静岡県磐田市見付にある矢奈比売神社の祭神は'''矢奈比売大神'''あるいは八野若日女命という。矢奈比売神社には、『「白羽の矢」が立った娘を生きたまま柩に入れて、'''8月10日'''の真夜中に見付天神へ供え、供えられた娘は、生贄として地響きと共に現れた怪神によって食い殺されるという恐ろしいしきたりがあった。これを破ると田畑が荒れ里が凶作に苦しむことになるため里人は泣く泣くこのしきたりを守っていた。 』という恐ろしい伝承がある。現在は『矢奈比売神社の祭神が遠江の総社である淡海國玉神社へ渡御する神事を中心とする祭で、旧暦'''8月10日'''直前の土曜・日曜に開催される。』という見付天神裸祭が行われている。矢奈比売が「白羽の矢」の娘に見立てられていることは明らかと思われる。矢奈比売を食い殺す怪物は猿の妖怪である。猿には農耕神、水神の性質があり、いわゆる「猿の嫁」の伝承は各地に見られる。「白羽の矢」の祭祀は「猿の嫁」の延長線上にあるといえる。「猿の嫁」の猿神は畑仕事を手伝う代わりに娘を嫁に求める。逆に娘を嫁にやらねば、虫害、干ばつなどの祟りを起こすと考えられたのだろう。そして、水神、農耕神の性質を持つ神としてまず考えられるのは、淡海國玉神社の主祭神である大国主命かもしれない。しかし、もう一柱候補がいるように思う。それは'''須波若御子神社'''の'''須波若神'''である。諏訪神には複数の息子神がいるため、見付の「'''須波若御子'''」が長野県で語られる子神のうちの一つに該当するのか、見付独自のオリジナルな神なのかは一見すると判別がつきにくい。
矢奈比売神社の境内内に霊犬・悉平太郎が祀られており、これは長野県では早太郎と呼ばれる。長野市信州新町竹房大門の武富佐神社には「'''速瓢神(はやちかみ)'''」という神が祀られている。管理人はこれを「'''疾風神'''」と呼び、長野県では「早太郎(はやてたろう)」、静岡県では「疾風太郎(しっぷうたろう)」と呼ぶと考える。また、諏訪では少なくとも'''出早雄命'''と'''小萩命'''という二柱の犬神を信仰していたと考える([[赤衾伊農意保須美比古佐和氣能命]]を参照のこと)。'''出早雄命'''と「早」が名につく神が「早太郎」に相当する、と思う。とすれば、それと対になる「犬神」がもう一柱いると考えても不思議ではない。とすれば、見付の「と「早」が名につく神が「早太郎」に相当する、と思う。とすれば、それと対になる「犬神」がもう一柱いるのではないだろうか。とすれば、見付の「'''須波若御子'''」とは'''小萩命'''のことで、この「早」の字がつかない'''小萩命'''とは、祟り神的な犬神のなのではないだろうか。「'''人身御供を求める水神、農耕神の猿神'''」とは、この猿神と同じ性質を持つのだろう。」とは、この小萩命という犬神と同じ性質を持つのだろう。
長野市篠ノ井有旅には犬石という地名があり、この犬石には、祟りを起こした、という伝承や「産土神が犬に追われ里芋で滑りゴマで目を突いた」を持つ([[布施八龍大権現]]を参照のこと)。この祟りを起こす犬神が'''小萩命'''のことと考える。犬石地区には、雨乞いの祭祀として「長年寺の薬師さんと寺の地蔵(水地蔵ともぬれ地蔵ともよばれる)とを抱き合わせて荒縄でがんじからめに縛り、それを弁天井戸(別名長者の井戸)に沈める。」ということを行っていたそうで、かつて'''雨乞いに関して人身御供の祭祀があった'''ことを伺わせる。これは干ばつを起こす'''小萩命'''に人身御供を捧げないと「'''田畑が荒れ里が凶作が起きる'''」と考えられていたからではないだろうか。すなわち、'''矢奈比売を食う神が、悪しき犬神である「小萩命(須波若神)」だとすれば、静岡県磐田市見付の祭祀と、長野市篠ノ井有旅犬石の祭祀は一致する'''のだ。そして「早太郎」は小萩命(須波若神)と拮抗する性質を持つ良き犬神なのだ。