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、 2023年2月4日 (土) 15:55
'''ハチ'''(蜂)とは、昆虫綱ハチ目(膜翅目)に分類される昆虫のうち、アリ(ハチ類ではあるが、多くの言語・文化概念上、生活様式の違い等から区別される)と呼ばれる分類群以外の総称。ハバチ亜目の全てと、ハチ亜目のうちハナバチ、スズメバチ等がこれに含まれる(ハチ目を参照)。
== 特徴 ==
=== 共通 ===
* これらの蜂は[[昆虫の翅|翅]]が2対4枚あり、どれも[[膜|膜質]]である。後ろの翅は前の翅より小さい。
* [[大あご]]が発達している。ただし[[ミツバチ]]などのハナバチ類は大あごが小さく、花の[[蜜]]を吸うための[[器官]]が発達する。
* 成長段階は[[卵]]→[[幼虫]]→[[蛹]]→[[成虫]]という[[完全変態]]を行う。
* メスの成虫には[[産卵管]]が発達するが、産卵管を[[毒針]]に変化させた種類がよく知られている。
===社会性を持つ蜂の特徴===
ハチの一部と、アリは親が子の面倒を見るだけでなく、その子が大きくなっても共に生活し、大きな[[集団]]を形成するに至る。このような昆虫が[[社会性昆虫]]である。
[[女王蜂]]、[[働き蜂]]など、それぞれの[[役割]]が決まっており、それにより[[一生]]の過ごし方が違う。
* 蜂の社会は[[雌|メス]]が中心で、働き蜂も全てメスである。[[雄|オス]]は特定の時期に女王蜂と[[交尾]]する為にのみ生まれる。そのため、女王蜂は最初はメスを絶えず産み続け、一定数を過ぎるとオスを産み出す。
*基本、オスは働かないが、アシナガバチにおいて、オスが働く所を観察した記録がある。
* 女王蜂の腹の中には[[精子]]を貯えておける特殊な袋があり、一度交尾すると長期間にわたり産卵し続けることが可能である。
* ミツバチの場合、[[老化]]や[[怪我]]などにより[[繁殖]]能力を失った女王蜂は、働き蜂によって[[巣]]の外に捨てられる。幼虫の時から[[餌]]を自ら獲得してきた女王蜂は外で生きていき、新しい集団を作る。女王蜂を失った巣では、すぐに新しい女王蜂がたてられる。
{{See|社会性昆虫#ハチの社会|真社会性#ハチ目}}
== 分類 ==
ハチといえば[[スズメバチ]]、[[アシナガバチ]]、[[ミツバチ]]などが有名で、「大きな巣を作って家族でくらす」「花にやってくる」「毒針で刺されるから危ない」などの[[イメージ]]が定着している。しかしこれはハチ全体で見ると一部の種類に過ぎず、その生態や体つきは[[生物多様性|多様性]]に富んでいる。
世界最大のハチは{{ill2|ウォレスズ・ジャイアント・ビー|en|Megachile pluto}}で翅を広げた幅は6[[センチメートル]]にもなる<ref>「[https://www.asahi.com/articles/ASM2S64ZGM2SULBJ004.html ハチやゾウガメ、絶滅してなかった 100年ぶり発見も]」[[朝日新聞]]デジタル(2019年2月27日)2019年4月20日閲覧。</ref>。
; [[キバチ科]]
: 幼虫が[[木材]]を食べて育つ。メスの成虫は[[木材]]に[[穴]]を開けて産卵するため、非常に硬い産卵管を発達させている。
; ハバチ科、[[ヒラタハバチ科]]、[[コンボウハバチ科]]、[[ミツフシハバチ科]]
: 幼虫は植物の[[葉]]を食べて育つ。幼虫は小型の[[イモムシ]]とよく似ているが、からだをS字型にくねらせるのが特徴。
[[File:Stilbum cyanurum on flower.jpg|thumb|花の上に乗る[[オオセイボウ]]]]
; [[ヤドリキバチ科]]、[[ヤセバチ上科]]、[[ヒメバチ上科]]、[[コバチ上科]]、[[クロバチ上科]]、[[ツチバチ科]]、[[アリガタバチ科]]、[[セイボウ科]]
: 他の昆虫に卵を産みつけ、幼虫はその昆虫の組織を食べながら成長し、最後には殺してしまう捕食[[寄生蜂]]。[[モンシロチョウ]]の幼虫に[[寄生]]する[[アオムシサムライコマユバチ]]や、長い産卵管を持つ[[ウマノオバチ]]など多くの種類がいて、寄生する[[宿主]]も多様。なかには他のハチの巣に寄生する種類もいる。
; [[タマバチ科]]
: 植物の[[生体組織|組織内]]に卵を産みつける。植物に見られる「[[虫こぶ]]」にはこのハチの仲間の幼虫によるものが多々ある。
; [[ベッコウバチ科]]
: 翅が[[鼈甲]]色に透き通った種類が多い。[[クモ]]を襲って毒針で[[麻酔]]し、地面に掘った巣穴に運び込んで産卵する[[狩りバチ]]。[[カリウドバチ|狩人蜂]]とも言う。幼虫は麻酔で動けないクモを食べて成長する。[[タランチュラ]]を狩る「タランチュラホーク」([[オオベッコウバチ]])という種類もいる。
[[File:Polistes jokahamae eat.jpg|thumb|肉団子を作る[[セグロアシナガバチ]]]]
; [[スズメバチ科]]
: 単独生活の狩りバチである[[ドロバチ]]類と、女王蜂を中心とした家族生活をする[[スズメバチ]]類と[[アシナガバチ]]類が分類されている。他の昆虫を狩って幼虫の餌とする。スズメバチ類とアシナガバチ類は巣や自分の[[防衛]]のためには敵に[[容赦なく|容赦ない]]攻撃を加える性質や毒針を持つことなどが知られている。人間への被害([[ハチ刺傷|ハチ刺症]])も頻繁である。
[[画像:Wasp capturing feed OCT 2004.jpg|right|thumb|獲物を抱えた[[ジガバチ]]([[アナバチ]]の一種)]]
; [[アナバチ科]]
: クモや[[シャクトリムシ]]、[[コオロギ]]類などを襲って毒針で麻酔し、巣に運び込んで産卵する狩りバチ。巣は地中に穴を掘る種類と泥などで作る種類とがいて、狩る昆虫も多様。[[セナガアナバチ科]]([[サトセナガアナバチ]]・[[エメラルドゴキブリバチ]]など)は完璧な巣を作らず、[[ゴキブリ]]を狩って既存の物の隙間に運び込んで産卵する。
[[Image:Anthidium September 2007-2.jpg|200px|right|thumb|alt=Solitary bee|単独生活性の[[ハナバチ]]([[トモンハナバチ]]の一種)]]
; [[コハナバチ科]]、[[ハキリバチ科]]、ミツバチ科
: いわゆる[[ハナバチ]]類。花によくやってくるハチで、[[花粉]]や蜜を集めて巣に運び込み産卵するが、[[ミツバチ]]科は女王蜂を中心とした家族生活を行う。体にたくさんの[[毛 (動物)|毛]]が生えていて、[[顕花植物]]の[[受粉]]に一役買っている。
; [[ギングチバチ科]]
: 狩りバチの一群で、[[ハエ目]]やハナバチなどの昆虫を狩りの対象とする。2011年に[[インドネシア]]で発見された[[メガララ・ガルーダ]]など。
== アリとハチ ==
[[アリ]]は、一般にはハチとは全く違うかのように扱われるが、[[分類学]]上は、アリはハチの中の1分類群である。アリは一般に翅がなく、多くのハチは翅を持つが、ハチの中でも[[シバンムシアリガタバチ|アリガタバチ]]や[[アリバチ]]など成虫(特に雌)が翅を持たない種もあり、それらは外見上アリに類似する。また、アリの女王と雄アリは翅を持ち、結婚飛行を行う。このときの姿はまさにハチで、特に雄アリはハチに似ている。また、一般にはアリは針を持たないが、一部には[[ヒアリ]]や[[ハリアリ]]等、針を持ち、刺されると痛むものもある。アリは基本的には[[肉食]]で、狩りバチの系統から、地上生活へ進んだと考えられてきたが、最近の研究で、ミツバチと共通の[[祖先]]をもつ事が分かった。
== 蜂刺され ==
予防策はスズメバチ類を例にすると、巣と遭遇した場合は「巣に近づかず」「見張りのハチを刺激せず」姿勢を低くして巣から速やかに離れる。しかし、威嚇や攻撃を受けた時に手で追い払ったり大声で騒いだりする事は禁物で、直線的に追いかけてくるハチ類から逃れるには姿勢を低くしたり、[https://kotobank.jp/word/%E6%80%A5%E8%A7%92%E5%BA%A6-476660 急角度]で曲がるなどの方法が有効である。
=== 毒 ===
:[[ハチ毒]]([[w:Bee venom|Bee venom]]、[[アピトキシン]]、[[w:Apitoxin|Apitoxin]])の成分は主に[[酵素]]類:[[ホスホリパーゼ]]''(phospholipase)''、[[ヒアルロニダーゼ]]''(Hyaluronidase)''、[[プロテアーゼ]]''(protease)''、[[ペプチド]]類:''Melittin ''、[[キニン]]'' kinins ''、ほかに[[ヒスタミン]]、[[ドーパミン]]などの物質で構成されている<ref>「[http://idsc.nih.go.jp/iasr/18/210/graph/t2103j.gif ハチ類の毒液中に含まれる主な成分]」 [[国立感染症研究所]] 感染症情報センター</ref>。これらの成分の相互作用により痛み、血圧降下、[[タンパク質]]の分解(体組織の破壊)、[[アレルギー]]症状などの症状を引き起こす。[[ハチ刺症]]は2回目以降では[[ショック|アナフィラキシーショック]]を起こすことがあり生命に危険がある。万一、刺された場合は、[[毒]]の種類に関わらず流水で毒液を絞り出すようにして洗い流す。
:''刺された場合の処置は、[[スズメバチ#刺された場合の対処法|こちら]]の項を参照。''
=== 毒針 ===
:ハチといえば毒針で刺すものと思われがちであるが、実際に刺すハチはほんの一握りに過ぎない。その毒針はメスが持つことが多く、オスにはぼぼ無い。
:本来、ハチの毒針は、産卵管であった。キバチ類においてはこれを材の中に差し込んで産卵し、寄生バチの場合、宿主の体内に産卵するのに用いられる。このあたりから産卵管に針としての性能が与えられるようになる。狩りバチは、毒を注射することで、獲物を麻痺させ、それを巣に蓄えて幼虫に与える。しかし、これらのハチは単独生活であり、自分の身を守るために毒針を使うことはあまりない。[[狩りバチ]]の系統でも、[[ハナバチ]]類でも、家族生活をするようになって、毒針を家族を守るために、つまり利他的に用いるようになる。
:[[社会性昆虫]]である[[アシナガバチ]]、[[スズメバチ]]、[[ミツバチ]]は集団で敵に当たる。蜂が他の何かの生物に対して毒針を刺すと、そこから蜂が攻撃的になる[[フェロモン]]を発するため、蜂のどれか一匹が刺すと他の蜂もつられて集団で襲いかかるという習性がある。
:また、ミツバチの針には返し棘があり皮膚に刺さると抜けなくなり、無理に抜けば[[毒腺]]ごと抜けて[[即死]]する。俗に「ハチの一刺し」というのはこれのことだが、他のハチは連続していくらでも刺すので、これには当てはまらない。他に[[マルハナバチ]]と[[ベッコウバチ]]は刺されるとかなり痛む。
== 関連項目 ==
{{Commonscat|Hymenoptera|ハチ目}}
* [[蜂蜜]]
* [[毒針]]
* [[社会生物学]]
* [[社会性昆虫]]
* [[ハニカム構造]] - 「ミツバチの[[櫛]](蜂の巣)」のような形状であることから命名された。
* [[アリ]]
* [[はちのこ]]
* [[Ah-Muzen-Cab]] - 蜂または蜂蜜を司るとされる神
* [[養蜂]]
* {{ill2|養蜂場|en|Apiary}}
* [[蜂巣炎]] - 患部が蜂の巣のような形状となることから命名された。
* [[蜂窩織炎]] - 顕微鏡で監察した標本が蜂の巣と幼虫のように見えることから命名された。
== 外部リンク ==
* [http://idsc.nih.go.jp/iasr/18/210/tpc210-j.html わが国における蜂刺症] [[国立感染症研究所]] 感染症情報センター
== 参照 ==
{{DEFAULTSORT:はち}}
[[Category:蜂|*]]
[[Category:昆虫]]