[[ゼウス]]が人間と神を区別しようと考えた際、プロメーテウスはその役割を自分に任せて欲しいと懇願し了承を得た。彼は大きな[[ウシ|牛]]を殺して二つに分け、一方は肉と内臓を食べられない皮で包み{{Refnest|肉と内臓を胃袋で包み皮の上に置いたとも<ref name="S">『ヘシオドス 全作品』126頁。</ref>。|group="注"}}、もう一方は骨の周りに脂身を巻きつけて美味しそうに見せた。そしてゼウスを呼ぶと、どちらかを神々の取り分として選ぶよう求めた。プロメーテウスはゼウスが美味しそうに見える脂身に巻かれた骨を選び、人間の取り分が美味しくて栄養のある肉や内臓になるように計画していた。ゼウスは騙されて脂身に包まれた骨を選んでしまい、怒って人類から火を取り上げた<ref name="G">フェリックス・ギラン『ギリシア神話』[[青土社]]新装版1991年、36頁。</ref>{{Refnest|『神統記』では、ゼウスはプロメーテウスの考えを見抜き、不死の神々にふさわしい腐る事のない骨を選んだことになっている<ref name="S"/>。|group="注"}}。この時から人間は、肉や内臓のように死ねばすぐに腐ってなくなってしまう運命を持つようになった。
プロメーテウスは、ゼウスによって火を取り上げられ、自然界の猛威や寒さに怯える[[人類]]を哀れみ、火があれば、暖をとることもでき、調理も出来ると考え、[[ヘーパイストス]]の作業場の炉の中に[[オオウイキョウ]]を入れて点火し{{Refnest|太陽の戦車の車輪から火を採ったともいわれる<ref name="G"/>。|group="注"}}、それを地上に持って来て人類に「[[火]]」を渡した。人類は火を基盤とした[[文明]]や[[技術]]など多くの恩恵を受けたが、同時にゼウスの予言通り、その火を使って[[武器]]を作り[[戦争]]を始めるに至った<ref group="注注1">このことから「プロメテウスの火」はしばしば、[[原子力]]など、人間の力では制御できないほど強大でリスクの大きい[[科学技術]]の暗喩として用いられる。
これに関連して、1975年にアメリカの小説家、トーマス・N.スコーシアとフランク・M.ロビンソンが『プロメテウス・クライシス』("The Prometheus Crisis")を著した。
</ref>。
[[ファイル:Prometheus - Luca Giordano (1660).jpg|200px|thumb|[[ルカ・ジョルダーノ]]の[[1660年]]の絵画『縛られたプロメテウス』。[[ブダペスト国立西洋美術館]]所蔵。]]
これに怒ったゼウスは、権力の神[[クラトス]]と暴力の神[[ビアー]]に命じてプロメーテウスを[[コーカサス|カウカーソス]]山の山頂に磔にさせ、生きながらにして毎日[[肝臓]]をテューポーンとエキドナの子である巨大な鷲(アイトーン<ref>ヒュギーヌス、31話。</ref>)についばまれる責め苦を強いた<ref>{{Cite book|和書|author=高津春繁|authorlink=高津春繁|title=ギリシア・ローマ神話辞典|publisher=[[岩波書店]]|page=224|year=1960|id={{全国書誌番号|60006167}}}}</ref>。プロメーテウスは不死であるため、彼の肝臓は夜中に再生し、のちに[[ヘーラクレース]]により解放されるまで拷問が行われた。その期間は3万年であったとされる<ref>『ギリシアの神話 神々の時代』277頁。</ref>{{Refnest|3000年ともいわれる<ref>フェリックス・ギラン『ギリシア神話』40頁。</ref>。|group="注"}}。