=== イーノーの神化 ===
かつてイーノーは、姉妹の[[セメレー]]と[[ゼウス]]の子[[ディオニューソス]]を娘として匿ったことがあり、アタマースはこれを黙認していた。[[ヘーラー]]は、このことを憎んでアタマースに狂気を吹き込んだ。アタマースが白い鹿を見つけて矢を射たところ、殺したのはイーノーとの息子レアルコスだった。その光景を見たイーノーも狂気に駆られ、沸騰したお湯の入った鍋に[[メリケルテース]]を入れて殺し、その遺体を抱いて海に飛び込んだ<ref>アポロドーロス、3巻4・3。</ref><ref group="私注">イーノーは本来は穀物の豊穣の女神だったと思われるが、その祭祀には'''釜で子供を煮る'''ような祭祀である「'''幼児供犠'''」という[[人身御供]]が含まれていたことを暗示させる。[[河姆渡文化]]での習慣を彷彿とさせる。</ref>。別の説では狂気に駆られたアタマースはレアルコスの体を八つ裂きにした。イーノーはもう一人の息子メリケルテースを抱いて逃げたが、アタマースに追いつめられ、母子ともに海に身を投げたともいう<ref>オウィディウス『変身物語』4巻。</ref>。ゼウスはディオニューソスを育てた恩義に報いてイーノーを女神レウコテアーとし、メリケルテースは[[海神]]。ゼウスはディオニューソスを育てた恩義に報いてイーノーを女神レウコテアーとし、メリケルテースは海神[[パライモーン]]となった。
女神レウコテアーは、[[ホメーロス]]の[[叙事詩]]『[[オデュッセイアー]]』第5巻に登場する。レウコテアーは、難破した女神レウコテアーは、ホメーロスの叙事詩『オデュッセイアー』第5巻に登場する。レウコテアーは、難破した[[オデュッセウス]]にカモメの姿をとって近づき、身につければ決して溺れることのない力を持つヴェールを貸し与えて彼を救った。パライモーンは水夫の守護神として信仰された。また、メリケルテースの遺骸はイルカによって[[コリントス]]に運ばれ、これを記念して[[イストミア競技祭]]が設けられたという。にカモメの姿をとって近づき、身につければ決して溺れることのない力を持つヴェールを貸し与えて彼を救った。パライモーンは水夫の守護神として信仰された。また、メリケルテースの遺骸はイルカによってコリントスに運ばれ、これを記念してイストミア競技祭が設けられたという。
=== バッコスの饗宴にまつわる神話 ===
[[File:Death Pentheus Louvre G445.jpg|thumb|left|260px|ペンテウスを引き裂いて殺すアガウエーとイーノー。紀元前450年から425年ごろのアッティカの鉢(ルーヴル美術館)]]上記とはまったく別の話がある。イーノーは山中で大山猫に襲われ、そのときにバッコス([[ディオニューソス]])の狂乱がイーノーに取り憑き、イーノーは大山猫を引き裂いて殺し、そのままパルナッソス山の[[マイナス (ギリシア神話)|マイナス]]たちの酒宴に加わった。アタマースはイーノーが死んだと思ってたちの酒宴に加わった。[[アタマース]]はイーノーが死んだと思って[[テミストー]]を後妻に迎えた。後になってイーノーが健在であることがわかり、アタマースは乳母といつわってイーノーを宮中に入れた。テミストーはこれを見破り、テミストーの子には白い衣装、イーノーの子には喪服を着けさせるようイーノーにいいつけ、翌日護衛に命じて喪服の子供を殺させた。しかし、イーノーは危険を察して子供の服を取り替えていたので、殺されたのはテミストーの子だった。アタマースはこれによって乱心したのだという。を後妻に迎えた。後になってイーノーが健在であることがわかり、アタマースは乳母といつわってイーノーを宮中に入れた。[[テミストー]]はこれを見破り、[[テミストー]]の子には白い衣装、イーノーの子には喪服を着けさせるようイーノーにいいつけ、翌日護衛に命じて喪服の子供を殺させた。しかし、イーノーは危険を察して子供の服を取り替えていたので、殺されたのは[[テミストー]]の子だった。[[アタマース]]はこれによって乱心したのだという<ref>これは「幼児供犠」を思わせるエピソードである。</ref>。
[[エウリピデース]]の[[ギリシア悲劇]]『[[バッコスの信女]]』では、イーノーは姉妹の[[アガウエー]]、[[アウトノエー]]とともにディオニューソスの饗宴に加わり、これを阻止しようとしたアガウエーの息子で[[テーバイ]]王である[[ペンテウス]]の身体を引き裂いて殺す。
== 関連項目 ==
*[[イノ (小惑星)人身御供]]
== 参考図書 ==