[[File:RainbowSerpent.jpg|thumb|300px|オーストラリア・[[アボリジニ]]のアート『虹蛇』]]
'''虹蛇'''(にじへび<ref>{{Cite web|和書|url=http://htq2.minpaku.ac.jp/infolib/meta_pub/G0000028mocat_H0085718 |title=樹皮画(虹蛇)ジュヒガ(ニジヘビ) |work=InfoLib 標本資料目録データベース |publisher=[[国立民族学博物館]] |date=2011-07-06 |accessdate=2016-12-27 }}</ref>、{{lang-en-short|Rainbow Serpent}}、{{lang-en-short|Rainbow Snake}}、{{lang-en-short|Rainbow Monster}}<ref name="ローズ2004p306">[[#ローズ,松村訳 2004|ローズ,松村訳 2004]], p. 306.</ref>)は、天候現象の[[虹]]に関連し、[[創造]]と[[雨]]を降らせる力があるとされる、[[神話]]・[[伝説]]上の巨大な[[ヘビ|蛇]]である。'''虹の蛇'''(にじのへび)とも<ref name="ローズ2004p306" />。
== 概説 ==
虹蛇の神話・伝説は、世界各地、主に[[オーストラリア]]、[[北アメリカ]]、[[西アフリカ]]で知られている。オーストラリアでは後述のように様々な呼び名を持ち広く知られている<ref name="Trails">{{cite web|last=Kickett|first=Everett|title=The Trails of the Rainbow Serpents|url=http://www.youtube.com/watch?v=qxPFx4z3184&list=UUtwQUNGy7Ko4UnmL231GAxw&index=9|publisher=Daniel Habedank|accessdate=3 May 2013|year=1994}}</ref>(参照: [[#オーストラリア]])。真水に関連づけられ、池や湖などに住むとされている<ref name="ローズ2004p306" />。
=== オーストラリア ===
オーストラリア北部に伝わる伝説では、虹の蛇がその体内に隠匿しているあまたの動植物を手に入れるため、人間の[[シャーマニズム|シャーマン]]たちがこの蛇を殺し、地上に動植物を解放したという<ref name="ローズ2004p306" />。また、[[アボリジニ]]たちは虹の蛇を、西北部から[[ノーザンテリトリー]]にかけては[[エインガナ]](Eingana)<ref name= Eingana>{{Cite book|和書|author=Anneliese Löffler|translator=小沢俊夫|title=世界の民話36 オーストラリア|publisher=[[小学館]]|series=世界の民話|date=1986-04|page=46−49|isbn=4-324-00065-4}}</ref>、{{仮リンク|ガレル (神話)|label=ガレル|en|Galeru}}(Galeru){{Refnest|group="注"|キンバリー地区に伝わる<ref>ローズ,松村訳 2004, p. 121.</ref>。}}、ウングル(Ungur)、ウォヌングル(Wonungur)、ウォロンビ(Worombi)、Wonambi、{{仮リンク|ウォルンクァ|en|Wollunqua}}(Wollunqua){{Refnest|group="注"|ノーザンテリトリーに暮らす{{仮リンク|ワラマンガ|en|Warumungu}}(Warramunga)の伝承に登場し、ワルンクァイン(Wallunquain)とも呼ばれる<ref>ローズ,松村訳 2004, p. 65.</ref>。}}、[[ユルルングル]](Yurlunggur)、Julunggul{{enlink|Julunggul|a=on}}、ランガル(Langal)、ムイト(Muit)、[[クイーンズランド州]]においてはイェロ(Yero)、タイパン(Taipan){{Refnest|group=注|クイーンズランド州北部に暮らす{{仮リンク|ウィク・ムンカン|en|Wik-Mungkan people}}(Wik-Mun(g)kan)の[[ウィク・ムンカン語|言語]]で虹の蛇も表す [[wikt:thaypan|thaypan]]<ref>Kilham ''et al.'' 2011.</ref>(あるいは tay-pan)は英語に借用され、[[タイパン属]](''Oxyuranus'')のヘビ、特に [[タイパン|''O. scutellatus'']] を指す語とされた<ref>小学館ランダムハウス英和大辞典 第2版 編集委員会 1994, p. 2759.</ref>。}}、南東部においてはミンディ(Mindi)、カーリア(Karia)というようにさまざまな名前で呼んでいた<ref>Poignant 1967, p. [https://books.google.co.jp/books?id=xldLjV62hkYC&q=Karia+Muit&dq=Karia+Muit&hl=ja&sa=X&ved=0ahUKEwjcj-f8jfHZAhVCebwKHdM3DCQ4ChDoAQg6MAM 124].</ref>。アボリジニに伝わる「{{仮リンク|ドリームタイム|label=夢の時|en|Dreamtime}}」の伝説では、虹の蛇が地を這った跡が水路や谷や川であり、雨季には空で輝くその姿を見ることができるという。しかし乾季には泥の中で眠っており、もし眠りを邪魔することがあれば、虹の蛇は怒って洪水を起こし村も人々も飲み込んでしまうという<ref name="ローズ2004p306" />。[[ノーザンテリトリー]]の[[カカドゥ国立公園]]の洞窟で、角を備えた虹蛇を表現した壁画が見つかっていることから、虹蛇への信仰はかなり早い時期から始まっていたと考えられている<ref name="杉山 2013p288" />。
著名なのは創世の虹蛇であるウングル、[[エインガナ]]、南部の洪水伝承を持つ[[ユルルングル]]の三柱の神。
=== 北アメリカ ===
北アメリカの[[ショショーニ族]]は、大蛇が天空に背中を擦りつけている姿が虹であると考えていた。大蛇はそのようにして夏には雨を、冬には雪を地上に降らせるとされていた<ref name="杉山 2013p288">[[#杉山 2013|杉山 2013]], p. 288.</ref>。
[[カリブ諸島]]の[[ハイチ]]で知られる虹の蛇'''アイダ'''(Ayida、{{仮リンク|アイダ・ウェド|en|Ayida-Weddo}} (Aida Wedo) とも<ref>ローズ,松村訳 2004, p. 2.</ref>)は、アフリカから伝わってきたものである<ref name="ローズ2004p306" />{{Refnest|group="注"|西アフリカの[[フォン人]]の神話には{{仮リンク|アイド・ウエド|en|Ayida-Weddo}}(Aido-Hwedo、Ayidohwedo)という、創造神マウ(・リサ)(Mawu(-Lisa))と共に世界の創造に関わった大蛇が見られる<ref>Herskovits 1967.</ref><ref>Lynch 2004, p. 5.</ref><ref>田中 2016.</ref>。}}。
=== アフリカ ===
アフリカでは創造母神マウウ({{仮リンク|マウ|en|Mawu}}; Mawu)が最初に創造したものである<ref name="ローズ2004p306" />。世界創造を手伝った後は大地を支えるために海の底でとぐろをまいていて、ときどきとぐろを解いて自分の体で空にアーチをかける。この虹のヘビは、人間や他の動物の創造に何らかの関わりを持ち、雨を降らせるという重要な役目を担ってきた。もし、雨が長く降らず干ばつが続くようなら、それは虹のヘビが眠ったまま目を覚ましていないことを意味する。そのため、ヘビを起こすために特別に騒々しい儀式(雨乞い)を行う必要がある。ただし、不用意にこのヘビを怒らせると、虹のヘビは怒りにまかせて巨大な体を空や大地に叩きつけ、あらゆる種類の災害を引き起こす。世界創造における虹のヘビの役割は、入り江や川、湖や泉を作ることだった。川が曲がりくねっているのは虹のヘビが川を作るのにその身をよじらせながら進んだためだとされている。また、泉や湖が丸いのは、虹のヘビが体を休めるためにとぐろをまいて休憩していたからである。現在では虹のヘビは、乾季の間は泉の奥に潜んでいて、雨季になると泉から姿を現して雨を降らせる役目を果たすと信じられている。空に掛かる虹のアーチは次の雨季に備えて虹のヘビがそれまで暮らしていた泉や川から、新しい棲み家へと移動していることを現している。
=== その他の地域 ===
[[漢字]]の「[[虹]]」が虫偏であるのも、[[中国]]の伝説において虹が[[蛇]]や[[竜]]の一種と見なされていたからである。また主虹である「[[wikt:虹|虹]]」を雄とし、副虹たる雌を「[[wikt:蜺|蜺]]」(ゲイ)と呼んだ<ref>小和田ら, 2000, p. 987.</ref>。
このほか、[[フィジー|フィジー諸島]]では虹の蛇[[デンゲイ]]の伝説が知られている<ref name="ローズ2004p306" />。
== 脚注 ==
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=== 注釈 ===
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=== 出典 ===
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== 参考文献 ==
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日本語:
* [[小和田顯]]、[[遠藤哲夫 (漢文学者)|遠藤哲夫]]、[[伊東倫厚]]、[[宇野茂彦]]、[[大島晃]] 編『旺文社 漢字典〔大活字版〕』2000年。ISBN 4-01-072118-9
* 小学館ランダムハウス英和大辞典 第2版 編集委員会 編『小学館ランダムハウス英和大辞典 第2版』1994年。ISBN 4-09-510101-6
* [[田中正隆]]「ダン(ダ、アイドフエド)」 [[篠田知和基]]、[[丸山顯徳]] 編『世界神話伝説大事典』勉誠出版、2016年、699-700頁。ISBN 978-4-585-20036-9
* {{Cite book |和書 |author=杉山久仁彦 |title=〈図説〉虹の文化史 |publisher=[[河出書房新社]] |date=2013-12 |isbn=978-4-309-25293-3 |ref=杉山 2013 }}
* {{Cite book |和書 |last=ローズ |first=キャロル |others=[[松村一男]]監訳 |title=世界の怪物・神獣事典 |date=2004-12 |publisher=原書房 |series=シリーズ・ファンタジー百科 |chapter=虹の蛇 |page=p. 306 |isbn=978-4-562-03850-3 |ref=ローズ,松村訳 2004 }}
英語:
* Herskovits, Melville J. (1967). [https://books.google.co.jp/books?id=dKjtAAAAMAAJ&q=&dq=&hl=ja&sa=X&ved=0ahUKEwiVpfTthvHZAhWKUbwKHVMbAkYQ6AEIPjAD ''Dahomey, an ancient West African kingdom''], vols. 2. Northwestern University Press. {{NCID|BA55125122}}
* Kilham, Christine, Mabel Pamulkan, Jennifer Pootchemunka, and Topsy Wolmby (2011). ''Wik Mungkan-English interactive dictionary''. AuSIL Interactive Dictionary Series A–6: AuSIL. http://ausil.org/Dictionary/Wik-Mungkan/lexicon/mainintro.htm. {{Accessdate|2018-03-16}}
* Lynch, Patricia Ann (2004). [https://books.google.co.jp/books?id=191KzEw_heMC&dq=Aido-Hwedo+vodun&hl=ja&source=gbs_navlinks_s ''African Mythology A to Z'']. New York: Facts On File, Inc.
* [[ロズリン・ポイニャント|Poignant, Roslyn]] (1967). ''Oceanic Mythology: The Myths of Polynesia, Micronesia, Melanesia, Australia''. London: Paul Hamlyn. {{NCID|BA10794990}}(日本語訳: 『オセアニア神話』豊田由貴夫 訳、青土社、1993年。ISBN 4791752511)
== 関連書籍 ==
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* {{Cite book |和書 |last=ページ |first=マイケル |others=教育社訳 |title=想像と幻想の不思議な世界 - エンサイクロペディア ファンタジア |publisher=[[キョーイクソフト|教育社]] |date=1989-11 |page=p. 207 |isbn=978-4-315-51008-9 |ref= }}
* {{Cite book |author= Anneliese Löffler|title= Märchen aus Australien. Traumzeitmythen und -geschichten der australischen Aborigines. |publisher= Duesseldorf Diederichs |series=Die Märchen der Weltliteratur |date= 1981|page=|isbn= 3424007056}}
* {{Cite book |和書 |author Löffler, Anneliese |translator = 小沢俊夫 | title= 世界の民話 36 オーストラリア |publisher=[[ぎょうせい]] |series=世界の民話|date= 1986-04-10|page=|isbn= 4-324-00065-4}}
== 関連項目 ==
* {{仮リンク|ウングッド|en|Ungud}}
* [[エインガナ]]
* [[ユルルングル]]
* [[デンゲイ]]
{{DEFAULTSORT:にしへひ}}
[[Category:オーストロネシア神話]]
[[Category:蛇|*]]