「ダロン」の版間の差分

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== 私的解説 ==
 
== 私的解説 ==
ダロンは元々、洪水神話に「後付」された神と考える。たとえば、インドネシア、ヴェマーレ族の洪水神話は、「父親が起こした大洪水を娘が母親の形見のふんどしを身につけて生き残った。」という内容で、息子は登場しない。そして、娘が両親、特に母親の「跡継ぎ」であることが示唆されている。
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ダロンは元々、洪水神話に「夫」として「後付」された神と考える。たとえば、インドネシア、ヴェマーレ族の洪水神話は、「父親が起こした大洪水を娘が母親の形見のふんどしを身につけて生き残った。」という内容で、息子は登場しない。そして、娘が両親、特に母親の「跡継ぎ」であることが示唆されている。残された娘は「姉妹」として二人で語られることがあり、おそらくダロンの原型は洪水で生き残った姉妹の「'''妹'''」の方だと考える。日本神話では京都府丹後地方の女神[[蛇頭松姫大神]]の妹の「おしも」がこれに相当する。
  
ダロンの起源は、紀元前6000年頃に遡る'''[[城背渓文化]]'''のあたりと考える。出土した「太陽神石刻」に刻まれた人物像はダロンと考える([[城背渓文化]]も参照の事)。この像に見える「尾」のようなものは神話的に、主に3つに分けられると考える。
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ダロンに類する名は広く女神に見られ、台湾原住民の女神テヤマサン、インド・ケルトのダヌ女神、ギリシア神話のアテーナー、アルテミス、日本の[[手児奈]]など。
* ウナギ:インドネシア、ヴェマーレ族の神話に、大洪水は「ウナギ」が起こした、とある。
 
* 蛇:'''[[伏羲]]'''には蛇の尾がついている。大洪水を生き残った神である。
 
* 男根:台湾の伝承には巨大な男根を持つ巨人が出てくる。大洪水に関連している巨人である。
 
いずれも「大洪水」の神話に関する存在なので、元は一つの「同じもの」であろう。この「尾」が現代の中国神話の「'''伏羲の蛇の尾'''」となっていると考える。頭上に太陽を頂き、周囲に星々が散りばめられている構図は、神話に見られる伏羲・女媧図に非常に似ているのではないだろうか。「太陽神石刻」は「天の太陽(バイ)と地のダロ(後の伏羲)の図」と考える。バイ(白)は後のミャオ族神話のバロンである。いったんバロンに変化してから、彼女は女媧に変化したと思われる。
 
  
ダロンが後付で登場するようになった理由は、[[バロン]]ではなく男子の[[ダロン]]が「親の跡継ぎである」という口実を作るためだったのではないだろうか。母系社会では男子に相続権がないので、父系への移行期に付け加えたものと考える。
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ダロンが男性化された理由は、[[バロン]]ではなく男子の[[ダロン]]が「親の跡継ぎである」という口実を作るためだったのではないだろうか。母系社会では男子に相続権がないので、父系への移行期に付け加えたものと考える。この男性化したダロンが、更に時代が下ると[[チャンヤン]]になるのではないだろうか。[[チャンヤン]]は名前はダロンから引き継いだが、祭祀で兄弟の牛を殺すなど、人身御供を思わせる祭祀を開始させており、雷神と対立する。その「同族食い」ともいえる性質は[[アペ・コペン]]を引き継いだと考える。
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そして、プユマ族の伝承を見るに、元々'''[[伏羲]]とは別の存在'''とされていたことが分かる。
  
 
== 関連項目 ==
 
== 関連項目 ==
* '''[[城背渓文化]]''':ダロンの原型が発生した時期
 
 
* [[伏羲]]:中国神話の文化英雄。
 
* [[伏羲]]:中国神話の文化英雄。
 
* [[チャンヤン]]:ミャオ族の文化英雄。
 
* [[チャンヤン]]:ミャオ族の文化英雄。

2026年3月7日 (土) 10:02時点における版

ミャオ族の伏羲女媧神話に登場する男神。話の筋道からいえば、中国神話の伏羲に相当する。湘西のミャオ族にあつく信仰されてきた[1]。妻であり、妹であるバロンがいる。父の名はアペ・コペンという。ダロンは雷神を助けて神にかわいがられる。文化英雄的なダロンは、太昊型神のうち、文化英雄型である。ただし、元は「女神」だったと考えられ、女神の名前を男神に変更させた名前憑依型の神でもあると考える。

台湾原住民・カタティプル社の創世

太古、ルボアン、あるいはアラワヤンというところに巨石が一つあり、中から女が生まれた。(陰部のない女だった。)女の踵からラヘリンという女が生まれ、バサカラという男が通っているうちに、大洪水があった。生き残った二人は夫婦となりルビルビルタタという二人の娘が生まれた。ルビルビルにはどこからともなく通っていたシハシハウが夫となった。昔は兄妹で婚姻したものなので、シハシハウはルビルビルの兄だったのだろう。彼らが部族の先祖となった[2]

私的解説

ルボアン、ルビルビルの両方がミャオ族神話のバロンに相当すると考える。アラワヤンはアぺ・コペンではないだろうか。バサカラ、シハシハウは中国神話の伏羲に相当すると考えられる。「男が通う」という表現から、プユマ族は古くは母系の部族だったと考えられ、洪水神話で生き残るのも「娘だけ」だったのではないだろうか。母女神の踵から娘が生まれた、とされるのは、「父親が誰であるかは意に止めない」母系の文化の表現とも考えられる。母系の「洪水神話」に「夫」としての伏羲に類する神を挿入したものが、後の中国神話に発展したのではないだろうか。

一方、二人の娘のうちタタを男性形のダロンに変化させて「夫婦」としたものがミャオ族神話と考える。

ミャオ族伝承

私的解説

ダロンは元々、洪水神話に「夫」として「後付」された神と考える。たとえば、インドネシア、ヴェマーレ族の洪水神話は、「父親が起こした大洪水を娘が母親の形見のふんどしを身につけて生き残った。」という内容で、息子は登場しない。そして、娘が両親、特に母親の「跡継ぎ」であることが示唆されている。残された娘は「姉妹」として二人で語られることがあり、おそらくダロンの原型は洪水で生き残った姉妹の「」の方だと考える。日本神話では京都府丹後地方の女神蛇頭松姫大神の妹の「おしも」がこれに相当する。

ダロンに類する名は広く女神に見られ、台湾原住民の女神テヤマサン、インド・ケルトのダヌ女神、ギリシア神話のアテーナー、アルテミス、日本の手児奈など。

ダロンが男性化された理由は、バロンではなく男子のダロンが「親の跡継ぎである」という口実を作るためだったのではないだろうか。母系社会では男子に相続権がないので、父系への移行期に付け加えたものと考える。この男性化したダロンが、更に時代が下るとチャンヤンになるのではないだろうか。チャンヤンは名前はダロンから引き継いだが、祭祀で兄弟の牛を殺すなど、人身御供を思わせる祭祀を開始させており、雷神と対立する。その「同族食い」ともいえる性質はアペ・コペンを引き継いだと考える。

そして、プユマ族の伝承を見るに、元々伏羲とは別の存在とされていたことが分かる。

関連項目

脚注

  1. 村松一弥訳『苗族民話集』平凡社、1974年、3-15頁
  2. プユマ族、カタティプル社、神々の物語、台湾原住民文学選5、神村徹編、草風館、2006年8月1日出版、p76-78