また、車輪に括るアリスイと同一の効果があるものとして、イユンクスと称する小器物もあり、魔女たちはこれを回転させて恋する相手に呪術を施したとされる<ref name="スーダ" />。イギリスの文献学者アンドリュー・シデナム・ファーラー・ゴウ(A. S. F. Gow)は古代の壷絵からイユンクスの呪具を復元している。それによるとイユンクスは小さな車輪の中央に2つの穴があって、そこに長い紐を通して結んで輪にし、両端を十分に余裕を持たせ、つまんで引っ張ることで回転させる。するとイユンクスは繁殖期の鳥のように動き回り、奇妙な音を発するという<ref>ドゥティエンヌ邦訳、p.188。</ref>。
なお、イユンクスは[[英語]]の[[ジンクス]]の[[語源]]となっているなお、イユンクスは英語のジンクスの語源となっている<ref>{{cite web|title=Iynx |accessdate=2019/06/17 |url=https://www.theoi.com/Nymphe/NympheIynx.html |publisher=, Theoi Greek Mythology}}</ref>。
== 研究 ==
イユンクスはしばしば[[イクシーオーン]]とよく似た存在であることが指摘されている。イクシーオーンはゼウスの妻ヘーラーを奪おうとしたが、企みが発覚すると車輪につながれ、「恩人には報いなければならない」と叫びながら永劫に回転し続ける罰を受けた。イユンクスはイクシーオーンの女性版ともいうべき存在でありとよく似た存在であることが指摘されている。イクシーオーンは[[ゼウス]]の妻[[ヘーラー]]を奪おうとしたが、企みが発覚すると車輪につながれ、「恩人には報いなければならない」と叫びながら永劫に回転し続ける罰を受けた。イユンクスはイクシーオーンの女性版ともいうべき存在であり<ref>ドゥティエンヌ邦訳、p.193。</ref>、両者はいずれも誘惑してはならない者を誘惑したために罰を受け、回転する車輪と関連づけられている<ref>ドゥヴルー邦訳、p.73。</ref><ref name="ドゥティエンヌ">ドゥティエンヌ邦訳、p.187以下。</ref>。同様の共通点はイユンクスの名前で呼ばれたメンテーにも見られる。これら3者について[[マルセル・ドゥティエンヌ]]は。同様の共通点はイユンクスの名前で呼ばれたメンテーにも見られる。これら3者についてマルセル・ドゥティエンヌは[[アドーニス]]に関する研究『アドニスの園』の中で[[構造主義]に関する研究『アドニスの園』の中で構造主義]の視点から論じている視点から論じている<ref name="ドゥティエンヌ" />。それによるとイユンクスとイクシーオーンはゼウスとヘーラーの夫婦関係に害を与えようとし、ミンターもまたハーデースと。それによるとイユンクスとイクシーオーンは[[ゼウス]]と[[ヘーラー]]の夫婦関係に害を与えようとし、ミンターもまたハーデースと[[ペルセポネー]]の夫婦関係に害を与える存在として語られており、彼らは儀礼的・神話的に結婚を象徴する神々の夫婦に対して、その仲を引き裂いて自らと結びつけようとする誘惑者であり、[[カリス]](優美)とペイトー(説得)の2つの対立概念の社会的文脈の中に位置付けられていると論じている<ref name="ドゥティエンヌ" />。
== 脚注 ==