とされる。この饒速日命が天神御祖から教わった祝詞が「'''布瑠の言'''」であり、'''十種神宝'''と併せて祭祀すると、死者をも蘇生させるような効果があるとされた。石上神宮では、主祭神を'''布都御魂大神'''(ふつのみたまのおおかみ)(神体の'''布都御魂剣'''(ふつのみたまのつるぎ)に宿る神霊)、配神の一つに'''布留御魂大神'''(ふるのみたまのおおかみ)(十種神宝に宿る神霊)を祀る。死者を蘇らせるような性質と剣の霊という性質の2つ神霊に分けられているが、饒速日命とその子孫が奉祭する石上神宮全体としては、この2つの性質は「神宮の特性」として一体化しており、ケルト神話のフィン・マックールが軍事的英雄であり、かつ瀕死の者も救うような医薬神的性質を持つ者でもあったことに通じるように思う。布洛陀も本来は、軍的英雄でもあり、医薬神的性質を持つ者でもあったのではないだろうか。
一方、樹木神としての布洛陀は高木神とも呼ばれる高御産巣日神(たかみむすびのかみ)に現されているように思う。直接[[天照大御神]]・[[須佐之男命]]の系譜にはつながらない神だが「造化三神」といって[[天照大御神]]の上位にくる神である。物部氏系氏族の中に、そもそも太陽女神を始祖とする神話、布洛陀的な神を始祖とする神話というように複数の似ているけれども異なる系統の神話があったため、それらを正式に記紀神話として一つにまとめる際、現在のような形にしたと考える。
「'''ヒョウを征服する(制伏豹子)'''」の伝承では、布洛陀の医薬神的性質が窺えるように思う。布洛陀は草豹が好きではないが、草豹の苦しみと悲しみは、妊娠しても胎児が育たず、生まれても子が育たない、という点にある。布洛陀が対立するのは常に「天」である。おそらく「天」というのは古代の[[ミャオ族]]の一派のことで、草豹もそれに属するものなのだと思う。草豹の悲しみは、古代の[[ミャオ族]]の一派が純血を重要視するあまり、閉鎖的な母系社会で近親相姦を繰り返したことによるものなのではないだろうか。遺伝子の近い交合が繰り返されれば胎児は育ちにくくなり、生まれても子供は育ちにくくなる。おそらく、古代において布洛陀に相当する人物が提示したのが'''「兄妹婚(近親結婚)」の禁止'''だったのではないか。この伝承は、管理人にはミャオ族の子供である[[ダロン]]が近親結婚のタブーを破ることに対して、「天の罰」を受けるのではないか、と恐れおののくことを思い出させる。