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ページの作成:「'''ヤマ'''({{lang-sa|यम}} {{IAST|Yama}})は、インド神話における人類の始祖であり、また死者の主。仏教閻魔はヤマに…」
'''ヤマ'''({{lang-sa|यम}} {{IAST|Yama}})は、[[インド神話]]における人類の始祖であり、また死者の主。[[仏教]]の[[閻魔]]はヤマに由来する。

== 名称 ==
「ヤマ」とはサンスクリットで[[双子]]を意味する。[[インド・イラン]]([[:en:Indo-Iranians|Indo-Iranian]])共通時代にまで遡る古い神格で、『[[アヴェスター]]』の聖王[[ジャムシード|イマ]](中世・近世[[ペルシア語]]で'''ジャム'''、あるいは「輝けるジャム」の意味で'''[[ジャムシード]]'''とも呼ばれる)や[[北欧神話]]の巨人[[ユミル]]と同起源である<ref>Julius Pokorny. Indogermanischer etymologisches Wörterbuch p.505.</ref><ref>『神の文化史事典』、pp. 91([[#青木 2013|イマ]])、545([[#沖田 2013|ヤマ]]).</ref>。

== 人類の始祖 ==
『[[リグ・ヴェーダ]]』10.10の「ヤマとヤミーとの対話」は、ヤマとその妹ヤミー([[:en:Yamuna in Hinduism|Yami]])の双子の兄妹による会話体の作品である。ふたりは[[ヴィヴァスヴァット]]の子で、母は[[トヴァシュトリ]]の娘{{仮リンク|サラニュー|en|Saranyu}}とされる。この作品においてヤミーはヤマに子孫を残す必要性を訴えて結婚を迫るが、ヤマは[[兄弟姉妹婚]]が[[ミトラ (インド神話)|ミトラ]]神と[[ヴァルナ (神)|ヴァルナ]]神の定めた天則に沿わない行為だとして拒む<ref name="辻訳p80" /><ref>『[[#沖田 2013|神の文化史事典]]』、p. 548(ヤミー).</ref>。なお[[辻直四郎]]によれば、この対話形式の讃歌は人類の起源を説明しているものの、詩の作者が[[近親相姦]]という倫理に反する表現を回避しているという<ref name="辻訳p80">『リグ・ヴェーダの讃歌』、p. 80([[#辻訳 1967a|ヤマとヤミーとの対話]]).</ref>。

彼らから最初の[[人類]]が生まれたとされるが、ヴェーダにおいて人間の祖の役割を果たしているのは通常[[マヌ]]であり、ヤマは基本的に死者の主として扱われる{{sfn|Oldenberg|1988|p=138}}。[[ミトラ (インド神話)|ミトラ]]と[[ヴァルナ (神)|ヴァルナ]]、[[アシュヴィン双神]]のように、本来はマヌとヤマも対になる神であったとも考えられる<ref>{{citation|url=https://iranicaonline.org/articles/jamsid-i|author=Prods Oktor Skjærvø|chapter=JAMŠID i. Myth of Jamšid|title=[[イラン百科事典|Encyclopædia Iranica]]|year=2012|volume=XIV, Fasc. 5|pages=501-522}}</ref>。

== 死者の主 ==
人類の始祖が死者の主になった理由については、以下のように説明される。ヤマは人間で最初の死者となり、死者が進む道を見いだした<ref>「[[#辻訳 1967a|ヤマ(死者の王)の歌]]」、p. 75.</ref>。そして死者の国の王となった<ref name="T"/>。

ヤマの死は昼夜の起源ともなった。[[ヤジュル・ヴェーダ|黒ヤジュルヴェーダ]]の『マイトラーヤニー・サンヒター』(1・5・12)の伝えるところでは、ヤマが死んだ頃はまだ[[夜]]が無かった。悲しみに暮れるヤミーは、神々に慰められるたびに「ヤマは今日死んだ」と言っては泣いた。神々はヤミーがヤマを忘れられるように、今日を昨日とすべく夜を作り出したので、ヤミーは立ち直ることができたという<ref>「[[#辻訳 1967b|昼夜の起原の物語]]」、p. 145.</ref>。

ヤマは虚空のはるか奥に住むという。インドでは、古くは生前によい行いをした人は天界にあるヤマの国に行くとされた。そこは死者の楽園であり、長寿を全うした後にヤマのいる天界で祖先の霊と一体化することは、理想的な人生だと考えられていた<ref>『[[#沖田 2013|神の文化史事典]]』、pp. 545-546(ヤマ).</ref>。

後にヤマの世界は地下だとされ、死者を裁き、生前に悪行をなした者を罰する恐るべき神と考えられるようになった<ref name="沖田2013p546" />。神犬[[サラマー]]から生まれた<ref name="沖田2013p546" />4つ目で斑の2匹の犬<ref>草野巧『地獄』p.147.</ref><ref>「[[#辻訳 1967a|ヤマ(死者の王)の歌]]」、p. 76.</ref>サーラメーヤ([[:en:Sarama|Sarameya]])を従える<ref>蔡丈夫『インド曼陀羅大陸』p.108.</ref>。

== 図像学 ==
現在のインドでは、青い肌で[[スイギュウ|水牛]]に乗った姿で描かれる(本来は黒い肌だが美術上の様式として青く描かれる)。
<gallery>
ファイル:Yama on buffalo.jpg|19世紀前半
ファイル:Yama deva.JPG|19世紀中頃
</gallery>

== 脚注 ==
{{reflist|25em|refs=
<ref name="T">山北篤監修『[[#東洋神名事典|東洋神名事典]]』p.350.</ref>
<ref name="沖田2013p546">『[[#沖田 2013|神の文化史事典]]』、p. 546(ヤマ).</ref>
}}

== 参考文献 ==
* {{Cite book|和書 |title=神の文化史事典 |editor=松村一男他|editor-link=松村一男 |publisher=[[白水社]] |date=2013-02 |isbn=978-4-560-08265-2 }}
** {{Wikicite|ref=青木 2013|reference=[[青木健 (宗教学者)|青木健]] 「イマ」、pp. 91-92. }}
** {{Wikicite|ref=沖田 2013|reference=沖田瑞穂 「ヤマ」、pp. 545-546. 「ヤミー」、p. 548. }}
* {{Cite book |和書 |author=桂令夫ほか|authorlink=桂令夫 |others=[[山北篤]]監修 |title=東洋神名事典 |publisher=[[新紀元社]] |series=[[Truth In Fantasy]]事典シリーズ 7 |date=2002-12 |isbn=978-4-7753-0123-4 |ref=東洋神名事典 }}
* {{Cite book |和書 |author=蔡丈夫 |title=インド曼陀羅大陸 - 神々/魔族/半神/精霊 |publisher=新紀元社 |series=Truth In Fantasy 11 |date=1991-12 |isbn=978-4-88317-208-5 |ref= }}
* {{Cite book |和書 |author=草野巧 |title=地獄 |publisher=新紀元社 |series=Truth In Fantasy 21 |date=1995-12 |isbn=978-4-88317-264-1 |ref= }}
* {{Cite book |和書 |title=ヴェーダ アヴェスター |others=訳者代表 [[辻直四郎]] |publisher=[[筑摩書房]] |series=世界古典文学全集 第3巻 |date=1967-01 |id={{全国書誌番号|55004966}}、{{NCID|BN01895536}} }}
** {{Wikicite|ref=辻訳 1967a|reference=辻直四郎訳 「ヤマ(死者の王)の歌(10・14)」(リグ・ヴェーダの讃歌)、pp. 75-76. 「ヤマとヤミーとの対話(10・10)」(リグ・ヴェーダの讃歌)、p. 80. }}
** {{Wikicite|ref=辻訳 1967b|reference=辻直四郎訳 「昼夜の起原の物語(マイトラーヤニー・サンヒター 1・5・12)」(ブラーフマナ散文の挿話)、p. 145. }}
* {{cite book|last=Oldenberg|first=Hermann|authorlink=ヘルマン・オルデンベルク|title=The Religion of the Veda|year=1988|others=translated by Shridhar B. Shirotri|publisher=Motilal Banarsidass|ref=harv}}

{{DEFAULTSORT:やま}}
[[Category:インド神話]]
[[Category:冥界神]]
[[Category:ヒンドゥー教]]

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