甘基王

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甘基王(ガンジ王)とはヤオ族の伝承上の英雄王のことである。日本でいうところの「桃太郎」のような英雄と考える。

甘基王(ガンジ王)[編集]

昔、ヤオ山にタン・ファダン(譚華丹)という射手がいた。結婚して間もなく、彼は皇帝バオ・メイリウに召されて将軍になった。

10年以上の後、タン・ファダンは白馬に乗って妻に会いに家に帰った。村のそばの川のほとりで15、6歳の少年が魚を弓矢で射ているのを見てとても驚いた。タン・ファダンは馬に乗って若者に叫んだ。「私の馬の足を射てみよ。」若者の射た矢は馬の足に当たり、負傷した馬は主人を振り落とした。怒ったタン・ファダンは少年を縛り上げ、大きな石の上に乗せて家に帰った。その頃、空には12個の太陽があり、地面はとても暑かったので、しばらくすると、若者は焼けて死んでしまった。

タン・ファダンは家に帰ると、川のほとりで若者に会ったことを妻に話した。妻は青くなって言った。「それはあなたの息子で、留守にしている間に生まれたのです。息子はあなたのことをとても慕っていて、毎日弓矢の練習をして魚を撃ち、あなたの帰りを待っていました。」

タン・ファダンは急いで大きな岩に向かったが、息子は太陽に焼かれて灰になっていた。激怒したタン・ファダンは、息子の弓矢を拾い、空にある12個の太陽をすべて撃ち落とした。突然、世界は真っ暗になり、いたるところに毒蛇や猛獣が蔓延り、人々は昼と夜の区別がつかなくなり、家の中に隠れて外に出る勇気もなくなった。その後、タン・ファダンの妻は霊薬で太陽を蘇らせ、空に戻した(この種の薬草は今でもヤオ族の間で「太陽を救う草」と呼ばれている。干ばつに強い薬草とのこと)。

少年は太陽の下で死んだ後、霊となって母親の体に戻った。彼の母親は彼を出産するまで3年間妊娠していた。生まれたとき少年はヒキガエルの姿で「ガンジ(甘基)」と名付けられた。

メリ国(莫立国)という国がバオ・メイリウの国を侵略した。敗戦の連続だったので、バオ・メイリウは各地に張り紙を出し、皆で力を合わせて敵を守るよう呼び掛け、軍を率いて敵を倒す者には若く美しい第三王女を与えると述べた。

タン・ファダンが負け戦の後、再び家に戻ると、今度は新たな息子が妊娠3年後に生まれ、すぐに言葉を話せるようになったと告げられた。タン・ファダンはとても喜んだが、息子の気配がなかったので、玄関でガンジの名前を大声で呼んだ。すると、家の前の池から大きなヒキガエルが出てきた。妻は、これが息子だと告げた。大きなヒキガエルは「アバ」と叫び、テーブルのそばにしゃがんだ。

タン・ファダンは醜い息子に憤り、長いナイフを抜いてガンジを殺そうとした。ガンジはテーブルの上に飛び上がり、父親に三度お辞儀をして、「アバ、どうか私を殺さないでください。私は敵を倒して第三王女と結婚してみせます! どうか私を皇帝に会いに連れて行ってください!」と言った。父は息子の言葉を疑ったが、ガンジを宮殿に連れていった。

皇帝はガンジを疑い、ただちに9000人の勇士と150人の兵士を召集し、ガンジと戦わせた。ガンジは兵士たちの間を、傷つくことなく飛び回った。ガンジが鳴くと、すぐに大雨と雹が降り始め、兵士たちは散り散りになった。ガンジの有能さを認めた黄帝は、メリ国を攻撃するよう命じた。ガンジは39人の兵士だけを選んで出発した。メリ国は海の真ん中の島に建っていたが、ガンジはタロイモの葉に乗って海を渡った。

ガンジは大きな木の頂上に飛び上がった。ガンジが鳴くと、突然、空に黒い雲が広がり、激しい雨が降り始めた。激しい雨が7日も7晩も続き、兵士たちは全員疲れきって弱り、木を斧で切り倒しようとした。ガンジはすぐに地面から飛び降り、石炭を口に含んだ。そして宮殿に飛び込み、宮殿に火を放った。兵士たちは慌てて消火しようと宮殿に駆けつけたが、火はますます強くなり、皇帝と兵士は全員焼き殺された。

ガンジはメリ国を滅ぼした後、第三王女を求めて皇帝のもとに戻ってきた。皇帝は彼の醜さを見て、第三王女との結婚を拒否した。ガンジは皇帝が第三王女との結婚を拒否したので激怒したが、仕方なく毎日川に浸かって心を落ち着かせていた。

第三王女はガンジが一人でメリ国を破ったのを見て、彼をとても尊敬した。しかし父親は約束を破り、ガンジに娘をやらなかったので、第三王女はガンジに同情した。ある日、第三王女はガンジに会いたくてこっそり川に行った。彼女はガンジがヒキガエルの服を脱いでとてもハンサムな青年に変わったのを見て驚き、嬉しくなり、急いで父親に報告に戻った。娘の報告を聞いた後も皇帝はそれを信じず、結婚を許さなかった。皇帝が約束を守るつもりがないのを見て、ガンジは宮殿に行き、ヒキガエルの服を脱いで本当の姿を現した。これに皇帝は気を失いそうになるほどの衝撃を受けた。

皇帝はなぜこの醜いヒキガエルの皮を今まで脱がなかったのかとガンジに尋ねると、ガンジはこう答えた。

「これを着れば風と雨を呼ぶことができる。」

皇帝はそれがとても面白いと思ったので、遊んで楽しみたいと思い、ガンジの皮と皇帝の着る龍衣を交換した。ところが、カエルの皮は一度着たら脱げなくなり、カエル皇帝は溝に飛び込むしかなくなった。

ガンジは龍衣をを着て皇帝となり、第三王女と結婚して幸せな人生を送った。カエル皇帝は、約束を破ったのでカエルに変えられてしまった。彼は誰にも会うのを恐れて今も溝の中に隠れている[1]。(広東省連南ヤオ族伝承)

参考文献[編集]

  • 甘基王、王焰安的个人空间、王焰安(最終閲覧日:24-11-21):伝承の内容を詳細に紹介されていて、素晴らしいと思う。多謝。

脚注[編集]

  1. 甘基王、王焰安的个人空间、王焰安(最終閲覧日:24-11-21)