=== イーピゲネイア・ギリシャ神話 ===
ミュケーナイ王アガメムノーンはトロイア戦争に出征する前に狩をし、「私の腕前には狩の女神たるアルテミスもかなわないであろう。」と口を滑らせた。アルテミスは侮辱する人間に対して、'''猟犬に八つ裂きにさせる'''、子供を皆殺しにする、疫病をはやらせるなど、残酷な手段を辞さない女神であり、トロイアに味方していたため、怒りで逆風を起こし兵団が出発できないようにしてしまった。そこで神託を問うたところ「娘を生贄にささげよ」とのことだった。アガムメノーンは苦悩の挙句、オデュッセウスの献策でアキレウスとイーピゲネイアの'''婚礼'''を挙げると言って、妻と娘を騙し、妻クリュタイムネーストラーと娘イーピゲネイアを呼びよせた。真実を知り、悲嘆に暮れ並み居る勇者たちに娘の助命を願い出るクリュタイムネーストラーに対し、イーピゲネイアは王女の務めとしてわが身を捨て国のために生贄となることを承諾する。半狂乱で身を投げ出して嘆く母と義憤から勇士たちの先頭に立って助命を叫ぶ憧れの男性アキレウスを宥め、気高い王女は婚礼の衣装を身に着けたまま祭壇で命を落とした。この後日談にあたる『タウリケーのイーピゲネイア』では、イーピゲネイアの気高い振る舞いに同情したアルテミスが怒りを和らげ、最後の瞬間彼女を救い出して、タウリケーの自分の神官にすえたとされる。 (Wikipediaより要約)
こちらのアルテミスも残酷な女神だが、後日譚としてややサテネのようなエピソードがわずかに付け加えられている。ハイヌウェレ神話と比較すれば、アガメムノーンがアメタ、アルテミスがサテネ、イーピゲネイアがハイヌウェレに相当する。イーピゲネイアは父親に殺されるのだから、天狗食日月の「'''天狗'''」が「'''父親'''」相当することが分かる。ハイヌウェレ神話には登場しないが、殺される乙女を助けようとする「英雄」はアキレウスである。しかし、これは救出に失敗したパターンといえる。「月の女神を殺して得ようとする豊穣」がハイヌウェレ神話のような単純な「'''芋'''」ではなくて、「'''戦争の勝利'''」とか「'''神の加護'''」とか、'''社会的なもの、観念的なものにまで拡大されている'''ことが分かる。
アルテミスの猟犬の性質や、婚礼に関連する話、そして殺される月乙女は処女である、という点が、天狗食日月からの派生神話であることを伺わせる。ただ、ギリシャ神話は単なる伝承というよりは「文芸作品」という感が強く、文芸的な物語だと思う。
=== 十人の処女たちのたとえ ===