蠱毒

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蠱毒(こどく)は、古代中国において用いられた呪術を言う。動物を使うもので、中国華南の少数民族の間で受け継がれている[1]蠱道(こどう)、蠱術(こじゅつ)、巫蠱(ふこ)などともいう。

「蠱術」という概念

蠱毒というのは比較的新しい概念で、個人が個人を呪うような、やや禍々しい呪術のような印象を受けるが、そもそもの起原は「小動物を器の中に入れて殺し合いをさせる」という禍々しいのかちまちましているのかよく分からないものではなくて、古代の人々の「器信仰」が根底にあるし、もっと霊的に広い概念であるように思う。その一方で、「他人を支配したい」という王権の発生とも関連する思想につながっているように思う。

よって本HPでは、これを広く「蠱術」と呼ぶことにしたい。単に壺の中に毒虫を閉じ込めるということではなく、「観念的なものも含み、器の中で色々なものを変化させる術」という意味である。変化させるものは、物質的にいえば食材を混ぜ合わせ加工して作る料理のような術でもよいし、霊的にいえば魂と魂を混ぜ合わせ加工して作る合成霊を作る術でもよい。あるいは二つか三つの物語を組み合わせて第三の小説を新たに作り出す術、とか。饕餮があらゆる動物の要素を含む怪物であったり、竜が蛇や豚や馬を合成したものだったりする、そういうものを「作り出す」ことも「蠱術」なのである。

そうやって作り出したものを、制作者の利益になるように、また不幸をもたらしたい相手に不利益になるように使用することまでが、「蠱術」といえよう。

現代風にいえば、誰かが書いた小説を元にして、もっと面白い話を作り上げ、原作者よりも先に無断で出版してお金儲けをし、逆に原作者を盗作者扱いして貶める、とかそういうことをするのが、私のイメージしている「蠱術」である。

器信仰

中国ミャオ族のチャンヤン神話では、蝶の母・妹榜妹留(メイバンメイリュウ)から生まれた卵から、チャンヤンを始めとして様々なものが生まれる。そして、卵の殻からは「供犠用の祭椀」が生じたと言われている。「器」は神に捧げるものを入れる入れ物でもあり、それと引き換えに神から何かを得て「生み出す」媒介でもあった、と考えられる。

「器」は、母なる神の一部であり、そこに祖先の霊を留める依り代であり、祖霊にわずかな供物を捧げるかわりに、多くの豊穣を求める媒介でもあった。まず、「器」とは豊穣を「生み出す」媒介だったと考える。台湾原住民のパイワン族の伝承には、太陽が壺の中に卵を生んで、そこから人類が発生したとか、太陽光線が壺に当たって、壺が割れて人類が発生した、というものがある。壺は「母なる神」として「太陽の霊」を人類に化生させる媒介とも考えられていた。それが現実の具体的な「器信仰」となる場合には、「母なる神」が子孫である人類のために、何か役にたつものや「守護する神の力」などを増やして送ってくれる媒介でもある、とされたのだろう。

作法

蠱毒の作法を見ると、「何かを入れた後、器に蓋をして、しばらくの期間放置し、霊的なものを含め別の何かを得る」となっている。これは「酒の醸造」を模したものではないだろうか。

史記には、夏の初代国王ののころ、儀狄(ぎてき)が酒を発明した、とある[2]。考古学的には、紀元前7000年頃の賈湖遺跡(河南省)から、麹を使用した米、ハチミツ、果実(サンザシなど)を用いた醸造酒の成分が検出されている。また、揚子江下流域の上山文化(紀元前8000年-6500年)では世界最古の稲作と酒造りが確認されている。

伝承的には、日本では天女が天から降りてきて酒造りなどを教えた、という話がある。ミャオ族には、洞窟にいた老婆から得た穀物と麹種から酒を造った、という伝承がある(ダロンの項参照)。

また古くは酒の製造は「口噛み酒」といい、これは材料を口に入れて噛み、それを吐き出して溜めたものを放置して造っていた。発生地は不明ではあるが、穀物以外のデンプンを含んだ植物を食べていた東南アジアから南太平洋域が有力とされる[3]。これらの文化圏と米が伝播していったアッサム地方や雲南からの稲作文化の融合点であるマレーシアなどの東南アジアが、米で造る口噛み酒の発生地として有力である[3]。原料を煮炊きしたり、原料を酸敗させた後で口に入れて噛む製法がある[3]。原料を煮炊きすることで糖化しやすくなる[3]。この製法は、台湾高砂族で用いられていた[3]

概要

を使用した呪術である犬神を使用した呪術である猫鬼などと並ぶ、動物を使った呪術の一種である。

代表的な術式として、『医学綱目』巻25の記載によると、「ヘビムカデゲジカエルなどの百虫を同じ容器で飼育し、互いに喰らわせ、勝ち残ったものが神霊となるためこれを祀る」と記載されている。

また、同書によると、「このを採取して飲食物に混ぜ、人に害を加えたり、思い通りに福を得たり、富貴を図ったりする。人がこの毒に当たると、症状はさまざまであるが、一定期間のうちにその人は大抵死ぬ」と記載されている。

歴史

中国

古代中国において、広く用いられていたとされる。どのくらい昔から用いられていたかは定かではないが、白川静など、古代における呪術の重要性を主張する漢字学者は、時代の甲骨文字から蠱毒の痕跡を読み取っている[注釈 1]

「畜蠱」(蠱の作り方)についての最も早い記録は、『隋書』地理志にある「五月五日に百種の虫を集め、大きなものは蛇、小さなものは虱と、併せて器の中に置き、互いに喰らわせ、最後の一種に残ったものを留める。蛇であれば蛇蠱、虱であれば虱蠱である。これを行って人を殺す」といったものである。

中国の法令では、蠱毒を作って人を殺した場合あるいは殺そうとした場合、これらを教唆した場合には死刑にあたる旨の規定があり、『唐律疏議』巻18では絞首刑、『大明律』巻19、『大清律例』巻30では斬首刑となっている。

日本

日本では、厭魅(えんみ)[注釈 2]と並んで「蠱毒厭魅」として恐れられ、養老律令の中の「賊盗律」に記載があるように、厳しく禁止されていた。実際に処罰された例としては、769年県犬養姉女らが不破内親王の命で蠱毒を行った罪によって流罪となったこと(神護景雲2年条)、772年井上内親王が蠱毒の罪によって廃されたこと(宝亀3年条)などが『続日本紀』に記されている。平安時代以降も、たびたびを出して禁止されている。

蠱毒の種類

瑪蝗蠱(ばこうこ) 泥鰍蠱(でいしゅうこ) 蝦蟇蠱(がまこ) 蛇蠱(だこ) 石蠱(せきこ) 癲蠱(てんこ) 三屍蠱(さんしこ) 蜈蚣蠱(ごしょうこ) 金蚕蠱(きんさんこ)[4]

蠱毒の登場する作品

小説

  • 王様ゲーム シリーズ - 蠱毒によって生まれたウイルスが、人々を殺害していた。

脚注

関連項目

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