4.戦いで死なずに生き残った女王の兄弟たちは、持てる権力が低下したので、これを快く思っていなかった。人身御供を立てることは、政敵をたやすく死に追いやるための方便も兼ねているから、その手段を奪われたことも悔しい。しかし、立場が弱くなり、女王の命令で出された発布に異議を唱えることはできない。
5.女王と姫補佐官との間には何人か子が生まれたが、中に一人の賢い男子がいた。姓は母系の時代なので、当然「=== 5 ===5.女王と姫補佐官との間には何人か子が生まれたが、中に一人の賢い男子がいた。姓は母系の一族なので、当然「'''姜'''」になる。姜王子は現状に不満を持っていた。なぜなら、どんなに賢くても女王となるのは女性なので、彼は頂点に立つことができない。姉妹の女王の補佐官になったとしても、今度は誰かよその家の者が夫としてやってきて補佐官になるだろうから、その男と権力を分け合わなければいけない。そちらの方が女王の信頼を得れば、姜王子の方が隅に追いやられてしまうことだってあり得る。「理不尽だ」と姜王子は考えた。姉妹たちの誰よりも自分は賢いのだし、男が頂点になって「男王」になって何が悪いのだろうか。それに王になった男が自ら政治を行えば、よその家の男に権力を奪われる心配はないはずだ。補佐官がいなければ政治を行えない女王制の方が無駄だ。神だって「男」ということに変えて、男の王が祭祀を行えばいい。こう考える姜王子を母方の叔父たちが密かに支援した。叔父たちは自分たちを隅に追いやった姉妹の姜女王のことも、夫の姫青年のことも恨んでいたのだ。」になる。姜王子は現状に不満を持っていた。なぜなら、どんなに賢くても女王となるのは女性なので、彼は頂点に立つことができない。姉妹の女王の補佐官になったとしても、今度は誰かよその家の者が夫としてやってきて共に補佐官となるだろうから、その男と権力を分け合わなければいけない。そちらの方が女王の信頼を得れば、姜王子の方が隅に追いやられてしまうことだってあり得る。しかも姫補佐官は父系の部族の出だったので、'''兄妹同士の結婚は「近親の結婚で好ましくない」'''と考えていた。姫補佐官は姜一族のしきたりまで変えようとはしなかったが、一族のしきたりに従えば姜王子が父補佐官の考えに逆らうことになることは明らかだった。「理不尽だ」と姜王子は考えた。姉妹たちの誰よりも自分は賢いのだし、男が頂点になって「男王」になって何が悪いのだろうか。父親の部族であれば、男が家長になることが当たり前なのに。 王になった男が自ら政治を行えば、よその家の男に権力を奪われる心配はないはずだ。補佐官がいなければ政治を行えない女王制の方が無駄だ。神だって「男」ということに変えて、男の王が祭祀を行えばいい。こう考える姜王子を母方の叔父たちが密かに支援した。叔父たちは自分たちを隅に追いやった姉妹の姜女王のことも、夫の姫補佐官のことも恨んでいたのだ。
6.ある時、河が大反乱を起こして洪水が起きた。気の毒な天災であって、祭祀を行っても効き目はなかった。姜王子にとっては、これはクーデターを起こす好機だった。王子は父親であった姫補佐官に酒を飲ませて殺し、母親を捕らえて「天が禍を起こすのはお前の政治が悪いからだ。お前が生け贄になれ。お前は火と太陽の女神なのだから、罪がなければ焼け死ぬことはないだろう。」と言って、母親に火をつけ焼き殺した。姜女王は麻薬を飲まされて意識が朦朧としていたので抵抗できなかったのだ。姜王子は「悪い女性が王なので天が怒った。」と姉妹に述べさせた。そして、以後、中国では「婿というものはよくよく信用せずに、こき使えば良いもの」とされた。姫青年を信用せず、こき使っただけの姜王子の親族の行為はこれで正当化された。また、「'''寡婦は夫が死んだら焼き殺されねばならない。'''」と定められた。この思想は中国国内というよりは中国の外で広まり、印欧語族の'''寡婦殉死'''の制度に繋がった。また「'''年取った親は殺さねばならない。'''」とも定められたが、さすがに反対が多くて'''すぐに廃れた'''。「'''王の政治がうまくいかない場合は神の加護が得られないためで、王を殺さねばならない'''」、とも言ったが、当然自分の首を絞めかねない定めなので、中国国内ではほとんど適用されず、採用させられたのはやはり印欧語族だった。そして、殺された姫補佐官は酒宴の席で殺されたので「'''酒をふるまう神'''」として神格化され始めた。酒瓶の象徴は[[ヒョウタン]]とされた。