ヘルメース

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最古の彫刻の一つ[1]、ペルセウスがタラリアを身につけ、キビシスを肩から提げ、メドゥーサを殺害するために顔を背ける様子が描かれている。ピトスのレリーフ。紀元前660年頃。ルーヴル美術館所蔵。
古代ギリシャのヘルマ(ヘルメス柱像)。ペニスが壊されていないもの。

ヘルメース(Hermēs)は、ギリシア神話に登場する青年神である。オリュンポス十二神の一人。神々の伝令使、とりわけゼウスの使いであり、旅人、商人などの守護神である。能弁、境界、体育技能、発明、策略、夢と眠りの神、死出の旅路の案内者などとも言われ、多面的な性格を持つ神である。その聖鳥はトキおよび雄鶏。幸運と富を司り、狡知に富み詐術に長けた計略の神、早足で駆ける者、牧畜、盗人、賭博、商人、交易、交通、道路、市場、競技、体育などの神であるとともに、雄弁と音楽の神であり、竪琴、笛、数、アルファベット、天文学、度量衡などを発明し、火の起こし方を発見した知恵者とされた。

ヘルメースはゼウスとマイア(下位の女神)[2]の子とされる。古典期(紀元前8世紀~)以降のヘルメースは、つば広の丸い旅行帽「ペタソス」を頭に被り、神々の伝令の証である杖「ケーリュケイオン」を手に執り、空を飛ぶことができる翼の生えた黄金のサンダル(タラリア、ラテン語: tālāria)を足に履いた姿で表され、時には武器である鎌「ハルペー」(ショーテルとも)を持つ。

死者、特に英雄の魂を冥界に導くプシューコポンポス(Psychopomp、魂の導者)としての一面も持ち、その反面冥界から死者の魂を地上に戻す役割も担っていた。

原始的形態においてはヘルメースは牧畜の神にして豊饒神であったとも考えられ、男根をもつヘルメース柱像(ヘルマ、herma)はヘルメースの原始的豊饒神としての面を示している。ヘルマは街道と境界の境界線を示す目印として使われた。他にも、アテーナイでは、幸運を招くよう家の外に置かれた。アルカディアは牧畜民が多い丘陵地帯であり、羊飼いたちはヘルメースを家畜の守り神として崇めていた。

ヘレニズム時代(紀元前4世紀~1世紀)に、エジプトのトート神と融合して信仰されるようになった。

神話

生い立ち

ヘルメースは早朝に生まれ、昼にゆりかごから抜け出すと、まもなくアポローンの飼っていた50頭を盗んだ[3][4]。ヘルメースは自身の足跡を偽装し、さらに証拠の品を燃やして牛たちを後ろ向きに歩かせ、牛舎から出た形跡をなくしてしまった[5]。翌日、牛たちがいないことに気付いたアポローンは不思議な足跡に戸惑うが、占いによりヘルメースが犯人だと知る[6]。激怒したアポローンはヘルメースを見つけ、牛を返すように迫るが、ヘルメースは「生まれたばかりの自分にできる訳がない」とうそぶき、ゼウスの前に引き立てられても「嘘のつき方も知らない」と言った[3]。それを見たゼウスはヘルメースに泥棒と嘘の才能があることを見抜き、ヘルメースに対してアポローンに牛を返すように勧めた[3]。ヘルメースは牛を返すがアポローンは納得いかず、ヘルメースは生まれた直後(牛を盗んだ帰りとも)に洞穴で捕らえたの甲羅にを張って作った竪琴を奏でた[3]。それが欲しくなったアポローンは牛と竪琴を交換してヘルメースを許し、さらにヘルメースが葦笛をこしらえると、アポローンは友好の証として自身の持つケーリュケイオンの杖をヘルメースに贈った(牛はヘルメースが全て殺したため、交換したのはケーリュケイオンだけとする説も。なお、殺した牛の腸を竪琴の材料に使ったとも)[3]。このときアポローンとお互いに必要な物を交換したことからヘルメースは商売の神と呼ばれ、生まれた直後に各地を飛び回ったことから旅の神にもなった。

ヘルメースはヘーラーの息子ではなかったが、アレースと入れ替わってその母乳を飲んでいたため、ヘーラーはそれが分かった後もヘルメースに対して情が移り、彼を我が子同然に可愛がった[3]

アルゴス殺し

ゼウスはイーオーという美女と密通していた。これを見抜いたヘーラーはゼウスに詰め寄るが、ゼウスはイーオーを美しい雌牛に変え、雌牛を愛でていただけであるとした。ヘーラーは策を講じ、その雌牛をゼウスから貰うと、百眼の巨人アルゴスを見張りに付けた。この巨人は身体中に百の眼を持ち、眠る時も半分の50の眼は開いたままであったので、空間的にも時間的にも死角が存在しなかった。ゼウスはイーオー救出の任をヘルメースに命じた。ヘルメースは葦笛でアルゴスの全ての眼を眠らせると、剣を用いてその首を刎ねた。もしくは巨岩を投げ当てて撲殺した。このことから、ヘルメースは「アルゲイポンテース」と呼ばれ、これは「アルゴス殺し」という意味であった。

好色

ある時アプロディーテーに惚れたヘルメースは彼女を口説いたが、まったく相手にされなかった[3]。そこでヘルメースはゼウスに頼んでを借りてくると、その鷲と泥棒の才能を使ってアプロディーテーの黄金のサンダルを盗んだ[3]。ヘルメースはこのサンダルを返すことを条件に関係を迫り、彼女を自由にした[3]。2人の間にはヘルマプロディートスプリアーポスが生まれた[3]。この他にもミュルミドーンの娘エウポレメイア、ペルセポネーヘカテー、多数のニュンペーたちと関係を持っており[6]アイタリデースエウドーロスアウトリュコスなどの子供をもうけている[3]。また、パーンもヘルメースの息子とされることがある[3]

ギガントマキアー

ギガントマキアーにおいてヘルメースはハーデースの隠れ兜を被って姿を消し、ギガンテスの一人ヒッポリュトスを倒している[3]


関連項目

  • 神鳥:「ヘルメースとアポローン」

参考文献

参照

  1. Gantz, 541.
  2. 巨人アトラースとプレーイオネーの7人の娘たちプレイアデス(昴)の1人
  3. 3.00 3.01 3.02 3.03 3.04 3.05 3.06 3.07 3.08 3.09 3.10 3.11 3.12 マイケル・グラント、ジョン・ヘイゼル『ギリシア・ローマ神話事典』大修館書店
  4. マイケル・グラント、ジョン・ヘイゼル『ギリシア・ローマ神話事典』大修館書店
  5. マイケル・グラント、ジョン・ヘイゼル『ギリシア・ローマ神話事典』大修館書店
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