=== ヘーラーの狂気 ===
生まれたてのディオニューソスは、セメレーの姉妹である[[イーノー]]に渡された。ディオニューソスは娘として育てられ、夫[[アタマース]]はこれを黙認していた。しかし、ヘーラーは、このことを憎んでアタマースに狂気を吹き込んだ。アタマースが白い鹿を見つけて矢を射たところ、殺したのはイーノーとの息子[[レアルコス]]だった。またイーノーも狂気に駆られ、沸騰したお湯の入った鍋にもう一人の息子[[メリケルテース]]を入れて殺し、その遺体を抱いて海に飛び込んだという<ref name="AP343" />。別の伝承では狂気に駆られたアタマースはレアルコスの体を八つ裂きにした。イーノーはメリケルテースを抱いて逃げたが、アタマースに追いつめられ、母子ともに海に身を投げた<ref>オウィディウス『変身物語』4巻。</ref>。またディオニューソス自身も狂い彷徨うことになるのだが、[[キュベレー]]によって狂気を解かれたともいわれる。[[ゼウス]]はディオニューソスを育てた恩義に報いてイーノーを女神[[レウコテアー]]とし、メリケルテースは海神[[パライモーン]]となった</ref><ref group="私注">子供を鍋で似て殺すところは河姆渡式の幼児供犠を思わせる。</ref>。
=== 布教の遍歴 ===