「同じ名前で違う神」群を挙げてみる。彼の子音は「V+T+M(N)」だ。それはオーディン(北欧神話)、ウルスラグナ(イラン神話)、ヴァハグン(Vahagn、アルメニア神話)、ワステュルジ(カフカス・オセット族)、ヴァーユ(インド神話)、ヴァーユ・ヴァータ(Vayu-Vata、イラン神話)、ヴリトラ(インド神話)、ヴリトラハン(インドラの別名)、ヴァジュラ(インド神話)、ヴォーロスとヴェーレス(スラヴ神話)など。
ヴァーユはインド神話の「風の神」であり、日本には仏教と共に入ってきて「風神」とされる。彼には「叡智の神」としての側面があったと思われ、それが息子神のハヌマーンとして分離している。ヴァータはイラン神話の風の神である。ヴァーユは雷神インドラと密接に関連しており、その車には御者としてインドラ神も乗ることがあるという<ref name="神の文化史事典p100" /><ref name="インド神話伝説辞典p66" />日本人にも「風神」「雷神」が並び立つ図はなじみが深い。(ただし仏教のインドラは帝釈天と呼ばれる。)日本人にも「風神」「雷神」が並び立つ図はなじみが深い。(ただし仏教のインドラは帝釈天と呼ばれる。)ヴリトラは「巨大な蛇の怪物」と言われ、水をせき止めて干ばつを起こしたため、インドラの持つ金剛杵(ヴァジュラ、雷を落とす杖)で退治される。インドラは「ヴリトラを倒した者」という意味で「ヴリトラハン」と名乗るようになる。ウルスラグナはゾロアスター教で「勝利を与える軍神」と呼ばれる。ウスラグナのアルメニア版がヴァハグンであって、ヴァハグンはヴィシャップというドラゴンを殺す。インドラはゾロアスター教では「ダエーワ(悪魔)」に分類されるけれども、悪竜蛇を倒した神の側面はヴリトラハンとして分離され、良き軍神・英雄神として残されたのかもしれない。北欧神話ではオーディンはヨルムンガンドという悪蛇と関わるし、神々はこの蛇と戦う。また北欧神話のシグルズはファーヴニルという竜を倒す。 ファーヴニル・ヴィシャップ・ヴリトラハン は、「'''悪竜'''つながり」で「同じ名前で違う神」であり、元は同じものだったのではないだろうか。「悪竜」を倒すのは古い時代はインドラ系の雷神だったのだけれど、西に進むにつれて、シグルトに倒されたり、インドラに近いヴァーユ系の神であるオーディンに倒されたりするようになったのだろう。 名前を管理人なりに分析してみると、「インドラ」とは「イン+ドラ」という言葉に分けられるように思う。「イン」とは「イグニ」の略で「アグニ」のこと。「ドラ」については、出自が良く分からない人のことを 「どこの馬の骨か分からない」 と言うことがあるけれども、 「どこの'''虎'''の骨か分からない」 と言うくらい「'''虎'''」なのだと思う。ベンガルの大母ドゥルガー女神は、どう見ても虎がトーテムの女神なのだけれども、「ドゥル」が「虎」で、「ガー」が「アグニ」の略なのだと思う。要は「虎火女神」という名だと思う。古代の中国南部とベンガル地方には古くからの街道が開けていたので、 「'''古代宗教的にはベンガル地方は中国も同然'''」 というのが、管理人のざっくりとした神話観念である。中国南部には虎王母を持っていたと思われる伝承を持つ部族がいくつもあるし、そもそも'''西王母が虎'''だからだ。虎は英語で「tiger」というし、ギリシャ語で「Tígris」だし。印欧語圏で「ドラ」のつく神と言ったら、脊髄反射で「虎」と変換してしまう管理人だ。 で、話をインドラに戻せば、インドラはドゥルガー女神と逆で「火虎神」ということになる。火が先なのか、虎が先なのか、みたいな話になる。
=== ネイト・エジプト神話 ===