桃の重要性」を、これほどまでとは考えたことはありませんでした。
でも、高熱が出るような激しい咽頭炎、扁桃炎が起きるということは、それもまた生体の防御反応であるはずです。
「あなたが咽頭の消毒にそれほど拘るのも、咽頭で炎症を抑えてしまえば、速やかに自己免疫が働いて、一般的な風邪は重症化しない、と経験的に知っているからではないのですか?」と言われて
「おっしゃる通りです」と思ったので、このような文書を書くに至りました。深くお礼申し上げます。
だいたい、私が慢性咽頭炎持ちで、あなたは慢性扁桃腺炎持ちなんじゃん? と思う。似たもの同士の考察の結果です。

Creation date 20/04/11-00:14 / Last modified 24/07/27-00:21


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