「'''龍船の意味'''」。このように見ていくと、ミャオ族の「龍船」、諏訪大社下社の「お舟」の意味は「'''魂を運ぶ器'''」という意味のようである。豊穣を願う祭祀の場合は、神々の魂を招じ入れて「'''豊穣をもたらしてくれる神'''」として化生させる「壺」の役割を果たすのではないだろうか。アボリジニの虹蛇[[エインガナ]]は、人々をいったん飲み込んで、「自らの僕」に化生させて外に放つ、とされる。「舟」とは、広く死者(特に溺死者)の魂を水の中からすくい上げて、供養し、良くいえば日本風だと「成仏させる」とか、「新しい来世に送り出す」とかそのような意味を持つ装置となると考えるが、呪術的にいえば、「舟の龍神(そして舟の持ち主である人間)」にとって都合の良い使役霊に作り替える、という意味があるように思う。いわば「'''[[蠱毒|蠱術]]'''」の一種である。
そして、台湾原住民の伝承によれば、首狩りにおいて「'''敗者の魂'''」は「'''勝者の僕'''」となるともされている。ミャオ族の伝承では、「龍船」とは亡くなった悪龍が改心して変化したものとされるが、「殺された敗者」が毎年自らの魂をすくい上げて、「豊穣の神」に化生して放つとは考えにくい。敗者には、そのようね権利がそもそも許されないのではないだろうか。「龍船祭」での勝者は、現在の伝承では'''クーポゥ'''である。ということは、'''クーポゥ'''もまた「'''龍神'''」であって、彼が勝者の権利として、死した龍神達を食べ、その魂を自らの使役霊に作り替えた。それを記念し、その祭祀を子孫達も引き続き続けているのが「龍船祭」および「お舟祭」なのではないだろうか。子孫は子孫で、先祖が手に入れた「使役霊」を引き続き「豊穣の神」として使役したいのではないだろうか。だから、「龍船」とは、'''伝承の上からは'''、「'''勝者であるクーポゥ'''」の化身とするのが妥当なのではないだろうか。
台湾ルカイ族の伝承では、[[盤瓠|スアブ]]という祖神は、洪水を起こすけれども、洪水を鎮めもするし、[[人身御供]]を要求して、自ら使役霊を作り出すことを望むように思える。また、中国神話の[[河伯]]も、豊穣や治水の安寧のために[[人身御供]]を求める。彼らは彼らで、自らの使役霊を毎年人々に求めながら、それを使って豊穣をもたらしたり、治水を行ったりする神と考えられていたのではないだろうか。
=== ミャオ族起原2・龍神と牛神 ===