最も特殊な異伝は、『ホメーロス風讃歌』の中の「アポローン讃歌」であろう。ゼウスが知恵の女神アテーナーをひとりで生み出したことや、彼女の産んだヘーパイストスがアテーナーに見劣りすることに腹を立て、[[ティーターン]]神族の助けを借りて単性で[[テューポーン]]を産んだとされる<ref>『ホメーロス風讃歌』第3歌「アポローン讃歌」304-354。</ref>。
=== ヘーラークレース ヘーラークレースと天の川 ===ヘーラーの母乳は飲んだ人間の肉体を不死身に変える力があり、ヘーラクレースもこれを飲んだために乳児時代から驚異的な怪力を発揮できた。また、この時にヘーラクレースの母乳を吸う力があまりにも強かったため、ヘーラーはヘーラクレースを突き飛ばし、その際に飛び散ったヘーラーの母乳が[[天の川]]になった。なお、ヘーラクレースはヘーラーの子ではないが、「ヘーラーの栄光」という意味の名を持つ<ref name="G" />。ヘーラクレースが神の座に着く時、ヘーラーは娘のヘーベーを妻に与えた。
ヘーラーはヘーラークレースの継母であり、敵である。 ヘーラークレースという名前は「ヘーラーの栄光」を意味する。 ホメロスの『イーリアス』では、アルクメネーがヘーラークレースを産もうとしたとき、ゼウスがすべての神々に「その日、ゼウス自身による子供が生まれ、周囲の者を支配するだろう。」と告げたとされる。ヘーラーはゼウスにその旨の誓約を求めた後、オリンポスからアルゴスに降り立ち、ステネロス(ペルセウスの息子)の妻にわずか7ヶ月でエウリュステウスを産ませ、同時にアルクメネーにヘーラークレースを産ませないようにしたのである。その結果、ゼウスの誓いが果たされ、ヘーラークレースではなくエウリュステウスが支配者として選ばれたのである<ref name="Hom. Il. 19.95"/>。パウサニアスの記述では、ヘーラーはアルクメネがヘラクレスを産むのを邪魔するために魔女(テーベ人たちは魔女と呼んでいた)を送り込んでいる。魔女たちは出産を阻止することに成功するが、ティレシアスの娘ヒストリスが魔女たちを欺く策略を思いつく。ヒストリスはガランシスと同じく、アルクメネーが子供を産んだと告げ、魔女たちは騙されて立ち去り、アルクメネーが出産するのを許した<ref name="Paus. 9.11.3">Pausanias, ''Description of Greece'' [https://www.perseus.tufts.edu/hopper/text?doc=Paus.+9.11.3 9.11.3]</ref>。