== ウェヌスの試練 ==
一方ウェヌスは息子の醜聞に激怒し、ウェヌス自らの接吻を与えるという懸賞までかけてプシューケーを捕らえようとした。恐れたプシューケーは一方[[ウェヌス]]は息子の醜聞に激怒し、[[ウェヌス]]自らの接吻を与えるという懸賞までかけてプシューケーを捕らえようとした。恐れたプシューケーは[[ケレース]]に庇護を求めるが、[[ケレース]]に庇護を求めるが、ケレースは「ウェヌスとのつきあいがある」との理由で拒否した。そこで今度はは「ウェヌスとのつきあいがある」との理由で拒否した。そこで今度は[[ユーノー]]に庇護を求めるが、[[ユーノー]]に庇護を求めるが、ユーノーは「逃亡した奴婢をかくまってはならないことになっている」と法律を理由に拒否した。は「逃亡した奴婢をかくまってはならないことになっている」と法律を理由に拒否した。
かくて、愛を追いながらも世間のしがらみに行き場所をなくしたプシューケーは、観念してウェヌスのもとに出頭した。ウェヌスはプシューケーを捕らえて折檻し、次々と無理難題を押し付けた。しかし、大量の穀物の選別を命じられた際はどこからともなく蟻がやってきて手助けしてくれたり、凶暴な金の羊の毛を取ってくるよう命じられた際には河辺の葦が羊毛の取り方を助言してくれて、竜の棲む泉から水を汲むよう命じられた際はクピードーに可愛がられていたかくて、愛を追いながらも世間のしがらみに行き場所をなくしたプシューケーは、観念して[[ウェヌス]]のもとに出頭した。[[ウェヌス]]はプシューケーを捕らえて折檻し、次々と無理難題を押し付けた。しかし、大量の穀物の選別を命じられた際はどこからともなく蟻がやってきて手助けしてくれたり、凶暴な金の羊の毛を取ってくるよう命じられた際には河辺の[[ヨシ|葦]]が羊毛の取り方を助言してくれて、竜の棲む泉から水を汲むよう命じられた際は[[クピードー]]に可愛がられていた[[ユーピテル]]の大鷲が水を汲んで来てくれるなど、不思議な助けを受けてウェヌスの難題を乗り越えるの大鷲が水を汲んで来てくれるなど、不思議な助けを受けて[[ウェヌス]]の難題を乗り越える<ref>「難題嫁」の展開である。「[[動物番]]」的に動物達が助けてくれる。いわゆる「'''蜂の援助型'''」である。</ref>。
業を煮やしたウェヌスは息子クピードーの火傷の介抱で衰えた美貌を補うために冥府の女王業を煮やした[[ウェヌス]]は息子[[クピードー]]の火傷の介抱で衰えた美貌を補うために冥府の女王[[プロセルピナ]]に美をわけてもらってくるよう命ずる。首尾よく美をわけてもらったプシューケーだが、自分の容色も衰えクピードーの愛も失うのではと不安になり、箱を開けないよう警告されていたにもかかわらず開けてしまう。しかし、中には冥府の眠りが入っていた。に美をわけてもらってくるよう命ずる。首尾よく美をわけてもらったプシューケーだが、自分の容色も衰え[[クピードー]]の愛も失うのではと不安になり、箱を開けないよう警告されていたにもかかわらず開けてしまう。しかし、中には冥府の眠りが入っていた<ref group="私注">これはプシューケーの死を意味する。</ref>。
傷の癒えたクピードーは昏倒している妻から冥府の眠りを取り去って箱に集め、ユーピテルにとりなしを頼む。ユーピテルはクピードーが良い女を見つけたら紹介することを条件にとりなしを了承する。ユーピテルはプシューケーに神の酒傷の癒えた[[クピードー]]は昏倒している妻から冥府の眠りを取り去って箱に集め、[[ユーピテル]]にとりなしを頼む。[[ユーピテル]]は[[クピードー]]が良い女を見つけたら紹介することを条件にとりなしを了承する。[[ユーピテル]]はプシューケーに神の酒[[ネクター|ネクタール]]を飲ませ神々の仲間入りをさせた。プシューケーはもう人間でないのだから身分違いの結婚ではないと説明され、ウェヌスもやっと納得した。かくて魂は愛を手に入れ、二人の間にはウォルプタース(「喜び」、「悦楽」の意)という名の子が生まれた。女神となったプシューケーが絵画に描かれるときには、蝶の翅を背中に生やした姿をとる例が多々見られる。を飲ませ神々の仲間入りをさせた<ref>[[ネクタール]]とはいわゆる「[[不老不死の薬]]」である。ローマ神話では神々の長である[[ユーピテル]]が自由に利用できるもののようである。</ref>。[[プシューケー]]はもう人間でないのだから身分違いの結婚ではないと説明され、[[ウェヌス]]もやっと納得した。かくて魂は愛を手に入れ、二人の間にはウォルプタース(「喜び」、「悦楽」の意)という名の子が生まれた。女神となったプシューケーが絵画に描かれるときには、'''蝶'''の翅を背中に生やした姿をとる例が多々見られる<ref>この物語ではプシューケーの死と再生は蝶の幼虫と羽化になぞらえられていることが分かる。</ref>。
== 私的解説 ==
* 女主人公の方が主人公よりも下位の身分である点
* 何らかの難題に女主人公が挑まなければならない点
* 物語中に何らかの「[[禁忌]]」が含まれ、女主人公がそれを破ってしまう点」が含まれ、女主人公がそれを破って罰を受けるという点
等が特徴の物語群である。女主人公には「[[人身御供]]」としての性質が暗喩される。本物語でもプシューケーは[[プロセルピナ]]によって死ぬ。プシューケーの名前がそもそも「霊魂」を意味するので、須佐之男のためにによって死ぬ。しかし、夫の[[櫛クピードー]]に変身したによって再生される。[[櫛名田比売クピードー]]と同様、プシューケーは魂だけの存在といえる。上位の神の妻になったからこそ、プシューケーの神霊としての格が上がった、という思想が垣間見えるように思う。(ただし、の再生の能力は、[[櫛ユーピテル]]には霊的に攻撃性のあるアイテムとされているので、プシューケーよりはから[[櫛名田比売ネクタール]]の方が独立性の高い女神としての性質は残している。)を授かって得た限定的なもの、というようになっている。[[ネクタール]]は東洋で述べるところのいわゆる「[[不老不死の薬]]」と思われる。東洋では[[西王母]]の持ち物とされるが、西洋では最高神である雷神の持ち物とされているところが興味深い。 物語の前半部分でプシュケーは夫を「何か見えない者」から「見える者」へと変化させる。そのため、本物語は[[炎帝神農|炎帝]]を再生させるタイプの「[[炎帝神農|炎帝]]型」の「[[美女と野獣]]」譚と考える。 夫の[[クピードー]]はアモール(Amor)とも呼ばれる。一方、ヒッタイト神話では月の神のことをアルマ(Arma)と呼ぶ。おそらく、「何か見えない者」から「見える者」へと変化させる女神とは、「月」の満ち欠けあるいは月食を支配する女神、という意味があったのではないだろうか。ヒッタイト神話では「転落した月の神」を天に戻す女神はカムルシュエパ(Kamrušepa)と呼ばれた雲の女神であった。プシュケーも本来は、雲の発生に関係する[[西王母型女神|西王母型]]の天候神だった可能性がある。 プシュケーが蝶の姿を取る点は、蝶が「不老不死の神力を持つ」という日本神話の[[常世神]]を思わせる。[[ネクタール]]は本来、「再生の力を持つ」とされたプシューケーの持ち物ではなかったのだろうか。物語の後半は、プシュケーの受ける罰と死の物語となるが、彼女を蝶になぞらえることで強引に生き返らせることにした話といえる。[[人身御供]]の正当化といえよう。男性の神が「再生の力を持つ」とされた点は比較的時代の新しい後付けの話ではないだろうか。
== 類話 ==
=== ロマンス神話 ===
* [[美女と野獣]](炎帝型)
=== 日本神話 ===
* [[天稚彦草子]](炎帝型)
== 関連項目 ==
* [[櫛名田比売ネペレー]]:ギリシア神話の雲の女神。* [[下光比売命]]* [[天若日子]](キリスト型)* [[美女と野獣]](炎帝型)* [[天稚彦草子]](炎帝型)* [[常世神]]:日本神話で不老不死や富貴をもたらすとされた民間信仰の神。アゲハチョウの幼虫とされた。* [[禁忌]]
== 参考文献 ==
** 『黄金のろば 下巻』アプレイウス作、呉茂一・国原吉之助訳、岩波文庫、1957年、ISBN 978-4003211823
** 『黄金の驢馬』アープレーイユス作、呉茂一・国原吉之助訳、岩波文庫、2013年、ISBN 978-4003570012
== 関連項目 ==
* [[美女と野獣]]
* [[天稚彦草子]]
* [[禁忌]]
== 私的注釈 ==
[[Category:クピードーとプシューケー|*]]
[[Category:受罰女神]]
[[Category:蝶信仰]]