近世以前の日本では、家に家族に必要な数以上の食器を持たなかったため、婚礼など人数が集まる催しの際に余所から膳や椀を借りるという状況はしばしば発生した。
椀貸伝説は奥羽から九州まで日本の広い範囲に伝搬しているが、特に中部地方や北関東の山沿いなどに多く伝わっている。概ね上記の例と同じ筋書きだが小異は多く、貸してくれる相手は童子や河童、龍、女神、お地蔵様や、上記の事例のように正体不明であったり様々である。椀貸伝説は奥羽から九州まで日本の広い範囲に伝搬しているが、特に中部地方や北関東の山沿いなどに多く伝わっている。概ね上記の例と同じ筋書きだが小異は多く、貸してくれる相手は童子や河童、龍、'''女神'''、お地蔵様や、上記の事例のように正体不明であったり様々である。
貸してくれる場所は淵や滝、岩や山陰の洞穴、隠れ里に直接取りに行く場合もあり、やはり様々である。比較すると水に因む場所が多く、水神少童譚や水神信仰との関連が考えられる伝説も多い。物語には既に膳椀を貸してもらえる関係ができている場合や、椀が川の上流から流れてくるなどして異界や隠れ里を発見する場合もある。千葉県印旛郡栄町の龍角寺岩屋古墳や<ref>神野, 2009, p16</ref>、同県同郡酒々井町のカンカンムロ横穴群<ref name=Shisui2>酒々井町風土記, https://www.town.shisui.chiba.jp/static/chunk0001/fuudoki/page28/page28.html, 28.厳島のカンカンムロ, 酒々井町教育委員会, 2020-08-22</ref>など、古墳の横穴式石室や横穴墓が伝説地となっている事例もある。なお酒々井町(カンカンムロ)の事例では、最初に碗貸しを祈願する相手は弁財天だが、実際に碗や膳を貸してくる横穴墓の中にいる存在は正体不明である。