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、 2022年9月23日 (金) 15:04
'''女媧'''(じょか、Nüwa)は、古代中国神話に登場する人類を創造したとされる女神。三皇の一人に挙げる説がある。姓は風 (姓)(风姓)、[[伏羲]]とは兄妹または夫婦とされている。
== 概要 ==
姿は蛇身人首('''龍身'''人首)であると描写される文献が残されており、漢の時代の画像などをはじめそのように描かれている<ref name="開闢">袁珂 著、鈴木博 訳『中国の神話伝説』上、青土社、1993年 108-115頁</ref>。笙簧(しょうこう)という楽器の発明者であるともされる<ref name="中国"/>。
『説文解字』での解説をはじめ、女神であるとされるのが一般的である。『世本』「氏姓篇」のように性別を男としている例(「弟」と示されており、「女」という氏族であることから「女皇」と称されたという)も見られ、伏羲の配偶者・女神として描かれる文献が確認される時代が新しいものであった点から、「性別は本来は男であった」とされる説が中国などの学者間でも強く存在していたが、考古学方面での墳墓の壁画や石棺・帛画などの発見や人類学方面での伝承の採集により、女媧は女神として存在していたという説が主流となるに至っている<ref name="聞石室">袁珂 著、鈴木博 訳『中国の神話伝説』上、青土社、1993年 409頁</ref><ref>聞一多 、〈訳註〉中島みどり 『中国神話』 平凡社 〈東洋文庫〉1989年 12-22頁</ref>。
婚姻制度を作ったともされ男女を結婚させ子孫繁栄したことから婚姻の女神、楽器を作ったことから音楽の女神ともされる<ref>{{Cite web |url=https://older.minpaku.ac.jp/museum/showcase/media/ibunka/181 |title=創世神話(5) ─ 女娲―中国の創生女神─ | 国立民族学博物館 |accessdate=2022-01-23 |website=older.minpaku.ac.jp}}</ref>。
== 人類創造 ==
人間をつくった存在であるとされており、女媧が[[泥]]をこねてつくったものが人類のはじまりだと語られている(搏土造人、抟土作人)。[[後漢]]時代に編された『[[風俗通義]]』によると、つくりはじめの頃に黄土をこねてていねいにつくった人間がのちの時代の貴人であり、やがて数を増やすため[[縄]]で泥を跳ね上げた飛沫から産まれた人間が凡庸な人であるとされている<ref>{{cite wikisource|title=太平御覽/0078|wslanguage=zh}}</ref><ref name="松村">[[松村武雄]] 『中国神話伝説集』 [[社会思想社]] 1976年 54-57頁 ISBN 4-390-10875-1</ref>。『[[楚辞]]』「[[天問]]」にも「女媧以前に人間は無かったが女媧は誰がつくったのか」という意味のことが記されており、人間を創造した存在であるとされていた<ref name="中国">袁珂 著、鈴木博 訳『中国の神話伝説』上、青土社、1993年 130-136頁</ref>。また『[[淮南子]]』「説林訓」には70回生き返るともあり、農業神としての性格をも持つ。
伏羲と共に現在の人類を生みだした存在であると語る神話伝説も中国大陸には口承などのかたちで残されている。大昔に天下に大洪水が起きるが、[[ヒョウタン]]などで造られた舟によって兄妹が生き残り、人類のはじめになったというもので、この兄妹として伏羲・女媧があてられる。このような伝説は[[苗族]]や[[チワン族]]などにも残されている<ref name="開闢"/>。[[聞一多]]は、伏羲・女媧という名は葫蘆(ヒョウタン)を意味する言葉から出来たものであり、ヒョウタンがその素材として使われていたことから「笙簧」の発明者であるという要素も導き出されたのではないかと推論仮説している<ref name="聞">[[聞一多]] 、〈訳註〉[[中島みどり]] 『中国神話』 [[平凡社]] 〈[[東洋文庫 (平凡社)|東洋文庫]]〉1989年 87-97頁</ref>。
== 天地修復 ==
『[[淮南子]]』「覧冥訓」には、女媧が天下を補修した説話を載せている。古の時、天を支える四極の柱が傾いて、世界が裂けた。天は上空からズレてしまい、大地は割れ、すべてを載せたままでいられなくなった。火災や洪水が止まず、猛獣どもが人を襲い食う破滅的な状態となった。女媧は、五色の石を錬(ね)りそれをつかって天を補修し(錬石補天)、大亀の足で四柱に代え、黒竜の体で土地を修復し、芦草の灰で洪水を抑えたとある<ref name="松村" />。
== 祭祀 ==
武梁祠などの石室に画像が描かれている(武氏墓群石刻)。下半身が蛇体となった姿をしており、女媧と伏羲とがからみあった形状で描かれる。[[清]]の時代には瞿中溶によって『漢武梁祠画像考』が編まれている<ref name="聞石室" />。
[[道教]]に取り込まれてのち仏教の[[神仏習合]]の理論の上では、[[阿弥陀如来]]によって遣わされ、出現したばかりの地上の世界を造った中国の伝説上の存在として伏羲と共に説かれた。日本でも仏教側の立場から編まれた神道論集の一つである『諸神本懐集』(14世紀)では女媧の本地は宝吉祥菩薩([[勢至菩薩]]・月天子)であるとの[[唐]]の時代の説が収録されている<ref>[[大隅和雄]] 編 『中世神道論』日本思想大系19巻 [[岩波書店]] 1977年 203-205頁</ref>。
女媧と伏羲の組み合わせが地上のはじめの男女であるという定義は中国の民間宗教にも広く用いられており、『龍華経』でも人間たちの祖先としてつくりだされた世のはじまりの陰陽一対の存在の名として張女媧と李伏羲<ref>沢田瑞穂 『校注 破邪詳弁』 道教刊行会 1972年 170頁</ref>という名が記されている。
== 日本への伝来時期 ==
日本における文献への登場例は、『[[続日本紀]]』(巻3)[[慶雲]]3年([[706年]])11月3日条に、[[文武天皇]]が[[新羅]]国王に対し、「漸無練石之才」と女媧による錬石補天を引用した文書を送っていることから、少なくとも律令時代には認識されていたことがわかる。
[[道教]]に組み込まれた上での女媧・伏羲についての信仰が日本に渡来した時期に関しては、早い時期で[[紀元前1世紀]]([[弥生時代]]中期)説がある。鳥取市の歴史研究家の小坂博之の考察によれば、[[鳥取県]][[国府町 (鳥取県)|国府町]]所在の[[今木神社]]が所有する線刻された石に描かれた胴が長い人絵が女媧・伏羲に当たるとしている(石の大きさは、直径75センチ、短径63センチ)。調査によれば、「鳥」「虎」と読める漢字も刻まれており、その書体から中国山東省に残る「魯孝王刻石」(紀元前56年成立)にある「鳳」の中にある鳥が最も酷似し、隷書体の中でも古い時代にある古隷の書体と考えられている。『[[淮南子]]』(前2世紀成立)では、「鳥」は無道・殺りくの神を表し、「虎」は兵戦の神を表している。このことから、「天地再生・人類創造の神である伏羲と女媧に祈り、兵戦の神(虎)と無道・殺りくの神(鳥)を遠ざけ、災厄の除去を願ったもの」と解釈されている(しかし、この神の性格が兵戦の神(虎)と無道・殺りくの神(鳥)である可能性も考えられる)。刻石自体が亀甲と形状が類似することから、甲を用いた占いと共通し、『淮南子』の知識を有したシャーマンか王が用いたと考えられている<ref>『月刊 文化財発掘出土情報 1999 9 通巻208号』 (株)ジャパン通信情報センター ISSN 0287-9239 pp.88 - 89 </ref>。
== ギャラリー ==
<gallery heights="160px">
Image:Shanhaijing illustration of Nüwa.jpg|『山海経』図絵全像版の女媧の挿絵(明代)
Image:女娲补天全景 - panoramio.jpg|女媧補天の像([[広東省]][[深圳市]][[海上世界]])
Image:Ping Sien Si - 065 Nu Wa Niang Niang (16140351273).jpg|『[[封神演義]]』に登場する女媧娘娘の[[レリーフ]]([[マレーシア]]の[[ペラ州]])
</gallery>
== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
{{Reflist|2}}
== 参考文献 ==
* [[袁珂]] 著、鈴木博 訳『中国の神話伝説』上、青土社、1993年
* [[聞一多]] 、〈訳註〉[[中島みどり]] 『中国神話』 [[平凡社]] 〈[[東洋文庫 (平凡社)|東洋文庫]]〉1989年
* [[白川静]]『中国の神話』
* [[陳舜臣]]『中国の歴史(一)』
* 『[[淮南子]]』-「説林篇」
* 『[[淮南子]]』-「覧冥篇」
* 『[[山海経]]』-「大荒西経」
* 『[[楚辞]]』-「[[天問]]」
* 『[[説文解字]]』
* 『[[太平御覧]]』-巻七八『風俗通』引用
* 『繹史』-巻三『風俗通』引用
* 『[[広雅|博雅]]』-『世本』引用
* 『[[帝王世紀]]』
== 関連項目 ==
* [[伏羲]]
* [[盤古]] - おなじく原初に関する伝説をもつ。
* [[グミヤー]]
* [[天円地方]]
* [[コンパス]] - [[アトリビュート|持物]]
* [[指矩|直角定規]] - 持物
* [[女媧 (小惑星)]] - 小惑星群のなかのひとつ。
* [[兄弟姉妹婚]]
* [[洪水伝説]]
* {{ill2|風后|zh|風后}} - 古代中国の一族で、伏犠から連なるとされる風族の長、黄帝の宰相・軍師を務めたが、蚩尤との闘いで命を落とし、[[芮城県]]にある{{ill2|風陵渡|zh|風陵渡}}に埋葬される。
{{DEFAULTSORT:しよか}}
[[Category:中国神話]]