ハイヌウェレはマロ踊りという祭りで「踊る人々」に殺される。この踊りは通常は人々がらせん状に踊り、中心に女性達がいて、踊る人々に清涼剤を配る。このことから、マロ踊りとは「'''性行を模したもの'''」だと分かる。女性達が配る清涼剤は「絶頂」を意味するのかもしれない。あるいは、男女の結合から生まれた、特殊な「薬剤」という意味があったのかもしれない。この祭りにムルア・サテネは参加しない。彼女は太陽であるので、夜は地上にいない。だから参加できない。ハイヌウェレの養父であるアメタも祭りに直接参加しない。ハイヌウェレは性行の結果、様々な宝物を人々に与えるが、他の女性達が与えるものは与えない。その点が「妬み」の対象ともなるし、女性としての役目を果たさないことは一種の「罪」とも考えられる。ともかく、ハイヌウェレはヴェマーレ族の女性のようには振る舞わないので、この物語の場合には、<span style="color:red">'''外来型ハイヌウェレ'''</span>の要素が強い下位女神といえる。彼女は、ヴェマーレ族の女性とは異なる扱いを受けるための特別な存在であり、イモに変化することから、「'''イモを得るための生贄'''」であった、とまず単純に考えられる。人々は祭りで、'''ヴェマーレ族の女性には絶頂と子孫を求める'''が、ハイヌウェレにはイモかでなければ物品を求めるのである。が、ハイヌウェレにはイモかでなければ物品を求めるのである。表1~3を見れば、この神話は「'''近親優位父系社会'''」のものと推察される。人々は、姑や姉妹といった「身内の女性」は大切にするが、余所から来た「嫁」は道具扱いである。嫁から子孫を得ても、子供は「父親の家族の一員」とされ、おそらく母親の一族は子供に対する権利は認めて貰えないだろう。ハイヌウェレ型神話の場合は、サテネが'''姑'''、ヴェマーレ族の女性達が'''人々の姉妹'''、ハイヌウェレが'''嫁'''である。そして、ハイヌウェレの立場が単なる利用するための道具であるのなら、極端にいえば、ハイヌウェレは女性ではなくて、男性でも良かったのではないだろうか。