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、 2022年4月3日 (日) 23:59
{{Otheruses|伝説の生物}}
{{Redirect|グリフィン}}
[[画像:Griffin.png|thumb|right|グリフォン]][[画像:Hippogriff.png|thumb|right|ヒッポグリフ]]
[[File:Greif-Kurrentgasse-12-Wien.jpg|thumb]]
'''グリフォン'''({{lang-fr|griffon, gryphon}})、'''グリフィン'''({{lang-en|griffin}})、'''グライフ'''({{lang-de|Greif}})、'''グリュプス'''({{lang-la|gryps}}, {{lang-el|γρύψ}})は、[[ワシ|鷲]](あるいは[[鷹]])の翼と上半身、[[ライオン]]の下半身をもつ[[伝説の生物一覧|伝説上の生物]]。
== 概要 ==
語源は[[ギリシア語]]のグリュプス({{el|γρυψ}})、曲がった嘴の意味。古くから多くの[[物語]]に登場しており([[ヘーロドトス]]の『歴史』など)、伝説の生物としての歴史は古い。
[[イラン神話]]では、鷲獅子を意味する Shirdal という名で登場し、[[紀元前3千年紀]]初期頃の[[スーサ]]製シリンダーの封印にも見られる<ref>[http://www.granger.com/results.asp?image=0018458&screenwidth=977 Image of Persian griffin from The Granger Collection]. www.granger.com. Retrieved on 26 May 2014.</ref>。その後も、古代イラン芸術、古代ギリシャ芸術や、その後の中世の紋章など、多くの芸術でモチーフとされている。
15世紀以降の紋章学では、似たような動物として alce や keythong と呼ばれ、盾の横で仁王立ちしている segreant として描写されている。
== 形態 ==
鷲の部分は金色で、ライオンの部分は[[キリスト]]の人性を表した白であるともいう。[[カフカス|コーカサス]]山中に住み、鋭い鈎爪で牛や馬をまとめて数頭掴んで飛べたという。[[紋章学]]では、グリフォンは黄金を発見し守るという言い伝えから、「知識」を象徴する図像として用いられ、また、鳥の王・獣の王が合体しているため、「王家」の象徴としてももてはやされた。
グリフォンと雌馬の間に生まれた、鷹の上半身に[[ウマ|馬]]の下半身をもつ生物は、[[ヒッポグリフ]]({{la|hippogriff}})と呼ばれる。
多くの描写では足は鳥のような鉤爪であるが、古い絵ではライオンの前肢の物もある。紋章学では、これにラクダのような長い首と尻尾を持つものを Opinicus と呼ぶ。
== 役目 ==
グリフォンには重要な役目が2つある。
1つは、[[ゼウス]]や[[アポローン]]等の天上の神々の車を引くことであるが、ギリシア神話の女神[[ネメシス]]の車を引くグリフォンは、ほかのグリフォンと違い身体も翼も漆黒である。馬を目の敵にしており、馬を喰うと言われるが、これは同じ戦車を引く役目を持つ馬をライバル視しているためである<ref>[[山北篤]]『幻想生物 西洋編』[[新紀元社]]133頁。</ref>。そこから不可能なことを表すのに「グリフォンと馬を交配させるようなもの」という言葉が生まれたが、それをヒントに生み出されたのが前述のヒッポグリフである(このため、グリフォンが殺すのは牡馬だけであり、牝馬は殺さず犯して仔を産ませるとする伝承もある)<ref>『幻想生物 西洋編』 149頁。</ref>。
2つ目は、黄金を守る、あるいは、[[ディオニューソス]]の[[クラテール]](酒[[甕]])を守ることとされる<ref>健部伸明と怪兵隊『幻想世界の住人たち』新紀元社、235頁。</ref>。自身が守る黄金を求める人間を引き裂くといわれている<ref>『幻想生物 西洋編』134頁。</ref>。その地は北方の[[ヒュペルボレイオス|ヒュペルボレイオイ人]]の国と[[アリマスポイ人]]の地の国にあるリーパイオス({{la|Rhipaios}})山脈とされるが、[[エチオピア]]、[[インド]]の砂漠(現在では[[パキスタン]]近辺か)などの異説もある。
== 紋章学 ==
グリフォンは、様々な[[紋章]]や意匠に利用されている。
<gallery>
File:Emblem of Crimea.svg|[[クリミア共和国]]の[[クリミア共和国の国章|国章]]
File:POL województwo zachodniopomorskie COA.svg|[[ポメラニア]]と[[ポーランド]]の[[西ポモージェ県]]の紋章
File:Wappen Greifswald.svg|[[ドイツ]]の[[グライフスヴァルト]]の市章
File:POL COA Gryf.svg|ポーランドのグリフ家の紋章
</gallery>
== 後世における展開 ==
前述のように[[ヘーロドトス]]は『歴史』の中で翼のある怪物としてグリフォンに触れ、[[ガイウス・プリニウス・セクンドゥス|プリニウス]]は『[[博物誌]]』(10巻70)の中ですでに伝説の生物として語っている。[[14世紀]]には、架空の人物である[[ジョン・マンデヴィル]]によって書かれたとされる『旅行記』(東方旅行記、東方諸国旅行記)によって詳細な描写がなされた(第85章)。またヨーロッパ中世においては、動物物語集等では悪魔として表されたものの、多くはキリストの象徴とされ、[[神学者]]の[[イシドールス|セビーリャのイシドールス]]も『語源』([[:en:Etymologiae|Etymologiae]])でその立場をとる。[[ダンテ・アリギエーリ|ダンテ]]が「キリストの人性」をグリフォンの部位の色に表したと、ディドロン([[:en:Adolphe Napoleon Didron|Didron]])によって解釈されるのは『[[神曲]]』「浄化篇」第29曲での、凱旋車を曳く場面である<ref>ボルヘス『幻獣辞典』。</ref>。
中世の伝承において、Stephen Friar's New Dictionary of Heraldryによれば、爪は医療効果を持ち、羽根も失明を治すと信じられていた<ref>Friar, Stephen(1987). A New Dictionary of Heraldry. London: Alphabooks/A & C Black. p. 173. ISBN 0-906670-44-6</ref>。中世ヨーロッパの宮廷では、グリフォンの爪(実際は[[レイヨウ]]の角)やグリフォンの卵(実際はダチョウの卵)で作られたゴブレットが珍重された<ref name="bedingfeld">{{cite book
|last=Bedingfeld
|first=Henry
|authorlink=Henry Bedingfeld
|author2=Gwynn-Jones, Peter |authorlink2=Peter Gwynn-Jones
|title=Heraldry
|year=1993
|pages=80–81
|location=Wigston
|publisher=Magna Books
|isbn=1-85422-433-6}}</ref>。
現代では[[エンターテインメント]]やフィクション作品の中に見られるようになり、『[[ナルニア国物語]]』ではナルニアの兵士として登場し、『[[ハリー・ポッターシリーズ]]』では、主人公の所属する寮である[[ホグワーツ魔法魔術学校#グリフィンドール|グリフィンドール]]などの名前及び紋章に使用されている<ref>J・K・ローリング『幻の動物とその生息地』静山社、2001年、他</ref>。
== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
{{Reflist}}
== 参考文献 ==
* [[ホルヘ・ルイス・ボルヘス]]『幻獣辞典』[[晶文社]]、[[1974年]]。 - 「グリュプス」として。
== 関連項目 ==
{{Commons|Category:Griffins}}
* [[ヒッポグリフ]]
* {{ill2|チャムローシュ|en|Chamrosh}} - ペルシア神話に登場するアルボルズ山の山頂に住むという犬の体に鳥の頭と羽を持つ生き物。
* [[キマイラ]] - 同じ合成獣
* [[サーブ 39 グリペン]] - グリペン(Gripen)とは[[スウェーデン語]]でグリフォンの意。
* [[スカニア]] - 創業地[[マルメ]]の紋章に由来する王冠をかぶったグリフィンがロゴになっている
* [[ボクスホール]] - 旗を手にしたグリフィンがロゴになっている
* [[Sd.Kfz.250|Sd.Kfz.250/3]] - Sd.Kfz.250シリーズの[[半装軌車]]。[[エルヴィン・ロンメル]]ドイツ陸軍元帥は、車体に「GREIF(グライフ)」とペイントしていた。グライフ(Greif)とは[[ドイツ語]]でグリフォンの意。
* [[紀元前4世紀]] - オクサスの遺宝。
{{DEFAULTSORT:くりふおん}}
[[Category:ギリシア神話]]