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5,446 バイト追加 、 2025年2月9日 (日)
=== おかねの恩返し ===
昔、八丁島に爺さんと婆さんが暮らしていた。ある日、旅の若者が夕立にあい、一晩泊めちくれるよう頼んだ。貧乏な老夫婦は人が良かったので、たいした世話はできないが泊めることにした。
 
夕飯時に、裏口から美しい娘が入ってきて晩のおかずの魚の煮付けを婆さんに渡した。若者は娘に一目惚れしてしまった。娘は「おかね」という名で一人者だということだった。老夫婦が二人に結婚を勧め、若者と娘は結婚することにした。
 
おかねの小屋で二人は仲良く暮らし、一年後に男の子が生まれた。子供が産まれたが、不思議なことにおかねは毎晩外に出かけていく習慣があり、それを止めなかった。不思議に思った夫がある晩後をつけると、妻は蛇の姿に変身して、とある池の中に入っていった。
 
 
 
 
 ある朝早よう、「おかね」ん草 履ば見たら、雨も降らんとにぬれとるけ男は不思議に思うて、その晩、晩ち言うてん真夜中、おかねが いつもんごつ、こそっと起きて出て行く後ばつけち行た。おかねはつけられとっとば知らんな池ん中に 蛇になって入って行った。そりもんぢゃけ、男はピックリして家さん帰り、じーっとおかねが帰ってく っとば待っとって、蛇になった姿ば見たがどげんなっとっとかち聞いた。
 
 おかねは泣きながら「私はあ の池の大蛇ですが、私が小さい時、親の言つけば守らんな、人間の世界ば見ろでちして池から出て這い 回りよったとこば子供どんにひつかまって殺さるでちしました。そん時、あんたが通りかゝって私を助 けてくれました。そっで御恩返しばしゅうち、娘ん姿になってあん村に住みつき、あんたに会うため毎 晩おかずば届けによって待っとったつです。会うて話て見っとあなたがあんまりやさしいけんつい蛇の 身であるこつも忘れて夫婦になり子まで出来てしまいました。
 
 そっでも、あの池の主である私は一日一 回は必ず池に戻って勤めば果さねばなりません。私の本性ば貴男に見られたからにゃもう人間界に住む こつが出来まっせんので今夜でお別れです」ち涙ばボロボロ流して言うた。男は「子まで出来たつに、何とか思い止まってくれ、男手でこの乳飲児ばどげんして育てらりゃうか」ち、かき口説(クドイ)たばって、女ごは子供ば抱いて泣くばっかりぢゃった。
 
 いよいよ日の暮れち別るる時になった。女はきれ いか玉ば一つ(イッチョ)男に差し出して、「もしこん子が泣く時ぁこん玉ばシャブらしてくれんの。 子供ばお頼みします」ち言うて泣き泣き池さん帰って行った。
 
 女が言うたごつ子供が泣く時、もろた玉ばねぶらすっとぴたっと泣き止み、乳もなかつにすくすく子供は育って、二つになった時、あんまり不 思議かけ、村ん者が、子が持っとる玉ばダマクラかして取り上げた。
 
 さーそりから子は火の付いたごつ 泣いて、どげんちょーくらかしてん泣き止まん。男は往生してその晩、子ば抱いて池んとこまで来た。 池の主は子の泣声が聞えたつか、蛇の姿ば見せち「どうしてそう泣かすっとですか」ち男に聞いた。男 は村ん者に玉ば取られたこつば話した。
 
 蛇は悲しんで「あの玉は実は私の目玉です、も一つ目玉はあり ますが、盲になつたらもう龍になることはできません。子が泣いていて可哀そうですが、私にはもうど うするこつも出来ません」ち泣いて水に又沈んでしもうた。男はその言ば聞いて、生きっとったっちゃ 何の楽しみがあろうか、そりより夫婦揃うて池の中で子ば育てたがよっぽどましち、子供ば抱(ウダ) いて身投げしてしもうた。
 
 そりからこん村にゃ不幸なこつの続いて、大水の入ったり、明けん年ぁ干照 りの続いたりでとても難儀するごつなった。悪か病気の流行ったり、火事で家焼かれたり、子供だん夏 なっとおぼくれち五人も十人も死ぬ。村ぢゃ、なしてこげん不幸難儀ん続くか原因がわからんな、とう とう祈祷師ば頼うで祈ってもろうたところ、「五年前から池の主の崇りぢゃ、毎年十一月廿日に十才に なる男ん子ば一人ずつ池の主に人身御供すれば、その明ん年は無事であろう」ち言う告げが出た。
 
 さー そりからムゾなげ一年に一人ずつ男ん子ば人身御供で池に沈めよったが、あんまりムゾかけ、ちょうど 通りかかった全国行脚の坊さんに相談した。坊さんな「米三石三斗を人身御供の変りに池に供えれは良 いであろう」ち教えて立ち去らしゃった。坊さんの言われた通り米ばお供えしたら明の年は無事、息災 、五穀万作ぢゃったけん、次の年からそげんするごつなった、ち言う話。
== 神事 ==

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