そして、アガメムノーンである。管理人は、これこそ個人的に「'''本当にひどい'''」と思うことがある。インド神話では火の神を「'''アグニ'''」という、ラテン語で火のことをイグニス(ignis)、英語で点火することをイグナイト(ignite)という。アガメムノーンが何なのか分からない、というのは管理人みたいに印欧語を良く知らない人が言うことで、少しでも知っていたらアガメムノーンとは「火」を擬人化した名前であり、更に神話に詳しい人であれば「アグニ」のこと、だってすぐ分かるはずである。だけど、そういう説明をした神話の解説は見たことがない。知ってても黙っていることが「嘘つき」の中に入るのであれば、真の嘘つきはヘルメースですか、それとも人間ですか? と思う管理人だ。「'''アガメムンーンとはアグニ(火)そのものの名前である'''」と分かれば、火に関わることの多い「H+M」と「K+M(N)」の神々の正体は全て分かる。全て「'''アグニ'''」という神の名と言葉から出ていたのである。
そうすると、殺されてしまうアガメムノーン、グンテル、ハゲネも「火」から出たことが分かる。では、アーサーは? となる。アーサーの語源は「'''アータル'''」ではないかと思う。アータルはゾロアスター教の「火の神」で、インド神話のアグニに相当する。とすると、気性の激しい女神群に殺されてしまう関係者達の名前は、アガメムノーン、グンテル、ハゲネはインド系の神の名からきているけれども、アーサーだけはイラン系に由来することになる。だから、この女神群は、その由来がインド・イラン共通時代にまで遡る女神だと管理人が考える一因ともなっている。彼女達は、インド・イラン共通時代から、寛容だけれども峻厳な大母とされており、インド系に近い部族から伝えられたのがアガメムノーン、グンテル、ハゲネ、イラン系に近い部族から伝えられたのがアーサーだったのだろう。(ちなみにフィン・マックールは'''デムナ'''という名前である。この神は? となる。)という名前である。この神は? となる。まあ、地理的には北欧神話のユミルの方が近い名なのだと思うけれども。イラン神話の聖王といえば? だ。)
=== オーディン・北欧神話 悪知恵三兄弟 ===
は、もしかしたら「父子」ではなくても良く、エトルリア式の「二主神制」が導入できればそれで良かったのではないだろうか。ただ、神々の関係をギリシア神話に寄せて構成したかったので、サートゥルヌスはユーピテルの父とされたのかもしれない、と思う。
「同じ名前で違う神」群を挙げてみる。彼の子音は「V+T+M(N)」だ。それはオーディン(北欧神話)、ウルスラグナ(イラン神話)、ヴァハグン(Vahagn、アルメニア神話)、ヴィシャップ(アルメニア神話)、ワステュルジ(カフカス・オセット族)、ヴァーユ(インド神話)、ヴァーユ・ヴァータ(Vayu」だ。それはオーディン(北欧神話)、ロキ・ロドゥル(Lóðurr)・ロプト(Lopt )(北欧神話)<ref>世界の神話百科、p507、アーサー・コットレル、原書房、1999</ref><ref>[https://www-tumblr-com.translate.goog/aboutnorsemythology/183478409041/some-references-and-thoughts-about-l%C3%B3%C3%B0urr-or-lopt?_x_tr_sl=en&_x_tr_tl=ja&_x_tr_hl=ja&_x_tr_pto=sc Some references and thoughts about Lóðurr or Lopt]</ref>、ランスロット(ブリテン)<ref>ロキがヴァーユの類名ならランスロットは? と考える。</ref>、ウルスラグナ(イラン神話)、ヴァハグン(Vahagn、アルメニア神話)、ヴィシャップ(アルメニア神話)、ワステュルジ(カフカス・オセット族)、ヴァーユ(インド神話)、ヴァーユ・ヴァータ(Vayu-Vata、イラン神話)、ヴリトラ(インド神話)、プリティヴィー(Pṛthivī、インド神話)、ピトリ(pitṛ、インド神話、ディヤウスと対になる「父」という言葉)、プリトゥ(Prithu、インド神話、プリティヴィーから名を取った王、プリティヴィーを追い回し、彼女を殺して穀物や乳を得ようとした。父の名をヴェーナ(Vena)という。)、ヴリトラハン(インドラの別名)、ヴァジュラ(インド神話)、ヴォーロスとヴェーレス(スラヴ神話)など。
とりあえず、「V+T+M(N)」と「V+T」の群を挙げてみる。これらの神々には共通点が多いように感じるからだ。ヴァーユはインド神話の「風の神」であり、日本には仏教と共に入ってきて「風神」とされる。彼には「叡智の神」としての側面があったと思われ、それが息子神のハヌマーンとして分離している。ヴァータはイラン神話の風の神である。ヴァーユは雷神インドラと密接に関連しており、その車には御者としてインドラ神も乗ることがあるという<ref name=">神の文化史事典p100" </ref><ref name=">インド神話伝説辞典p66" </ref>ヴリトラは「巨大な蛇の怪物」と言われ、水をせき止めて干ばつを起こしたため、インドラの持つ金剛杵(ヴァジュラ、雷を落とす杖)で退治される。インドラは「ヴリトラを倒した者」という意味で「ヴリトラハン」と名乗るようになったとのことだ。
ウルスラグナはゾロアスター教で「勝利を与える軍神」と呼ばれる。ウルスラグナの名は「ヴリトラハン」に近いように思える。管理人は、「ヴリトラハン」とは「ヴァーユ+ハヌマーン」という名で、ヴァーユとハヌマーンを合成した名かもしれないし、元々「ヴリトラハン」という名が先にあって、それがヴァーユとハヌマーンに別れたのかもしれない、と考える。管理人はおそらく後者だと思う。ゾロアスター教の神々と名を比較すると
ヴァーユ ー ヴァータ
ヴリトラハン ー ウォフ・マナフ (Vohu Manah)、バフマン (Bahman) 、(フェリドゥーン、Fereydun)、ウルスラグナ、(フェリドゥーン、Fereydun)
ハヌマーン ー アンラ・マンユ (Angra Mainyu, Aŋra Mainiuu)、アフリマン(Ahriman)
となる。いずれもインド・イラン共通時代以前に別れたのだと考える。善神(アムシャ・スプンタ)の一柱であるウォフ・マナフ (Vohu Manah)には「動物の守護神」としての性格があり、それがハヌマーンという猿神の性格へと変化したのではないだろうか。ヴリトラハンはインドラの別名ではなくて、ヴァーユの別名であり、怪物を倒すことから、性質が軍神よりになり、ヴァーユと一心同体であったインドラにその名が後に移されたものと考える。
ウスラグナのアルメニア版がヴァハグンであって、ヴァハグンはヴィシャップというドラゴンを殺す。インドラはゾロアスター教では「ダエーワ(悪魔)」に分類されるけれども、悪竜蛇を倒した神の側面はヴリトラハンとして分離され、良き軍神・英雄神として残されたのかもしれない。北欧神話ではオーディンはヨルムンガンドという悪蛇と関わるし、神々はこの蛇と戦う。また北欧神話のシグルズはファーヴニルという竜を倒す。となる。いずれもインド・イラン共通時代以前に別れたのだと考える。善神(アムシャ・スプンタ)の一柱であるウォフ・マナフ (Vohu Manah)には「動物の守護神」としての性格があり、それがハヌマーンという猿神の性格へと変化したのではないだろうか。ヴリトラハンはインドラの別名ではなくて、ヴァーユの別名であり、怪物を倒すことから、性質が軍神よりになり、ヴァーユと一心同体であったインドラにその名が後に移されたものと考える。アンラ・マンユは「悪神」とされているので、やはり「'''悪知恵の神'''」といえる。「'''ハヌマーン、アフリマン、ヘルメース'''」と似たもの同士の名前の「'''悪知恵三兄弟'''」とは言えまいか。
ファーヴニル・ヴィシャップ・ヴリトラ=== 風が水を殺せるのか? ヴァハグンは何を倒したのだろう? ===ウスラグナのアルメニア版がヴァハグンであって、ヴァハグンはヴィシャップというドラゴンを殺す。風神系の神々は蛇や竜を倒すことが多いので、主なものを挙げてみたい。
は、「'''悪竜'''つながり」で「同じ名前で違う神」であり、元は同じものだったのではないだろうか。「悪竜」を倒すのは古い時代はインドラ系の雷神だったのだけれど、西に進むにつれて、シグルトに倒されたり、インドラに近いヴァーユ系の神であるオーディンに倒されたりするようになったのだろう。
祝融 ー 共工、相柳
名前を管理人なりに分析してみると、「インドラ」とは「イン+ドラ」という言葉に分けられるように思う。「イン」とは「イグニ」の略で「アグニ」のこと。「ドラ」については、出自が良く分からない人のことをヴリトラハン(ヴァーユまたはインドラ) ー ヴリトラ
「どこの馬の骨か分からない」ジャナメージャヤ ー タクシャカ (Takṣaka)
と言うことがあるけれども、スラエータオナ (Thraetaona / Θraētaona) ー アジ・ダハーカ (Aži Dahāka) (聖王イマ(Yima)あるいはジャムシード (Jamshīd)を殺した蛇神)(アヴェスターより、紀元前1000年頃?)
「どこの'''虎'''の骨か分からない」フェリドゥーン ー ザッハーク(シャー・ナーメ、起源1000年頃)
と言うくらい「'''虎'''」なのだと思う。ベンガルの大母ドゥルガー女神は、どう見ても虎がトーテムの女神なのだけれども、「ドゥル」が「虎」で、「ガー」が「アグニ」の略なのだと思う。要は「虎火女神」という名だと思う。古代の中国南部とベンガル地方には古くからの街道が開けていたので、ヴァハグン ー ヴィシャップ
「'''古代宗教的にはベンガル地方は中国も同然'''」嵐神プルリヤシュ ー イルルヤンカシュ (Illuyankas)
というのが、管理人のざっくりとした神話観念である。中国南部には虎王母を持っていたと思われる伝承を持つ部族がいくつもあるし、そもそも'''西王母が虎'''だからだ。虎は英語で「tiger」というし、ギリシャ語で「Tígris」だし。これらはドゥルガーと同語源の言葉なのではないだろうか。印欧語圏で「ドラ」のつく神と言ったら、脊髄反射で「虎」と変換してしまう管理人だ。ゼウス ー テューポーン
で、話をインドラに戻せば、インドラはドゥルガー女神と逆で「火虎神」ということになる。火が先なのか、虎が先なのか、みたいな話になる。そして、雷神なのだけれども、インドラはアグニに近い神で、アポローン ー ピュートーン
「'''天から火の雨を降らせたりする神'''」(シグルズ) ー ファーヴニル
とも言える。これは雷とそれに伴う火災のことと言える。ヴィシャップとヴリトラはソドムとゴモラみたいに「火虎神」に焼き尽くされてしまったとする。ではシグルトとは何なのか、となる。ベーオウルフ1 ー 巨人グレンデルとその母親
ベーオウルフ2 ー ドラゴン(相打ち)
シグルトとは「S+G」からなる名なので、「S+アグニ」だと分かる。一番近い名前はフルリの太陽神シミゲ(Šimige)であって、その次に近いのはメソポタミアの太陽神シャマシュであると思う。悪竜を退治する点では、「アグニ」から派生した名でインドラの親戚みたいな名だと感じる。でも、ニーベルンゲンのジークフリートは殺されてしまう。何故? と思う。その前に「ファーヴニル」ってそもそも何? ともなる。メソポタミアの太陽神シャマシュには、姉妹のイナンナ女神のお気に入りだった'''フルップ'''の木に取り憑いた悪い蛇を追い払った、という神話がある。で、話はすごく飛ぶけれども、スキタイの主神は'''パパイオス'''という。ゼウス系の雷神主神とは明らかに異なる名の神だ。だから、'''パパイオスとは、ペルーンとかヴァルナに近い名の主神であって「水神」なんだろう'''な、と思う。では、オーディン ー ヨルムンガンド
× ー ニンギジッタ(D NIN.G̃IŠ.ZID.DA)(シュメールの植物神? 1年の一部を冥界で過ごすと考えられていた。)
'''ファーヴニルとは名前からいってヴァルナのこと'''
祝融とは中国神話の「火の神」だ。ただし、天から火を振らせたりできるので、彗星や雷の性質も含んでいるものと思われ、「'''天狗'''」の性質を持つ神といえる。
なんだろうな、と思う。インド・イラン系の神話では、ヴァルナ率いるアスラとインドラに代表されるようなデーヴァは対立する神々だ。だから、ヴリトラとは「ヴァルナ+虎」、要は「水虎」なのだと思う。インド神話のヴリトラは干ばつを起こす巨大な蛇、とされている。同じくインド神話のタクシャカはナーガラージャと呼ばれる「八匹の蛇の王」の一柱で、ジャナメージャヤ王の父親を殺したので、復讐されそうになる。危機一髪のところを、こちらはインドラに救われる。そして、この「'''ヴリトラは、本来ヴァルナのことなのだと考える祝融・共工型神話'''。神話でもヴァルナとヴリトラは「水を隠す神」として性格が一致している点がある。ジークフリートは本来「水神を倒す太陽(火)神」だったのだけれど、伝承が混乱して、クリームヒルトの夫としては「殺される神(ヴリトラ属性)」を付加されてしまったのだと思われる。ハゲネやグンテルがインド系の名前を持つのに対し、ジークフリートは中東方面から来た神だったので、立場が弱くてそのような役割を割り振られたのかもしれない、と考える。」を見ていくと全体に「'''ジャムシード王系'''」の名前が目立ち、'''単なる風神と蛇神の戦いではない印象を受ける'''。インドのジャナメージャヤ王は蛇神のタクシュカを追い詰める。イランのジャムシード王はアジ・ダハーカに殺されてしまう。
まず、ヴリトラの伝承とは別に、「'''ジャムシード王とタクシャカ系の蛇神が争った'''」という伝承があった、ということが分かる。でも、その結果はインドとイランでは異なる。イランでは、ジャムシード王が敗れたこととされ、ヴリトラハンに相当するフェリドゥーンがタクシャカ系の神を倒す。インド神話では、ジャムシード王系の王が勝っている。管理人が思うに、イラン系の伝承の方が古い形を残していて、それを二つに分けたい、と思うなにがしかの理由が生じたので、伝承を
オーディンが倒すヨルムンガルドは「ユミル」の別名なのでは、と思うくらいである。イラン神話の聖王イマだ。最初は「良き王」だったのに、悪政を行うようになってザッハークに倒される。ザッハークは英雄王フェリドゥーンに倒されてしまう。「ヴリトラハン(ヴァーユまたはインドラ)対ヴリトラ」の話と、「ジャナメージャヤ対タクシャカ (Takṣaka) 」の話 に分けてしまったのだと思う。インド・イラン系の共通神話の段階では、「'''フェリドゥーンに近い名は「ヴリトラハン」ヴリトラハンに相当するフェリドゥーンがタクシャカ系の神を倒す'''であると思う。」というイラン型の神話だったのだけれども、イラン系とインド系の2つに別れた後に、中国で「祝融・共工型」の神話が発生したので、それに併せて、インドでは神話を2つに分けてしまったのだと考える。「ヴリトラハン(ヴァーユまたはインドラ)対ヴリトラ」の神話はインド版の「祝融・共工型神話」といえる。ただし、ヴァーユ(Vāyu)とヴリトラ(Vṛtra)はよく似た名であって、ヴァーユ自身がヴァーユを倒す、という奇妙な内容になっている、と考える。おそらく「ヴリトラ」とは「タクシュカ」を置き換えた名だと考える。そうすれば、'''ヴァーユが倒したのはタクシュカだった'''、ということになる。 だから、元の神話は 「'''タクシュカがジャナメージャヤ王を倒し、そのタクシュカをヴリトラハン神(ヴァーユとインドラの前身か?)が倒した。'''」 という話だったのではないだろうか。 '''「祝融・共工型」の神話の前に、「共工がジャムシード王に相当する王を倒した、その共工を祝融が倒した。」という伝承があった''' のではないだろうか。その古い形式をイランの伝承は残しているのだと考える。ブリテンのベーオウルフの伝承も2部性になっている。ベーオウルフは巨人のグレンテルを倒し、その後ドラゴンと相打ちになっている。 余談だが、ニベルング族のシグルズは、竜蛇神としてはファーブニルを倒すが、人間のグンテルとは義兄弟になる。グンテルとグレンデルはインド神話の「'''インドラ'''」に相当する名前と考える。シグルズの名はヴァーユ系の名ではなく、メソポタミアのシャマシュ、フルリの太陽神シメギ(Shimegi)に近い名のように思う。もっと広く見れば、インド神話のスーリヤに近い名なのではないだろうか。英雄の名が「スーリヤ」に近いときは、インドラに似た名のグンテルと良好な関係なのに、ベーオウルフになると、巨人のグレンデルと対立するのは興味深い。ベーオウルフはパパイオスというスキタイの主神に近い名だと思う。すなわち、インド・イラン神話ではヴァルナに相当する。ヴァルナに近い名になると、インドラ(グレンデル)と対立的になるのは、アスラとデーヴァの対立関係と相関がある。シグルズの伝承がインド系よりの話とすれば、ベーオウルフはイラン系よりの話といえる。 そして、'''ヴァハグンやシグルズが倒したのも、本来は「タクシャカ系の神」だったのではないだろうか'''、と思う。Wikipediaによれば、いわゆる「アーリア系」と呼ばれる人々がインド方面で確認できるのは'''紀元前2000年期'''とのことなので、その頃はまだイラン型の「'''2段階で神殺しが行われる'''」という伝承のみしか存在しなかったと思われる。 また、こんな逸話がある。 オーディンの息子バルドル(光の神)は、異母弟のヘズ(盲目の神)に殺される。ヘズは復讐として更に弟のヴァーリ(司法神)に殺される。 トロイア戦争でアキレウスの友人パトクロスはヘクトールに殺される。ヘクトールはアキレウスに殺されるが、そもそもヘクトールが死ぬ羽目になったのは弟のパリスが間抜けな審判をしたせいである。 バルドルとパトクロスは「'''ヴリトラ'''」、ヘズとヘクト-ルは「'''ヴァーユ'''」、ヴァーリとパリスは・・・「'''ベーオウルフ(ヴァルナ?)'''」 となる。伝承は大混乱だけれども、奇妙なモチーフだけ残っている例だと思う。これらの話ではヴァーユに相当するヘズとヘクトールはヴァルナに相当すると考えられるヴァーリとパリスに殺されてしまう。ここでもアスラとデーヴァの対立の構図が垣間見える気がする。 ギリシア神話ではインド神話に似て、話は2つに分かれている。ゼウスがタクシュカに相当するテューポーンを倒し、アポローンがヴリトラに相当するピュートーンを倒す。 === 逆から読もう ===北欧神話と同様、混乱が激しいのがメソポタミア神話のニンギジッタだ。ニンギジッタ(Ningishzida)はタンムーズに似て、1年の一部を冥界で過ごすと考えられており、神々の世界と人界の間に存在する境界神とも考えられていた。ニンギジッタはザッハークのように、両肩から蛇が生えている神で、「死すべき神」なので、誰かに殺されたとされているのかもしれないが、その部分の神話は欠落している。少なくとも、ザッハークのように人の命を求めるような凶悪な神とはされていない。 楔形文字は逆から読んでもよいので、逆から読んでみることにする。ニンギジッタ(D NIN.G̃IŠ.ZID.DA)を逆から読むと「'''T+T+ignis'''」となる。「T+T」の神には饕餮、トート、テウタテス、ダグザとあるが、ニンギジッタは「'''饕餮+火'''」という意味なことが分かる。 <blockquote>ニンギジッタは植物、冥界、時に戦争の神だった。彼の名前の「木」は、ウィルフレッド・G・ランバートを含む一部のアッシリア学者によるとブドウの木である可能性があり、彼とアルコール飲料(特にワイン)との関連はよく証明されており、たとえば、ある文献ではビール女神ニンカシと一緒に言及されており、彼の称号の1つは「宿屋の主人」であった。(英語版Wikipedaより、翻訳はGoogle翻訳を参照)</blockquote> またイラン神話では、アヴェスターとシャー・ナーメでは、悪蛇を退治した英雄の名が大きく異なる。英雄はシャー・ナーメではフェリドゥーンという名だが、アヴェスターではスラエータオナ (Thraetaona / Θraētaona) である。アヴェスターとシャー・ナーメでは2000年ほど時間に差がある。シャー・ナーメの時代には、英雄の名が伝承によって様々な名で語られていたので、作者のフェルドウスィーは、もしかしたらインド神話も参考にしつつ「ヴリトラハン」に似た名のフェリドゥーンという名を採用したのかもしれない、と思う。問題はアヴェスターのスラエータオナの方だ。この英雄の名を子音で探ると「'''T+T+N'''」となる。これはニンギジッタと同じで「'''饕餮+火'''」という意味になるのではないだろうか。 とすると、イランの伝承では「'''饕餮+火'''」である英雄が、シュメールではザッハークに類似した蛇神とされていることが分かる。シュメールは期限前3500年頃~前3100年頃の文化なので、時代的にはこちらの方が古いのだが、中国神話と比較すれば、イランの伝承の方が「祝融・共工型神話」に近い。形が崩れているように思えるのは、むしろシュメール神話の方だ。これは一体、どういうことなのだろう? シュメール文化は良渚文化が始まるよりやや前の文化なので、紀元前4000~3500年頃に、ある種の宗教改革が起こり、それまで存在しなかったか、あるいはさほどメジャーではなかった「'''祝融・共工型神話'''」が重要視されるようになり、シュメールのニンギジッタに相当する神も「'''悪役'''」として大きく取り上げられるようになったのではないだろうか。そして、古い神話に手が加えられ、神話の再編が行われたのだと考える。ニンギジッタは神話再編の上で'''意図的に「スケープゴート的」に悪役とされてしまった'''のだろう。 再編よりも古い時代は '''日月星(女神・技術・職人神) + 蛙(水雷神 + 天空神(光))+ 饕餮(火雷神 + 酒木土金神 + 医薬神 + 冥界神(闇))= 日月星(女神・技術・職人神) + 蛙饕餮(日月星を支える世界の全て)''' だったのだけれども、これを '''蛙(水雷神 + 天空神(光)) - (雷神 + 天空神(光)) = 蛇(水神) と変換''' 蛙神から削除した「'''雷神 + 天空神(光)'''」を饕餮に振り分けて '''饕餮(火雷神 + 酒木土金神 + 医薬神 + 冥界神(闇)) + (雷神 + 天空神(光)) = 新饕餮(雷神 + 天空神(光)+ 冥界神(闇)他 )''' と作り替える。そして、'''日月月'''を「'''祝融'''」と変換する。 日月星(女神・技術・職人神) >>> 祝融(男神・嘘・泥棒・変身・技術・職人神;武器を作る火神としての性質を強調) '''日月星 + 蛙饕餮(日月星を支える世界の全て) = 祝融(男神・嘘・泥棒・変身・技術・職人神;武器を作る火神としての性質を強調) + 蛇(水神) + 新饕餮(雷神 + 天空神(光)+ 冥界神(闇)他 )''' '''祝融(星 + 技術・職人神;世界は火による加工物と嘘と泥棒で支配すれば良い、とする神)= 天帝(北斗神、星神)''' となる。あとは、'''蛇(水神)''' が邪魔なら祝融に退治させてしまえばいいし、そのために蛇神だけ分離したのだし。そうすれば火による加工物が水を制す、すなわち古代の帝王たちが治水に成功する、という神話ができる。 さほどメジャーではなかった'''祝融的な伝説上の存在に、火に関するものを中心として職能神(金属の精錬や木の加工技術の神、嘘や泥棒や武器の神)としての性質を与え、火神である祝融として纏めた'''といえる。自然や自然現象を敬って豊穣を願う思想から、自然にあるものを人間が役立てるように「加工する技術」を重んじるようになり、「技術の神」というものを新たに作ったのだ。でも、この技術は人々の役に立つ技術ではなくて、ギリシア神話のゼウスが「人類の火」を憂えたように、'''滅ぼすため'''の技術だった。 それはともかく、天空神と冥界神が一緒になってしまったりとか、母系の時代は日月星が女神だったのに、それを無理矢理男神に変えてしまったりとか、色々と神話に矛盾が出てくるようになる。矛盾を解消したり、権力を一箇所に集めないため、もあるかと思うけれども、これまた神々の再編を行って、日神、月神、星神、嵐神、風神、雷神、医薬神、酒神と、必要に応じてどんどん神々を分け、増やしていく。そうすると、色々な神々が多数発生して、世界に拡散していき、特に日本神話なんかは「八百万」というくらい大量の神がいることになったのだろう。 === なぜ蛙が登場するのか ===特に、'''「蛙が蛇に置き換えられた」となぜ断言できるのか'''、まずそれを書きたい。「蛙が蛇に置き換えられた」とすると、ニンギジッタはすでに蛇神の姿で表されているので、起源前3500年ごろよりも前に置き換えは完了していたと思われる。しかし、これが悪神に置き換えられるまでにはタイムラグがあったのではないだろうか。そして、メソポタミアでは蛙をトーテムとする神は早い段階で衰退してしまったと考える。 メソポタミアで蛙神が衰退したと思われる中で、エジプトでは有史の時代まで蛙神たちは生き続けた。水神かつ出産の女神であるヘケト、オグドアドのククとフフだ。出産とは命がなかった所からある所へと変化するイベントなので、それを助けるヘケトには境界神としての性質もあったといえる。 中国ではどうだったかというと、黄河文明である仰韶文化(紀元前5000年~紀元前2700年)から、蛙と人を融合させたような人蛙文(じんあもん)を描いた彩陶が出土している。その一方で、墓から白虎と青竜図と思われるものが発掘されており、「竜」という概念がすでに浸透しだしており、仰韶では'''「水に関連する神」として蛙と竜蛇が両立していたと推測される'''。また、長江側のナシ族には、「蛙の死体から五行が発生した」という盤古伝説のような伝説がある<ref>日本の神話伝説と中国雲南省納西族の神話伝説の諸問題を巡って、p20、1991、彭飛</ref>。その他「蛙が太陽を飲んだ」という伝承や「蛙が雷神の息子で人々を助けた。'''そして人は人を食う習慣を改めた。'''」という伝承がある。月に蝦蟇が住むという話も有名だから、古代中国では「蛙」とは単なる水神ではなく、天と人々の間の中間的な神としての性質もあったように思う<ref>中国の伝承曼荼羅、p135-137、百田弥栄子、1999、三弥井書店</ref>。'''時に蛙神にはギリシア神話のテーセウスに相当するような英雄的性質を有していたのではないだろうか。''' ギリシア神話で、人類に火をもたらす神はプロメーテウスという。人類に火を使うことを禁止した主神ゼウスは、「人類は火を使って武器を作り戦争を始めるだろう。」と述べたとされている。中国神話の祝融は夏の都城を滅ぼしたり、鯀という神を殺したりする攻撃性の高い神なので、「'''火を使った武器の神'''」としても崇拝されたのではないだろうか。 また、「'''人が人を食う'''」ということを単なるカニバリズムとせず、「人身御供」のように他人を食べたり殺したりすることまで含めれば、これは祭祀でもあるので、祭祀の禁止を不満と感じれば、復活を求めて、「人身御供を禁止した神」である蛙神への信仰を禁じた、ということがあるかもしれない、と思う。'''水神を蛙神から河伯(蛇神)に変えて、これを「人身御供を求める神」とすることで、人身御供を復活させることができる'''。 その上、水神が蛇神であることが正しい、とすれば「蛙神を正しい」と考える人達を「異端」として攻撃することができる。 更に、蛇神を竜神に変更して「蛇神は悪い神だ。」として、蛇神を信じていた人達を攻撃する口実にする。竜神の方だけは残す。 と、'''神を少しずつ変えていくことで、「変えた後の神を信じている人達」以外の者を「異端」として攻撃する口実をどんどん作る、とする。これを「火で作った武器」とセットにすれば、どんどん邪魔者を「悪者」と定義して攻撃できるようになる。人身御供も復活させれば、宗教を口実にして敵を殺すことを正当化できる。''' とすれば、祝融はまさに「'''嘘つきと、武器製造を推進する火神'''」ということになる。もうこの段階になったら神は崇拝の対象ではなく、完全に政治の道具といえる。 長江文明で、まず蛙神の廃止が行われたのではないだろうか。そのため「五行」を作り出した重要な蛙神は消えてしまったけれども、黄河文明の側では仰韶文化の時代まで残ったのだろう。蛙神は蛇神に置き換えられたけれども、当初は性質はそのままで急に人身御供を求める神には移行できなかったかもしれない。 長江文明・大渓文化の城頭山遺跡(紀元前4500年頃)からは農耕儀礼に関したと思われる人骨が出土している<ref>長江文明の探求、梅原猛、安田喜憲共著、新思索社、2004、p88</ref>。 黄河文明の方では、仰韶文化半坡類型晩期(紀元前4080年頃~紀元前3790頃)に首狩りの風習があった、とのことだ<ref>[http://kohkosai.com/report.htm 好古斎]、[http://kohkosai.com/kaisetu/03-hanpa.htm 仰韶文化(B.C.5000~B.C.3000)]</ref>。この頃の墓からは竜と虎の図が発掘されており、竜が登場していたことが分かる。蛇神から竜神への図としての変遷は黄河文明の方が先行していたと思われる。ただし、長江文明では鶏が竜神とされたりしているので、当初の「竜神」というのはただ名前が「竜神」というだけで、現代人が考えるような「猪竜」から発展した蛇のような体を持つものではなかったかもしれない。とすれば、現代的な「竜神」の図は北の方で発生したが、概念は長江文明で発生した可能性はあるように思う。 === 蛙と虎 ===古代エジプトで蛙の神を「ヘケト」「クク」「フフ」という。似たような名前で
=== ネイト・エジプト神話 ===
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== 參考 注釈 ==<references group="注釈"/>
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