ルンペルシュティルツヒェン

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ルンペルシュティルツヒェン」(Rumpelstilzchen、KHM 55)は、『グリム童話』(Kinder- und Hausmärchen) に収録されている作品。『がたがたの竹馬こぞう』と訳されることもある。

悪魔(鬼)の名前当て」というモチーフは、イギリスの『トム・ティット・トット』等にも見られる。この話には世界中に存在している「名前の神秘性」、対象の名前を知れば相手を支配出来るという概念が込められている。

あらすじ

貧しい粉引きが、王に「うちの娘は藁を紡いで金に変えることが出来る」と嘘をつく。王は娘を王妃にすることを条件に藁を金に変えるようにせまり、塔の上に糸車と藁とともに娘を閉じ込める。三日後の朝までに金が紡げないと彼女は殺されてしまう。娘が泣いていると小人(ドワーフ)が現れ、最初の晩はネックレスと引き換えに金を紡いでやろうと迫る。次の晩は、指輪と引き換えに紡いでやろうと迫る。いよいよ処刑が迫る最後の晩、小人は最初に生まれる子供と引き換えに藁を金に変えると迫り、ついに娘は折れる[1]

藁を金に紡ぐ約束が果たせ、王妃になった娘が産褥の床についていると、小人が赤ん坊を奪いにやってくる。王妃の懇願を受けた小人は「三日後までに自分の名前を当てられたら子供を連れて行かない」と約束する。王妃は国中の名前を集めさせるが小人の名前は見つからない。困っていると、王が森で奇妙な歌を歌う小人を見たと語る。「今日はパン焼き 明日はビール作り 明後日は女王の子を迎えに 俺様の名前がルンペルシュティルツヒェンだとは うまいことに誰もご存知ない」。なんと、小人が歌っていたのは自分の名前(ルンペルシュティルツヒェン)だった。三日たって子供を連れ去りにやってきた小人は王妃に名前を言い当てられ激昂し「お前は悪魔から聞いたな! お前は悪魔から聞いたな!」と地団駄を踏み、逆上の余り自分で自分を引き裂いてしまう。

名の由来

ルンペルシュティルツヒェン (Rumpelstilzchen) とは、ガタゴト鳴る柱(Rumpel = ガタゴトという音、騒々しい。Stilz = ものを支える柱)に擬人的な意味合いで指小辞(-chen) を添えたものであり、「妖怪がたごと柱さん」といったような意味である。Rumpelstilt または Rumpelstilz と呼ばれるゴブリンの一種は柱を鳴らしたり板をたたいたりする存在で、Rumpelgeist や Poltergeist(ポルターガイスト)など家で物音を立てたり家ごと揺らしたりする妖怪に似たものである。

私的解説

 いわゆる「名前当て」の類話は、人の命を求める悪神と何らかの取引をして、相手の名前を当てれば恩恵のみを得られるが、名前が分からなければ自分や子供の命、それらに類するものを支払わなければならない、という物語である。西欧ではゲルマン系の物語に多く見られるのではないか、と思う。この物語群の悪神の通り名は「トム・ティット・トット」や「トロール」であって、先頭に来る子音に「T」がつく男性形の雷神と思われる。トゥンダはまさに、雷神トールが民間伝承化したものである。真名を隠すべし、という信仰は洋の東西に見られ、日本の記紀神話では、阿遅鉏高日子根神(アヂスキタカヒコネ)の正体を下照媛(シタテルヒメ)が暴く、という物語がある。「アヂスキタカヒコネ」の「ア」を接頭語とすれば、この神は「ヂスキタカヒコネ」という通称であるともいえ、先頭に来る子音が「D」であるともいえ、賀茂別雷命と同一視される阿遅鉏高日子根神(アヂスキタカヒコネ)が西欧型の雷神でもあることが示唆されないだろうか。

 一方の下照媛は、中国の雷母の「人間に化けた獣の正体を暴く」という性質と類似しているように思う。雷母は道教の女神であって、道教の成立は後漢の頃とされているが、古くからの中国の雷神女神の概念が受け継がれているのではないだろうか。

「名前当て」の類話

関連項目

名前当て

参照

  1. この話の形以外に「王は翌朝までを期限に『紡げなければ命をとる』という条件を出し、その夜自分のネックレスを代償に娘は小人に金を紡いでもらった。翌朝金を見た王は『もっと金が欲しい』と思い同じ条件で再び娘を閉じ込め、娘は今度は指輪(あるいは腕輪)を代償にした。その翌日王は娘をみたび閉じ込めるがその時に条件を『紡げたら自分の妃にしてやる』に変える。そして、娘にはもう代償にするほどの持ち物が無くなっていたため、小人に最初の子供を要求されてしまった」という形もある。