伊邪那美命は日本では代表的な国土の創造神であるので、[[女媧型女神]]であるといえる。ただ、創造したのは国土であって、人の直接の創造神としての性質はほとんどない。これは元々伊邪那美命を奉じていた人々が渡来人あるいは渡来系の弥生人であったために、日本の国土に対する権利を主張することに神話の重点を置いており、特に先住の縄文系の人々の「創造」を自らの神の仕業として先住民を同列に置く意図がなかったからではないか、と管理人は考える。この点に、古代社会の平等というよりは、差別主義的な思想を既に感じる。
伊邪那美命はカグツチを生んで亡くなるが、その後の神話の展開に「見るな」の[[禁忌]]が出てくることもあり、いわゆる「[[逃走女神]]」譚の一種となっていると考える。出産が夫との決別の起点となるところは[[豊玉毘売]]とも似ている。[[豊玉毘売]]も出産と「見るな」の[[禁忌]]が破られたことによって夫のもとを離れ、異界に去る。「[[逃走女神]]」の起源は中国神話の[[嫦娥]]と考える。[[嫦娥]]は不老不死の薬を持って、夫の[[羿]]の元から月へと出奔し、「'''月の女神'''」となる。伊邪那美命は黄泉の国へと出向き、最終的に「'''黄泉の女神'''」となる。」となる。日本神話では「月の神」は「[[月読命]]」とされて、男神と考えられている。[[月読命]]は「若返りの水の管掌者」と考えられており、「不老不死の薬」を所有していた[[嫦娥]]の性質を受け継いでいる。おそらく、弥生人の先祖が日本にやってくる以前に、「月の女神」としての[[嫦娥]]の神話を持っていたが、日本に到達する前に、「母神」かつ「冥界神」である伊邪那美命と、「月の神」の2つに分けられ、かつ「月の神」は[[啓思想]]1型の変換により、男神に変えられてしまったのであろう。そのため、伊邪那美命は「月の神」としての性質を失ってしまったものと思われる。 女性形の冥界神としては、メソポタミア神話のエレシュキガル、北欧神話のヘルがいる。これらの女神は最初から冥界神として存在していたように描かれているが、神話的起源は伊邪那美命と同じ可能性があると考える。 雷神の母、としての伊邪那美命であるが、「イザナミ」という名前の「イザ」は「イズ」、「イズチ」と同じ意味であって、「雷」を現す音と考える。伊邪那美命自身は雷神としての性質は現されていないが、名前らかはかつては雷神であり、天候神としての性質を持った女神であることが窺える。その点に天候神であった[[西王母]]の性質がかすかに窺える。 全体から見れば、伊邪那美命は中国神話の[[嫦娥]]に近い女神で、創造神であり、かつ兄妹婚を行った[[女媧]]にも近い[[女媧型女神]]であるが、わずかに[[西王母型女神]]の片鱗が含まれた女神であると言える。
== 関連項目 ==
* [[女媧]]
* [[嫦娥]]:[[逃走女神]]である。
* [[西王母]]
* [[禁忌]]:「見るな」の[[禁忌]]あり。
* [[愛宕権現]]
[[Category:火神]]
[[Category:軍神]]
[[Category:雷神]]