エウリーピデースの悲劇『バッカイ』の中では次のような物語がある。ディオニューソスは故郷であるテーバイで、叔母にあたる[[アガウエー]]、[[アウトノエー]]、[[イーオー]]が母セメレーを中傷していることに怒り、信女たちを引き連れてテーバイを訪れ、現地の女たちを狂わせて山中で生活させていた。それを知った王[[ペンテウス]]はディオニューソスの神性を信じず、また彼の祭儀を淫らでいかがわしい物に違いないと決めつけた。彼はディオニューソスを捕えて問答し、その結果、その「いかがわしい」祭儀を覗きたい欲求に駆られて、唆されるままに山へと赴く。そしていざ盗み見ようという時、ディオニューソスの指示で一斉に飛び出した信女達の手によって、八つ裂きにされてしまうのだった。彼を八つ裂きにした女達の指揮を執っていたのは、ペンテウスの母アガウエーであった<ref group="私注">身内を殺す点も中国神話の[[啓]]と類似している。</ref>。
また、彼は海賊に捕らえられたこともある。ディオニューソスを高貴な生まれの貴公子と勘違いした海賊に捕らえられ、船上に連れて来られた。海賊達は彼を縄で縛ろうとしたが、自然と緩くなってしまい、何度試みてもうまくいかない。ここで海賊の一人ヘカトールがディオニューソスの神性に気付き、助け出そうとしたが、時既に遅し、海賊船に葡萄酒が満ち、葡萄の蔓が絡みついて、房がたわわに実ったのである。その上、ディオニューソスは獅子へと変じ、船の中央に熊を召喚した。それに度肝を抜かれた海賊たちは海へと飛び込み、そのままイルカへと変貌させられてしまった。ただし、いち早くディオニューソスに気付き、助けだそうとしたヘカトールだけは助かり、彼はその後ディオニューソスの熱心な信者になったまた、彼は海賊に捕らえられたこともある。ディオニューソスを高貴な生まれの貴公子と勘違いした海賊に捕らえられ、船上に連れて来られた。海賊達は彼を縄で縛ろうとしたが、自然と緩くなってしまい、何度試みてもうまくいかない。ここで海賊の一人ヘカトールがディオニューソスの神性に気付き、助け出そうとしたが、時既に遅し、海賊船に葡萄酒が満ち、葡萄の蔓が絡みついて、房がたわわに実ったのである。その上、ディオニューソスは'''獅子'''へと変じ、船の中央に'''熊'''を召喚した。それに度肝を抜かれた海賊たちは海へと飛び込み、そのままイルカへと変貌させられてしまった。ただし、いち早くディオニューソスに気付き、助けだそうとしたヘカトールだけは助かり、彼はその後ディオニューソスの熱心な信者になった<ref group="私注">自らを信仰しない者に死や罰を与える、という苛烈な思想がディオニューソス信仰にはあることが分かる。その一方で信者に対しては酒を与えて、「狂気」に陥らせる神であるともいえる。みな、酒ほしさに身内でも殺す、ということはあったかもしれないと思う。</ref><ref group="私注">ディオニューソスには「'''熊'''」を召喚し使役することができる神とされている。熊はアルテミスのトーテムである。</ref>。
こうして熱狂的な信者を獲得し、ディオニューソスは世界中に自分の神性を認めさせた。更に、冥界へと通じるとされる底無しの湖に飛び込んで、死んだ母セメレーを冥界から救い出し、晴れて神々の仲間入りをしたという<ref>ディオニューソスの境界神としての性質を示す。</ref>。