ハイヌウエレ
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インドネシアのウェマーレ族の神話に登場する半神半人といえる女性である。
ココヤシの花から生まれたハイヌウェレ(「ココヤシの枝」の意)という少女は、様々な宝物を大便として排出することができた。あるとき、踊りを舞いながらその宝物を村人に配ったところ、村人たちは気味悪がって彼女を生き埋めにして殺してしまった。ハイヌウェレの父親は、掘り出した死体を切り刻んであちこちに埋めた。すると、彼女の死体からは様々な種類の芋が発生し、人々の主食となった[1]。
私的考察
いわゆる「吊された女神」の一種である。
ハイヌウェレ神話の特徴は、夫に殺されたのではなく、不特定多数の人々に殺された点にある。蛇婿譚やメリュジーヌ型神話のように夫が原因で女神が消えるあるいは死ぬ場合、夫の元に子供が残されたりして、結果的に夫を利することになる。ハイヌウェレの場合は、彼女がサトイモに変化し、夫という個人ではなく、不特定多数の集団の利益に沿うようになる。ハイヌウェレの神話は、最初は
女神が夫(と子孫)の利益のために殺された
というものだったのが、
女神が集団の利益のために殺された
という形に変化する過程で作られたものではないだろうか。これは人間の祭祀でいえば、若い女性が特に選ばれて集団の利益のために人身御供にされる根拠とされ得る神話といえる。ギリシアのイーピゲネイア、ローマのウェスタの巫女と類似した性質といえる。これらの「犠牲となる女神群」の起源は、バルン女神が亡くなる時に、家族になにがしかの財産を残した、というものだったと思われるが、それが時代が下ると政治的にただ女性を生贄として殺し、利益を得ようとする口実として使われるようになったと考える。
関連項目
参考文献
- Wikipedia:ハイヌウェレ型神話(最終閲覧日:22-07-13)
参照
- ↑ 『世界神話事典』「ハイヌウェレ」の項(吉田、p. 153)