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食性は植物食傾向の強い雑食で<ref>小笠原暠 , 冬期のキジとヤマドリの生息環境と食性について , 山階鳥類研究所研究報告 , 5 , 4 , 351-362p , 山階鳥類研究所 , 1968 , https://doi.org/10.3312/jyio1952.5.4_351 , doi:10.3312/jyio1952.5.4_351</ref>、植物の葉、花、果実、種子、昆虫、クモ、甲殻類、陸棲の巻貝、ミミズなどを食べる<ref name="fn2"/><ref name="fn3"/><ref name="fn4"/>。 | 食性は植物食傾向の強い雑食で<ref>小笠原暠 , 冬期のキジとヤマドリの生息環境と食性について , 山階鳥類研究所研究報告 , 5 , 4 , 351-362p , 山階鳥類研究所 , 1968 , https://doi.org/10.3312/jyio1952.5.4_351 , doi:10.3312/jyio1952.5.4_351</ref>、植物の葉、花、果実、種子、昆虫、クモ、甲殻類、陸棲の巻貝、ミミズなどを食べる<ref name="fn2"/><ref name="fn3"/><ref name="fn4"/>。 | ||
− | + | オスは鳴くことはまれだが、繁殖期になるとオスは翼を激しくはばたかせ、オートバイのエンジン音にも似た非常に大きな音を出す('''ドラミング'''、ほろ打ち)ことで縄張り宣言をし、同時にメスの気を惹く | |
<ref name="nationalgeographic">https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/web/17/112900016/022200005/ , 春の山林に響く 100ヘルツの重低音 , 連載:日本だけの翼 , ナショナル・ジオグラフィック , 2021-06-20</ref>。 | <ref name="nationalgeographic">https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/web/17/112900016/022200005/ , 春の山林に響く 100ヘルツの重低音 , 連載:日本だけの翼 , ナショナル・ジオグラフィック , 2021-06-20</ref>。 | ||
また、ドラミング(ほろ打ち)の多くは近づくものに対する威嚇であるともされる<ref name="kawaji" />。 | また、ドラミング(ほろ打ち)の多くは近づくものに対する威嚇であるともされる<ref name="kawaji" />。 | ||
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ヤマドリは雌雄が峰を隔てて寝るという伝承があり、古典文学では「ひとり寝」の例えとして用いられた<ref>『広辞苑』第五版 「山鳥」の項。</ref>。またオスのヤマドリは尾羽が長い事から、「山鳥の尾」は古くは長いものを表す語として用いられており<ref name="fn1"/>、百人一首には柿本人麻呂の作として「あしびきの山鳥の尾のしだり尾のながながし夜をひとりかも寝む」が取られている。この歌では「山鳥の尾のしだり尾の」までが「ながながし」を導く序詞である。 | ヤマドリは雌雄が峰を隔てて寝るという伝承があり、古典文学では「ひとり寝」の例えとして用いられた<ref>『広辞苑』第五版 「山鳥」の項。</ref>。またオスのヤマドリは尾羽が長い事から、「山鳥の尾」は古くは長いものを表す語として用いられており<ref name="fn1"/>、百人一首には柿本人麻呂の作として「あしびきの山鳥の尾のしだり尾のながながし夜をひとりかも寝む」が取られている。この歌では「山鳥の尾のしだり尾の」までが「ながながし」を導く序詞である。 | ||
− | <!--民話への登場はキジほど多くない。これはヤマドリの住環境が主に鬱蒼とした森林の奥で、猟師以外にヒトの目につく事が少なかったからだろうと思われる。-->ヤマドリに関する俗信としては、年老いて尾が十三節になったヤマドリは人を騙したり、また夜に人魂のように光るなどの言い伝えがあり<ref>東洋大学民俗研究会 『南部川の民俗 ―和歌山県日高郡南部川村旧高城・清川村―』昭和55年度号、1981年、474頁</ref><ref>長沢利明 「塩原の民俗知識および俗信」『常民文化研究』通巻12号、常民文化研究会、1988年、8頁</ref>、長野県に伝わる「八面大王」という鬼を坂上田村麻呂が退治する物語では、「三十三節あるヤマドリの尾羽で矧いだ矢で無ければ鬼を退治出来ない」という描写がある<ref> | + | <!--民話への登場はキジほど多くない。これはヤマドリの住環境が主に鬱蒼とした森林の奥で、猟師以外にヒトの目につく事が少なかったからだろうと思われる。-->ヤマドリに関する俗信としては、年老いて尾が十三節になったヤマドリは人を騙したり、また夜に人魂のように光るなどの言い伝えがあり<ref>東洋大学民俗研究会 『南部川の民俗 ―和歌山県日高郡南部川村旧高城・清川村―』昭和55年度号、1981年、474頁</ref><ref>長沢利明 「塩原の民俗知識および俗信」『常民文化研究』通巻12号、常民文化研究会、1988年、8頁</ref>、長野県に伝わる「八面大王」という鬼を坂上田村麻呂が退治する物語では、「三十三節あるヤマドリの尾羽で矧いだ矢で無ければ鬼を退治出来ない」という描写がある<ref>臼井健二「[http://www.ultraman.gr.jp/shalom/sinaninominnwa.html 八面大王と穂高の地名]」 「信濃路のエンジョイライフ」1980年10月</ref>。 |
− | + | 日本では、群馬県と秋田県がヤマドリを県の鳥としている。 | |
=== 狩猟と保護 === | === 狩猟と保護 === | ||
− | + | キジと共に狩猟対象とされている。日本では鳥獣保護法における狩猟鳥獣であるが、環境省令により2022年(令和4年)9月14日までメスヤマドリの捕獲が禁止されている<ref>https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=414M60001000028#77 , 鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律施行規則 (平成十四年環境省令第二十八号), e-Gov法令検索]] , 環境省, 2019-12-14 , 2020-08-13</ref>。 | |
− | 人工授精<ref> | + | 人工授精<ref>丸猶丸 , 一戸健司ほか , ヤマドリ, キジの人工授精に関する研究 , 日本家禽学会誌 , 3 , 2 , 83-87p , 日本家禽学会 , 1966 , https://doi.org/10.2141/jpsa.3.83 , 10.2141/jpsa.3.83</ref>による養殖技術が確立され<ref name="gunmaryoyu" />、野生個体の増加を目論んだ幼鳥や成鳥の放鳥が各地の民間団体や<ref name="gunmaryoyu">[http://gunmaryoyu.jp/index.php?事業活動 猟鳥増殖事業] 群馬県猟友会</ref>自治体<ref>http://www.pref.shizuoka.jp/kankyou/ka-070/wild/documents/jigyoukeikau_henkou.pdf 第11次鳥獣保護管理事業計画] 静岡県</ref>により行われている<ref name="foresternet">[http://www.foresternet.jp/app/srch3/get_file/3466 養殖ヤマドリ放鳥後のテレメトリー調査] 東京都</ref>。放鳥に用いるのは人工授精により養殖育成した個体<ref>[http://www.torihiko.jp/original.html 日本キジ・ヤマドリ養殖センター]</ref>であるが、放鳥後の寿命は10日程度と短かいと報告されている<ref>川路則友 , 山口恭弘、矢野幸弘 , 栃木県において野外個体群の回復のために放鳥されたヤマドリの運命 , 山階鳥類研究所研究報告 , 34 , 1 , 80-88p , 山階鳥類研究所 , 2002 , https://doi.org/10.3312/jyio1952.34.80 , 10.3312/jyio1952.34.80</ref>、主な消耗原因として「天敵食害」<ref>{{Cite journal|和書 |
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2022年3月29日 (火) 17:07時点における版
ヤマドリ(山鳥[1]、Syrmaticus soemmerringii)は、鳥類|鳥綱キジ目キジ科ヤマドリ属に分類される鳥類。日本の固有種。名前は有名だが、野外で出会うのは少し困難な鳥でもある[2]。
形態
全長はオスで約125 cm [3]、翼長20.5 - 23.5 cm [4]。メスは約55 cm [1][5][4]、翼長19.2 - 22 cm [4]。体重はオス0.9 - 1.7 kg 、メスで0.7 - 1 kg [4]。尾はオスのほうがかなり長く、尾長はオスが41.5 - 95.2 cm、メスが16.4-20.5 cm[6]。尾羽の数は18 - 20枚[4]。オスの羽色は極彩色のキジと異なり、金属光沢のある赤褐色を呈す。およそ頭部の色が濃く胴体から脚にかけて薄くなる傾向があるが、その程度は亜種により様々である。よく目立つ鱗状の斑がある。目立つ冠羽はないが、興奮すると頭頂の羽毛が逆立ち冠状に見えることもある。顔面にキジ同様赤い皮膚の裸出部がある。尾は相対的にキジよりも長く、黒、白、褐色の鮮やかな模様がある。脚には蹴爪を持つ。メスの羽色は褐色でキジのメスに似るが、キジのメスより相対的に尾が短い(要出典, 2012年7月)。
生態
和名の「ヤマドリ」は山地に生息することに由来する[1]。主に標高1,500メートル以下の山地にある森林や藪地に生息し、渓流の周辺にあるスギやヒノキからなる針葉樹林や下生えがシダ植物で繁茂した環境を好む[5]。冬季には群れを形成する[5][3]。
食性は植物食傾向の強い雑食で[7]、植物の葉、花、果実、種子、昆虫、クモ、甲殻類、陸棲の巻貝、ミミズなどを食べる[5][3][4]。
オスは鳴くことはまれだが、繁殖期になるとオスは翼を激しくはばたかせ、オートバイのエンジン音にも似た非常に大きな音を出す(ドラミング、ほろ打ち)ことで縄張り宣言をし、同時にメスの気を惹く [8]。 また、ドラミング(ほろ打ち)の多くは近づくものに対する威嚇であるともされる[2]。
木の根元などに窪みを掘り、木の葉や枯れ草、羽毛を敷いた直径20 cm 、深さ9 cm に達する巣に、4月から6月にかけて6 - 12個の卵を産む[5][4]。卵は長径4.8 cm (4.4 - 5.15 cm[6]) 、短径3.5 cm (3.3 - 3.65 cm[6]) で、殻は淡黄褐色[4]。メスのみが抱卵し、抱卵期間は24 - 25日[3]。
婚姻形態は一夫多妻であると推定されていたが、実際は一夫一妻であることが三重県津市の獣医師によって突き止められた[9]。
日本の固有種であり、本州、四国、九州に生息する[1][5][3][4]。生息する地域によって羽の色が若干異なり、5亜種に分けられている。
羽色は温度や湿度によって決定し(寒冷地の個体は羽色が薄く暖地の個体は羽色が濃くなる)、同地域でも南北で変異が生じるとする報告例もある[4]。一方で尾羽の形態や腰の白色斑は遺伝的要因が影響していると考えられている[4]。なお、これらの亜種の分布域は明瞭でないため、検討が必要とされている[10]。
交雑
野生状態でキジとの交雑が生じる[11]が、交雑個体に対し科学的な分析を行った文献記録は少なく[12]繁殖力の有無等は明かでは無い。
人間との関係
種小名 soemmerringii は、ドイツの解剖学者、ゼンメリング (Samuel Thomas von Sömmerring) への献名である[1]。
ヤマドリは雌雄が峰を隔てて寝るという伝承があり、古典文学では「ひとり寝」の例えとして用いられた[13]。またオスのヤマドリは尾羽が長い事から、「山鳥の尾」は古くは長いものを表す語として用いられており[1]、百人一首には柿本人麻呂の作として「あしびきの山鳥の尾のしだり尾のながながし夜をひとりかも寝む」が取られている。この歌では「山鳥の尾のしだり尾の」までが「ながながし」を導く序詞である。
ヤマドリに関する俗信としては、年老いて尾が十三節になったヤマドリは人を騙したり、また夜に人魂のように光るなどの言い伝えがあり[14][15]、長野県に伝わる「八面大王」という鬼を坂上田村麻呂が退治する物語では、「三十三節あるヤマドリの尾羽で矧いだ矢で無ければ鬼を退治出来ない」という描写がある[16]。
日本では、群馬県と秋田県がヤマドリを県の鳥としている。
狩猟と保護
キジと共に狩猟対象とされている。日本では鳥獣保護法における狩猟鳥獣であるが、環境省令により2022年(令和4年)9月14日までメスヤマドリの捕獲が禁止されている[17]。
人工授精[18]による養殖技術が確立され[19]、野生個体の増加を目論んだ幼鳥や成鳥の放鳥が各地の民間団体や[19]自治体[20]により行われている[21]。放鳥に用いるのは人工授精により養殖育成した個体[22]であるが、放鳥後の寿命は10日程度と短かいと報告されている[23]、主な消耗原因として「天敵食害」[24]「衰弱死」「溺死」「射殺(狩猟)」「交通事故」があげられている[21]。