[[ファイル:Migraciones_austronesias.png|thumb|500px|オーストロネシア語族の拡散。台湾からフィリピンへ、インドネシアへ、太平洋へと拡散した。]]
'''オーストロネシア語族'''(オーストロネシアごぞく)は、台湾から東南アジア島嶼部、太平洋の島々、マダガスカルに広がる語族である。'''アウストロネシア語族'''とも。日本語では'''南島語族'''とも訳される。
== 分類 ==
言語学的な分類は言語学者によって諸説あるが、ここでは有力な分類<ref>Merritt Ruhlen, A Guide to the World Languages, Vol. 1, Stanford University Press</ref><ref>[http://language.psy.auckland.ac.nz/austronesian/ Austronesian Basic Vocabulary Database] - based on the study : Greenhill, S.J., Blust. R, & Gray, R.D. (2008). [http://language.psy.auckland.ac.nz/publications/index.php?pub=Greenhill_et_al2008 The Austronesian Basic Vocabulary Database: From Bioinformatics to Lexomics.] Evolutionary Bioinformatics, 4:271-283
</ref>を紹介する。なお、どの分類でもオーストロネシア語族はまず[湾諸語と[レー・ポリネシア語派の2つに分けて考えられる。ただし最新の系統解析では台湾諸語は側系統群である。を紹介する。なお、どの分類でもオーストロネシア語族はまず台湾諸語とマレー・ポリネシア語派の2つに分けて考えられる。ただし最新の系統解析では台湾諸語は側系統群である。
== 拡散史の語彙統計学の研究 ==
オークランド大学の R. D. Gray らのグループは[[語彙統計学]]の方法を用い、オーストロネシア語族の400言語の系統関係を推定し[[サイエンス]]誌に発表したらのグループは語彙統計学の方法を用い、オーストロネシア語族の400言語の系統関係を推定しサイエンス誌に発表した<ref>R. D. Gray et al. Language Phylogenies Reveal Expansion Pulses and Pauses in Pacific Settlement. Science 23 January 2009:Vol. 323. no. 5913, pp. 479 - 483[http://www.sciencemag.org/cgi/content/abstract/323/5913/479]</ref>。それによると、言語学的に推測されていた<台湾→フィリピン→インドネシア付近→メラネシア→ポリネシア>という分岐経路を支持する結果が得られた。また考古学の成果などに基づいて分岐年代を見積もったところ、。それによると、言語学的に推測されていた<'''台湾→フィリピン→インドネシア付近→メラネシア→ポリネシア'''>という分岐経路を支持する結果が得られた。また考古学の成果などに基づいて分岐年代を見積もったところ、
*オーストロネシア祖語は台湾に存在した。約5200年前に一部が台湾を後にして南方に向かった。台湾に残ったグループは台湾諸語となった
*フィリピンでの分岐前の段階(4千年ほど前)で数百年間の分岐停滞があった
*その後フィリピン、インドネシアからマダガスカルや西ポリネシアに至る様々な言語が次々に分岐した
*東ポリネシアでの分岐前の段階(2千年ほど前)でまた数百年間の分岐停滞があった
と推定された。2回の停滞期は広い海洋(台湾→フィリピン、西ポリネシア→東ポリネシア)を渡って移住するために技術([[アウトリガーカヌー]]・[[ダブルカヌー]]や航海術)および社会の面で変革が必要であったことを示唆する。さらに同誌同号にはこの地域の人々の持つ[[ピロリ菌]](家族など親密な人の間でのみ伝染するとされる)の遺伝学的比較も発表されたと推定された。2回の停滞期は広い海洋(台湾→フィリピン、西ポリネシア→東ポリネシア)を渡って移住するために技術(アウトリガーカヌー・ダブルカヌーや航海術)および社会の面で変革が必要であったことを示唆する。さらに同誌同号にはこの地域の人々の持つピロリ菌(家族など親密な人の間でのみ伝染するとされる)の遺伝学的比較も発表された<ref>Y. Moodley et al. The Peopling of the Pacific from a Bacterial Perspective. Science 23 January 2009:
Vol. 323. no. 5913, pp. 527 - 530[http://www.sciencemag.org/cgi/content/abstract/323/5913/527]</ref>。これは上の推定とよく一致し、実際にそのような人間の移住があった傍証と見られる。
==話者の遺伝子==
オーストロネシア語族に関連する遺伝子として、[[Y染色体ハプログループ]][[ハプログループO1a (Y染色体)|O1a]]があげられる。O1a系統は[[台湾先住民]]に66'''Y染色体ハプログループO1a'''があげられる。O1a系統は台湾先住民に66.3%<ref>Cristian Capelli et al 2001, A Predominantly Indigenous Paternal Heritage for the Austronesian-Speaking Peoples of Insular Southeast Asia and Oceania</ref>-89.6%<ref name="#1">Karafet, T. M.; Hallmark, B.; Cox, M. P.; Sudoyo, H.; Downey, S.; Lansing, J. S.; Hammer, M. F. (2010). "Major East-West Division Underlies Y Chromosome Stratification across Indonesia". Molecular Biology and Evolution 27 (8): 1833–44. doi:10.1093/molbev/msq063. PMID 20207712.</ref>、[[ニアス島]]で100、ニアス島で100%<ref name="#1"/>など、[[東南アジア]]の半島、島嶼部、オセアニアにも高頻度であり、オーストロネシア語族との関連が想定されるなど、東南アジアの半島、島嶼部、オセアニアにも高頻度であり、オーストロネシア語族との関連が想定される<ref>崎谷満『DNA・考古・言語の学際研究が示す新・日本列島史』(勉誠出版 2009年) </ref>。また[[ハプログループO-M122 (Y染色体)|O2a2'''ハプログループO2a2*系統(xO2a2b-M7, O2a2c1-M134) ]]もオーストロネシア語族と関連しており、[[スマトラ島]]のトバ人に55'''もオーストロネシア語族と関連しており、スマトラ島のトバ人に55.3%, [[トンガ]]に41トンガに41.7%, [[フィリピン]]に25フィリピンに25.0%観察される<ref name="#1"/>。
[[mtDNAハプログループ]]は[[ハプログループB (mtDNA)|ハプログループB4a1a]]([[台湾]]から[[ポリネシア]]まで広域)、[[ハプログループE (mtDNA)|ハプログループE]]([[島嶼部東南アジア]]が中心)が関連している。mtDNAハプログループはハプログループB4a1a(台湾からポリネシアまで広域)、ハプログループE(島嶼部東南アジアが中心)が関連している。
==日本語との関連==
[[日本語]]の文法は[[朝鮮語]]との類似性が高いが、母音の強い音韻体系はオーストロネシア語族との類似性が高い。また語を重ねる複数形の表現方法や一部の単語に関してオーストロネシア起源も指摘されている。日本語のこのような特徴は[[シベリア]]から南下した言語集団と南方系の言語集団が[[縄文時代]]に[[日本列島]]で出会い、混交したからであるとする説が唱えられている。日本語の文法は朝鮮語との類似性が高いが、母音の強い音韻体系はオーストロネシア語族との類似性が高い。また語を重ねる複数形の表現方法や一部の単語に関してオーストロネシア起源も指摘されている。日本語のこのような特徴はシベリアから南下した言語集団と南方系の言語集団が縄文時代に日本列島で出会い、混交したからであるとする説が唱えられている。 分子人類学的知見からも、一部がオーストロネシア語族と関連するミトコンドリアDNAハプログループB4が日本に9.1%観察され<ref name="Discover Japan 201208 p.30"> 『Discover Japan』(2012年8月号)30頁</ref>、Y染色体ハプログループO1a系統が3.4%、O2a2*系統(xO2a2b-M7, O2a2c1-M134) が4.2%観察されており<ref>Nonaka, I.; Minaguchi, K.; Takezaki, N. (2007). "Y-chromosomal Binary Haplogroups in the Japanese Population and their Relationship to 16 Y-STR Polymorphisms". Annals of Human Genetics 71 (4): 480–95.</ref>、オーストロネシア語族を話す集団が日本にやってきたことが考えられる。 説話の類型などから、南九州の隼人がオーストロネシア語系民族であるとの説もある<ref>次田真幸 『古事記 (上) 全訳注』 講談社学術文庫 38刷2001年(初版 1977年) ISBN 4-06-158207-0 p.192、コノハナサクヤヒメ伝説がバナナ型神話の類型とし、これが大和の『古事記』に導入された。参考・松村武雄『日本神話の研究』第二巻、大林太良『日本神話の起源』。</ref><ref>角林 文雄「隼人 : オーストロネシア系の古代日本部族」京都産業大学日本文化研究所紀要 3, *15-31, 1998-03</ref>。
分子人類学的知見からも、一部がオーストロネシア語族と関連する[[ハプログループB (mtDNA)|ミトコンドリアDNAハプログループB4]]が日本に9.1%観察され<ref name="Discover Japan 201208 p.30"> 『Discover Japan』(2012年8月号)30頁</ref>、[[ハプログループO1a (Y染色体)|Y染色体ハプログループO1a系統]]が3.4%、= 私的考察 ==オーストロネシア語族は中国本土から分岐した時期が分かっているので、民俗学的には6000年前の古代中国の文化を推定するのに役立つ文化の持ち主達であると考える。特に'''生贄'''の文化については台湾に首狩りの習慣が存在したし、インドネシアに[[ハプログループO-M122 (Y染色体)|O2a2*系統(xO2a2b-M7, O2a2c1-M134) ハイヌウェレ型神話]]が4.2%観察されており<ref>Nonaka, I.; Minaguchi, K.; Takezaki, N. (2007). "Y-chromosomal Binary Haplogroups in the Japanese Population and their Relationship to 16 Y-STR Polymorphisms". Annals of Human Genetics 71 (4): 480–95.</ref>、オーストロネシア語族を話す集団が日本にやってきたことが考えられる。が存在するので、古代中国でそのような文化がどのように存在し、展開して行ったのかを推察可能であると考える。
説話の類型などから、南九州の== 参考文献 ==* Wikipedia:[[隼人]]がオーストロネシア語系民族であるとの説もある<ref>次田真幸 『古事記 (上) 全訳注』 講談社学術文庫 38刷2001年(初版 1977年) ISBN 4-06-158207-0 phttps://ja.wikipedia.192、[[コノハナサクヤヒメ]]伝説が[[バナナ型神話org/wiki/%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%AD%E3%83%8D%E3%82%B7%E3%82%A2%E8%AA%9E%E6%97%8F オーストロネシア語族]]の類型とし、これが大和の『古事記』に導入された。参考・松村武雄『日本神話の研究』第二巻、大林太良『日本神話の起源』。</ref><ref>角林 文雄「隼人 : オーストロネシア系の古代日本部族」京都産業大学日本文化研究所紀要 3, *15(最終閲覧日:22-31, 199808-03</ref>。21)
== 関連項目 ==
*[[ハイヌウェレ型神話]]
==外部リンク==
* [http://language.psy.auckland.ac.nz/austronesian/research.php Austronesian Basic Vocabulary Database: Our Research] {{en icon}} - 上記 Gray らの研究成果が詳細な図表つきで紹介されている。400言語の語彙データベースも。* [http://glottolog.org/resource/languoid/id/aust1307 Glottolog - Austronesian] {{en icon}}([[マックス・プランク進化人類学研究所]]によるデーターベース)(マックス・プランク進化人類学研究所によるデーターベース)* [http://www.gbarto.com/languages/austronesian.html Austronesian vocaburary] {{en icon}}* [http://www.r.minpaku.ac.jp/ritsuko/japanese/essays/languages/austronesian.html オーストロネシア語族の広がり]([[国立民族学博物館]]准教授のエッセイ)(国立民族学博物館准教授のエッセイ)
== 参照 ==