西方の神名について
目次
はじめに[編集]
ここで述べる「西方の神名」とは、主に印欧語系とセム語系の言葉になる。古代の地中海周辺で主に話されていた言語である。話者達は「印欧語とセム語は違うもの」と言うかもしれない。私は言語学の専門家ではなく、むしろ外国語は苦手だ。でもざっくりとした印象では特に古代における神名や昔からあるような基本的な名詞、例えば「水」のような言葉は語源から見ても、印欧語系とセム語系でさほど変わりはないように感じるのだ。古代において地中海周辺の人々は互いに交流し、各地の神々と自分の神を自然に比較して別々に分類したり、習合させたりしていた。だから言語体系によらず、神の名前も似通ってくるのは自然の流れだったと考える。
また、神の名の語源を論じる際に「一般名詞」が先か「神の名」が先か、ということになるが、語源は「神の名」の方で、一般的な名詞の方がそこから発生している、と考える。例えば、神が「勇敢な神」であって、人々がそれを理想として真似るのでなければ「勇敢」という言葉は必要ないからである。
ヒッタイトの太陽女神[編集]
多民族国家であるヒッタイトは最高位の主神に太陽女神を置いていた。彼女の呼称は一つではなく、各民族がそれぞれ自分の太陽女神の名を使用して、それが他の民族の太陽女神とも同じものとして考えていたようである。くさび形文字で太陽神のことをウトゥ(UTU)と書いたが、ヒッタイトではこう書いてこれをイスタヌ、ティワズ、シャマシュ、ウトゥといった各地の太陽神・太陽女神を現す言葉として使用していた。日本では漢字を音読みと訓読みで読むように、くさび形文字で「UTU」と書いても、人によってそれをウトゥではなくイスタヌとかティワズと呼んでいたのだろう。[1]
ヒッタイトの人々、特に高位の人々には自らの太陽女神を直接名で呼ばない習慣があったようである。ヘバトも「アリンナの太陽女神は杉の国(レバノン)でヘバトと呼ばれている。」と言われており、ヒッタイトの人がヒッタイトの神の名としてみなしていたのかというとそうでもなかった。日本人がかぐや姫のことを「かぐや姫」と直接呼ばずに、「中国で嫦娥と呼ばれている女神」と言うようなものである。
接頭辞El-、Al-、En-など[編集]
図1にあるように、ウガリットのEl、Al、Il、メソポタミアのE、Er、Enなど神の名に接頭辞としてあ行の言葉がつくことがあった。ギリシア神話のアリアドネー(Ariadne)、アルテミス(Artemis)もその例と考える。これらの神は、まず接頭辞を外した部分が「固有の名」ではないかと考える。アリアドネーは「アドネー」、アルテミスは「テミス」である。アドネーという言葉は、これはこれでアドナイ(Adonai・ヘブライ語で「私の主」を意味する)に類似した言葉と考える。テミスという女神はギリシア神話では別に存在しているが、これもアルテミスと同様「月女神」なので、起源的にアルテミスとテミスは同じ女神なのだろう。この言葉は接尾語として使われる場合もある。
これらの接頭辞の語源は、個人的には中国語の「阿」ではないかと考える。中国では親しみを示す接頭辞である。「阿父」と書いて「父さん」とか「父ちゃん」とかそういう意味になる。あるいは中国語の「二(èr)」に相当する言葉かもしれない。(あるいは阿も二も同じ語源になるのかもしれないが。)中国神話の女媧と伏羲は互いに強く結合して「一体の神」のような図像で表される。強く結合しているけれども、互いに相争うような、そんな双子の神々の関係を意味しているのではないだろうか。
余談ではあるが、上記のように考えるとユーラシア大陸全体では印欧語、セム語を超えて広い範囲の言語で、似通った名前を持つ起源を同じくした神々がいると想像される。多くの人が神々に対して接頭辞で親しみや敬意を示すのに、日本語では「御」くらいが敬意を示す言葉で、これも「オン」とか「ゴ」と読むのだから日本語だけが特殊というか、他の言語とかけ離れている、という印象を受けるのだ。
D-、J-、Y-、(U-)あるいはT-[編集]
神の名における「T」の子音には大雑把にいって、原則的に2つの意味があり、性差があるように思う。女神の場合は「虎(Tiger)」であって、インド神話のドゥルガー女神などがいる。男神の場合は「豚(中国語でTi)」であって、食料であり、犠牲獣に使われることが多い。
印欧祖語のディヤウス(dyaus)という言葉は、「父なるデャウス」を意味するデャウシュ・ピター(dyauṣpitā)という言葉でもあり、ヒンドゥー教で「天(dyaus)の父(pita)」という天空神を示している。この名前は英語の「Thunder(雷)」という言葉が示すように「雷」を示す言葉なのだと考える。Y-という接頭語はJ-という接頭語から濁点を外したものである。ギリシア神話の主神ゼウス(Zeus)もこの群に入れる。ニーベルンゲンのグズルーン(Gudrun)は、更にG-という接頭辞が付加された名と考える[2]。起源は祝融(Zhùróng)ではないだろうか。
下エジプトの守護神とされる蛇女神は「ウアジェト(Wadjet)」という。この女神の名には「雷」を示す子音が二つ入っている。このように「D-」系の子音は接頭語以外でも使用された。特に古代エジプトでは女神の名として、接頭語ではなく接尾語として高頻度で使用された。ウアジェトだけでなく、ネクベト、メヒト、タウエレト(Taweret)等々である。
「J-」という接頭語は主にローマの神にみられる。ローマのユーピテル(Jupiter)、ユーノー(Juno)とエトルリアのユニ(Uni)は同じ女神と考えられているので「J-」から清音の「Y-」に変化し、更にア行の母音のみの音に変化した例もあるかもしれない。
「T-」にはヒッタイト神話のテシュブ(Teshub)や、北欧神話のトール(Tor)がある。いずれも高位の雷神で、学術的にもゼウス(Zeus)、ユーピテル(Jupiter)と同起源の言葉と正式に考えられている。ルウィの太陽神ティワズ(Tiwaz)は雷神ではないが、語源を同じくすると考えられている。いわゆる「火雷神」と言い得る性質を持っていたのかもしれない。
日本では阿遅鉏高日子根(アヂスキタカヒコネ)、伊豆能売(イズノメ)、神阿多都比売(カムアタツヒメ(木花之佐久夜毘売の本名))の名にこの子音がみられる。高句麗の柳花(Yuhwa)夫人も同様と考える。古い時代の神々と見えて、中国式に「阿」「伊」といった親しみを示す接頭語がついている例がある。阿遅鉏高日子根は雷神としての性質も持つ。日本では「火山の神」としての性質も強いように感じる。雷も火山も大きな音を立てて光と熱を発するからであろうか。「伊豆」という地名も関連する言葉であろう。伊豆は火山の多いところである。
T+SW[編集]
テシュブ(Teshub)、テーセウスに近い音である。語源は上代中国語に遡り「Ti(豚) + *qra(蛙)」と考える[3]。印欧語族では大雑把にいって、一般的に雷神のことを「TV」と現すが、これらの語源と考える。タイのミャオ族の一派であるモン族は雷神を「Xob」と呼ぶ。元々「豚の雷神」と「蛙の雷神」の2種類の雷神があったものを1つに纏めたのが「TV(デーヴァ)」という言葉と考える。河姆渡文化やその周辺に近い言葉であろう。
右図は河姆渡文化の「双鳥朝陽象牙蝶形器」である。雄鶏の一方が「Ti(豚)」、もう一方が「Xo(蛙)」、彼らが抱いている太陽が「白(bei)」と考える。おそらく豚が後の炎帝、蛙が後の黄帝(の半分)、太陽も後の皇帝(の半分)であろう。
TM、S(th)M[編集]
「M」の子音は「熊」を意味する。語源はおそらく、「黒」のことをシナ・チベット祖語で「*s-maŋ ~ s-mak」と読むことからきているのだろう[4]。これはおそらく「熊(クマ)」という言葉と同語源であって、「黒」=「熊」という意味と考える。これには主に2通りの意味がある。モン族の精霊ヨーム・スア (Yawm Saub)のように「天の神」とされるものと、インド神話のユミル、メソポタミアのドゥムジのように犠牲獣的に取り扱われるものである。熊トーテム信仰の強い人々にとって、彼は「天の神」なのだろう。逆に熊トーテム以外の人々にとっては、さほど重要でないし、熊トーテムの人々に取って食われないためにも、食料にしてしまった方が良い存在の神かもしれない。両者の中庸的な存在が、「天の神だけども死んだ神」でもあるインドのヤマ、「良い王様だったけれども悪い王様になってしまった」イランのジャムシード王ではないだろうか。イランのイマ(アヴェスター語: Yima)、ジャムシード(ペルシア語)、シュメールのドゥムジ(Dumuzi)、タンムーズ(Tammuz)、ケルトのディアルムド・ウア・ドゥヴネ(Diarmuid Ua Duibhne)、東は朝鮮の壇君、朱蒙と、中国から西欧までほぼ連続してたどれる有名な神々である。
他にヒッタイト神話のシャッルマ、メソポタミアのシャマシュ、中国の舜など。
TN[編集]
新石器時代(河姆渡文化)、1977年浙江省余姚河姆渡文化遺跡出、陶器、高さ11.7cm、口径21.7cm、底径17.5cm、浙江省博物館所蔵[5]豚(tun)の図と考える。豚の体内にある2つの「目」は親にあたる「DV(デーヴァ)」の目ではないだろうか。
「TM」の子音の神々と性質や名が交錯する場合があると思うが、こちらの意味は「豚(tun)」と考える。「豕(si)蛙(*qra)若(シナ・チベット祖語 *na-ŋ)」ではないだろうか。おそらく若(*na-ŋ)という言葉はゲルマン祖語の「*jungaz(若い)」と同語源であり、英語でいうとyoung、junior、newといった言葉となったと考える。要するに「TN」とは「DV-new」、「若いDV(デーヴァ)」という意味と考える。チャンヤンの「ヤン」もこれに相当するのではないだろうか。
神話的には「融(印欧語で言うところのyoung、junior、newに相当する)」という言葉と密接な関係があると考える。おそらく古代中国語で「若(*nak)」と「融(推定ŋr\u00a0iung)」の音が近かったので「祝融(tshjuj-nljuwng)」というのは「豚若(TTあるいはTN)」という意味だったのではないだろうか。
中国苗族のダロン、インドのダンヴァンタリ(Dhanvantari)、ギリシアのディオニューソス(Dionysus)、トリスタン(Tristan)など。男神が多いが、ローマのユーノー(Juno)のように女神の名であることもある。起源は当然苗族のダロンではないだろうか。多「天の神」とされることがある。
TWT、SWT[編集]
蚩尤(ティウグ(tʰjɯɢʷɯ))、祝融(*tshuk-yuwngと推察される)がこの群に入る。蚩尤と祝融は元々「同じ言葉」だったと考える。要するに「TWT」とは「DV-young」、「若いDV(デーヴァ、豚)」という意味と考える。
ルウィの太陽神ティワズ(Tiwaz)、ヒッタイトの太陽神の一柱であるシワット(Šiwat)もティワズと同語源と考えられているルウィの神である。「T-」音が薄れて「S-」音になっている。この「S-」音が外れてしまえばワット(Wat)となりウアジェト(Wadjet)、ウトゥ(Utu)に近い名になる。インド神話のシヴァ(Shiva)はシワットに類する神名なのではないだろうか。シヴァには荒れる天候神(雷神を含む)という性質が含まれ、やはりかつては「火雷神」だったかもしれないと思う。ニーベルンゲンのジークフリート(ドイツ語: Siegfried)、古ノルド語はシグルズ(Sigurðr)、中高ドイツ語でジーフリト(Sîvrit)もシワットに類する名と考える。
TT、DD[編集]
「TWT」を縮めた名と考える。「TT」となる名前はデャウシュ・ピター(dyauṣpitā)、ケルトのテウタテス(Teutates)、ギリシアのティターン(Titan)。「DD」はメソポタミアのアダド (Hadad) 、ギリシアのダイダロス(Daidalos)など。女神としてはインドのアディティ(Aditi)など。
S(th)T他[編集]
エジプト神話のセト(Set)、トーマのサートゥルヌス(Saturnus)、カフカスのサタナ(Satana)など。
メソポタミアのスドゥ(Sud)、インドのサティー (Sati) 、シータ(Sita)のように夫が原因で非業の死を遂げる女神群が存在する。
TK、TG[編集]
これも「DV-young、豚」と考える。メソポタミアのアサグ、イランのアジ・ダハーカ、インドのダクシャ、日本のアジスキタカヒコネなど。あまり良い神としては扱われないことが多いと感じる。
IO、EU[編集]
ギリシア神話に目立つが、「IO」「EU」といった子音が「DB」が清音化して変化したものと思われるものがある。イーオー、イオカステー、エウローペーなど。
SS(th)など[編集]
日本神話に顕著だが、「T」「D」の音が「Z」「S」に変化し、更に音が薄れた子音に変化した群があるように思う。「阿蘇神」の「ソ」のように「ツ」や「ヅ」がサ音の子音に変化している。特に子音が2つ重なる場合は「饕餮」という言葉から変化したと考える。須佐之男、須勢理姫などである。西方の例だとメソポタミアのエレシュキガル(Ereshkigal)、ヒッタイトのシャウシュカ(Shaushka)、エジプトのヘケト(Heqet)、ギリシアのへカテー(Hekátē)、ヘーラー(Hērā)など。男神としてはヒッタイトの月神クシュフ (Kushuh)がある。
KB、KT、DKKなど[編集]
青蛙 (qīngwā)、蛙 (wā)を語源とする群。
蛙をトーテムとする神々である。エジプトのヘケト(Heqet)、ギリシアのへカテー(Hekátē)、ヘーラー(Hērā)、ヘーラークレース、アキレウス、ヒッタイトの月神クシュフ (Kushuh)などがある。
HT-ではエジプトのハトホル(Hathor)など。古代エジプトでハト(Hat-)は「家」という意味とのこと。ギリシアのハーデース。
B-、P-、W-、V-、F-、H-、O-あるいはU-[編集]
「B-」「P-」について。「P-」は濁音の「B-」を半濁音に変更したもの。神の名を示す言葉に「ベール(Bel)」という。これは荒れる天候神のエンリルや、太陽神マルドゥクの添え名である。他にもカナンの天候神バアル(Baal)、シュメールの太陽神バッバル(Bahbar)、ギリシア神話のプロセルピナ(Proserpina)、ポリュデウケース(ラテン語: Pollux)がある。接頭語を離れた例は、ヒッタイトの太陽女神ヘバト(Hebat)、アナトリアのキュベレー(Cybele)、古代メソポタミアの伝説的女王ク・バウ(Ku-Bau)など。ギリシア神話のアプロディーテー(Aphrodite)など。英語の「beauty(美)」、「burn(火が燃える、輝く)」などの言葉と関連があると考える。起源は中国語の「白(bai)」ではないだろうか。
「W-」「V-」は「B-」が変化したもの。ウェヌス(Venus)、ウェスタ (Vesta) など。ウェヌスは英語読みで「ヴィーナス (Venus)」となるし、日本人はこれを「ビーナス」と呼ぶので、特に日本語においては、「W-」、「V-」、「B-」の音はほぼ全てが「ば行」の濁音で現されて区別がつきにくい。
「O-」「U-」は「B-」音の濁音が清音化したもの。ギリシアのコレー(Kore)、ゲルマンのコルンムーメ(独:Kornmöhme)など。ローマのケレース(Ceres)はコレーが変化したものか。
一部は清音のF-、H-に変化している。ギリシアのヘスティア(Hestia)など。
BS他[編集]
語源は中国神話の伏羲(上代中国語で*pruk-khi、*pruk-s-iなど)と思われる群。
ギリシア神話のペルセウス、エジプト神話のベス、インド神話のラーフ、北欧神話のロキなど。
BN[編集]
語源は「白+熊(KN)」と考える。原則としては「熊の太陽神」といえる。例外はもちろんある。「男が女の名を名乗っている」と揶揄されることがあるかもしれない。ギリシア神話のオムパレーなど。 ローマのウェヌス(Venus)。ギリシアのウラノス(Uranus)、ポイニクス(phoenix)。スラヴのペルーン(Perun)、インドのヴァルナ(Varna)、ヴィシュヌ(Viṣṇu)、ブラフマー(Brahmā)、シュメールのブラヌナ(Buranuna(ユーフラテス川のこと))、中国の槃瓠など。水神として現れる傾向がやや多い気がする。
苗族のバロン、台湾原住民の女神バルン、インドネシアのハイヌウェレ、ギリシアのイーピゲネイアは、名前が近いだけでなく、「殺される女神」として性質にも連続性があるように思う。起源は苗族の「バロン」であろう。
BT、UTなど[編集]
「BT」の語源は元は「白+虎(Tiger)」と考える。原則としては「虎の太陽神」といえる。例外はもちろんある。「男が女の名を名乗っている」と揶揄されることがあるかもしれない。ミャオ族のポ・ツォンなど。
ローマのウェスタ (Vesta)。カフカスのバトラズ(Batraz)、ワステルジュ(Wastyrdzhi)。ケルトのブリギッド(Brigit)。ニーベルンゲンのブリュンヒルド(Brunhild)。インドのヴァーユ(Vayu)、北欧のオーディン(Odin)、フレイア(Freyja)など。風神として現されることが多いが、そうでない場合もある。日本では布津主、丹生都比売など、物部氏系の神名に多い。
AT[編集]
「BT」から「B」音が外れて母音となった群。印欧語の*h2r̥tḱ-(熊の語源)がこの群に入る。虎から熊トーテムに変更された神々かもしれない。印欧祖語の*hxehxtr-「火(英語のfireで良いのか? fightやfighterの語源にも見えるが??)」とも関連する言葉で、イランのアータルという神の原型が「火」と「熊」の語源の*hxehxtr-なのだと考える。
SBTなど[編集]
ルウィの太陽新・ティワズ(Tiwaz)に類似した名から、T音が外れたものと考える。
ルウィのシワット(Siwat)、エジプトのイシス(Ruset)、ギリシアのオイディプス、インドのシヴァなど。元はミャオ族のアペ・コペンとダロンの合成神と考える。
K-、C-、S-、H-、(A-、I-、E-)など[編集]
K-、S-、H-の子音は、特に接頭語となった場合、互いに交通性がある場合がある。エジプトのクヌム(Khnum)、ギリシアのヘルメース(Hermes)、インドのハヌマーン(Hanuman)など。これらの子音が省略されると母音のみになる。フランス語では「H」の音を発音しないので「Hermes」と書いて「エルメス」と呼ぶように。I-、E-は「Il-」系の接頭語が縮まった場合の他、K-、S-、H-が省略された場合があると考える。
KM[編集]
「KM」の子音は文字通り日本語の「熊」を意味すると考える。語源はおそらく、「黒」のことをシナ・チベット祖語で「*s-maŋ ~ s-mak」と読むことからきているのだろう[6]。これが「熊(クマ)」という言葉と同語源であって、「黒」=「熊」という意味と考える。
エジプトのクヌム(Khnum)、メソポタミアのイナンナ(Inanna)、ヒッタイトのハンナハンナ(Ḫannaḫanna)、ギリシアのヘルメース(Hermes)、インドのハヌマーン(Hanuman)の他、ギリシアのクロノス(Cronus)、ヒッタイトのクマルビ(Kumarbi)、ニーベルンゲンのクリームヒルト(Kriemhild)など、アーサー王伝説のランスロット(Lancelot)など。東には桓雄、解慕漱。
中国語の嫦娥(Cháng'é)は特に「熊若」という意味なのではないかと考える。苗族のチャンヤンも同じ意味であろう。
KMT[編集]
インドのインドラ、カフカスのヘミッツ、岐(くなど)の神等。KMの神と交錯する性質があるかもしれない。
SM[編集]
これは例外的に「日本語」の話。「墨(すみ)」という言葉は、おそらくシナ・チベット祖語の「黒」「熊」と同語源と考える。神の名や地名に「須美」などとつく場合が多い。また「須坂」という地名は「墨坂」から来ており、「須(す)」という人文字で「墨」「熊」を現すと考える。須佐之男、須勢理姫の「須」は「墨」「熊」という意味なのではないだろうか。
ちなみに上代中国語では「墨(mò)」という発音になる。シナ・チベット祖語の「黒」が「スモ」と発音したとすれば、日本語では「ス」が残り、中国語では「モ」が残ったといえるのではないだろうか。「M」の音は「M(蜜)」の意味ともなって「熊」を暗喩する。
KV、HVなど[編集]
ヒッタイトのヘバト、アイスランドのクレルヴォなど。
Estanという言葉について[編集]
エスタン(Estan)とはヒッタイトの太陽女神の名の一つである。英語版のwikipediaで、Estanという言葉を検索すると「-stan」というページが開かれる。「stan」とはペルシャ語で、「場所」や「国」を示す言葉で、その語源はインド・ヨーロッパ祖語に遡り、英語で「to stand」という意味なのだと記載されている。[7]この言葉は中央アジアの多くの国の名前として、現在でも残されている(パキスタン、タジキスタン等)。
このようにみると、「Estan」とは、「Eの土地」という意味となる。近い名にイスタヌ(Istanu)があるので、この場合の「E」は「K」が変化したものと考える。シュメールにおける大地と冥界の女神をキ(Ki)と呼ぶので、「キ女神の土地」とでもいう意味になるだろうか。これが太陽女神の名であるなら、シュメールのキもかつては太陽女神だったことが示唆されないだろうか。
M-、N-[編集]
「M」の子音は「熊トーテム」と関連すると考える[8]。M-で始まる神名は「母」という意味と関連する。男性の場合は「月(moon)」と「男性(man)」いう意味と関連し、古代の神話的には「月」と「男性」はほぼ同じ意味だったと考える。
M-系の神々の語源は、そのまま中国語の「妈妈(māma マーマ)」あるいは「妈(mā マー)」ではないだろうか。どちらも意味としては同じで「母さん」ということである。メソポタミアのニンマー(Ninmah)、ニンリル、モン族のンカウ・ヌー (Nkauj Hnub)等。
「月」と「男性」の場合、語源は「Man」として「M+new」すなわち、「T+new」が「若豚」を示すように「若熊」という意味なのだと考える。北斗七星を「小熊」とみなす場合には、北斗七星も含まれる。マンヌス、マーナガルムなど。
Nが名前の末尾につく場合には女神を現すことが多いように思う。エスタン(Estan)など。
MB[編集]
カナンのモレク(Molech)、アーサー王伝説のグィネヴィア(Guinevere)、ケルトのグラーニア(Gráinne)など。
B音が省略されてM-だけ残ったものもあると考える。起源は中国語の女媧(拼音: Nüwa)ではないか。
MT[編集]
エジプト神話のムト(Mut)、ネイト(Neith)、カナンのモレク(Molech)、ウガリットのモート(Mot)、アルメニアのミフル(Mihr)、インドのミトラ(Mitra)、ローマのミトラス(Mithras)、ギリシアのプロメーテウス(Prometheus)、ニーベルンゲンのグンテル(Gunther)、ケルトのヌアザ(Nuadha)、ブリテンのノドンス(Nodons)など。起源は中国イ族のムドン神と考える。
この語群は「蜜食獣」という意味(「熊」の暗喩)で、MTという子音で現れる場合がある。この場合のMの語源は中国語の「蜜(Mi)」ではないだろうか[9]。
また「黒」のことをシナ・チベット祖語で「*s-maŋ ~ s-mak」と読む[10]。これはおそらく「熊(クマ)」という言葉と同語源であって、「黒」=「熊」という意味と考える。
「MT」とした場合には女性の場合は「黒熊虎」、男性の場合は「黒熊豚」という意味と考える。
火や日に関する神であることが多い。ただし熊が蜜を盗んで食べる性質から来ているのかもしれないが、その性質は太陽からおいしい蜜(性質)を盗んで成ったものではないだろうか、プロメーテウスのように。ということで、窃盗神も兼ねる性質がある場合がある。軍神の場合は熊のように凶悪に戦う。ニーベルンゲンのグンテルは火の代わりに黄金を盗む。
meadについて・熊との関連[編集]
印欧語において、「熊」を暗喩する「蜜食獣(MT)」という言葉は「蜂蜜酒(mead)」と語源が同じなのではないだろうか。また、「マトゥヌス(Matunus)」や、ギリシア神話のメドゥーサは「蜜食獣」に入るように思う。また、茶色「brown」の語源は中国語の「白(bai)」なのではないだろうか。「太陽」を現すためにこう呼んではみたものの、熊は誰がどう見ても茶色なので、「茶色」を示す言葉として定着してしまったのではないだろうか。どんなに馬を鹿と呼ぼうとしても、馬は馬だから。
また、アルテミス、アテーナ-など、「art」と「m(n)」が組み合わさった場合にも「m」は「蜜」の意味なのかもしれない、と考える。
また、白を意味する印欧祖語に
- *bhel- (輝く、白く光る):black、whiteなど
がある。おそらくこれが「bear(熊)」の語源でもあって、熊のことをこう呼ぼうとしたのだけれども、やはり毛色が黒いので、「black(黒)」で定着してしまって、意図したのとは逆の意味になってしまったのではないだろうか。
NIN[編集]
メソポタミア神話の特徴としては、女神にNin-がつくものが多い(ニンフルサグ(Ninhursag)、ニンマー(Ninmah)等)。ただし、これは必ずしも絶対と言うことではなさそうである。例えば、ニヌルタ(Ninurta)という男性神も存在する[11]。
G[編集]
galに由来するもの[編集]
galはシュメール語で「偉大な」という意味である。英語でいうと「great」に相当する。言葉の頭だけでなく、中程に挿入されている「g」にもこの言葉の可能性がある。アーサー王伝説の グィネヴィア(Guinevere)、ニーベルンゲンのグンテル(ドイツ語: Gunther)など。
ag-、ig-など[編集]
「炎」を示す言葉。ラテン語の「ignis(炎)」と同語源の言葉である。インドの火神アグニ(Agni)、ギリシアのアガメムノーン(Agamemnon)、ニーベルンゲンのハゲネ(Hagen)など。
g音が省略されたものもあるように思う。エジプトのアメン(Amen)、ハイヌウェレ神話のアメタ(Ameta)など。
その他[編集]
メソポタミアのくさび形文字は左から読んでもよいし、右から読んでもよいものである。日本語でいうと、「あいうえお」と書いて左から「あいうえお」と読むが、これを右から「おえういあ」と読んでも正解なのだ。だから、個人的には左から読んで、近隣地域に似た名前の神がいない場合には、右から読んで探すようにしている。
関連項目[編集]
参照[編集]
- ↑ ヒッタイトにおける太陽神として、最高神であるヘバト女神が知られている。イスタヌはかつて、ヒッタイトにおける男性の太陽神であると考えられていたようだが、近年ではヘバト女神と同じもの(すなわち女神)であることが知られるようになっている。英語版wikipediaでは未だに「He」という言葉を使い、男性神として扱っているが、本サイトでは女神として扱う。「シュメールの太陽神ウツ(UTU)はボアズキョイ文書に頻繁に登場するだけでなく、複数の名を持っている。ハッティ族のエスタン、ヒッタイト人のイスタヌ、ルウィ人のティワト、アナトリア語のティヤト、フルリ人のシメギ、アッカド語のシャマス、シュメール語のウツである。...エスタンはハッティ族から女神として信仰され、通称は『女王』であった。」(Reallexikonder Assyriologyより)
- ↑ この名はローマのユーノー(Juno)に近い名ではないのだろうか。
- ↑ 蟾蜍(ヒキガエルはChánchúである。)
- ↑ Wiktionary:黒(最終閲覧日:26-01-23)
- ↑ 猪紋黒陶鉢、考古用語辞典、07-07-09
- ↑ Wiktionary:黒(最終閲覧日:26-01-23)
- ↑ 日本語で一番理解しやすい使用例としては、「ガソリンスタンド」とか「野球場のスタンド(観覧席)」なのではないだろうか。
- ↑ 西方で三大熊子音といえるのは「KM」「(V)AT」「M(T)」と考える。
- ↑ というよりも黒(*s-maŋ)という言葉そのものが「クマ」と読めるのではないだろうか。
- ↑ Wiktionary:黒(最終閲覧日:26-01-23)
- ↑ ただし、この神は本来女神であった可能性も否定はできないと考える。