ティアマトはついに決意し、それらの神々と、自ら産み出した11種の怪物たちを率いて、他の神々との戦いに乗り出す。ティアマトは数多の武器を配下に与え、そして彼らの指揮官として息子にして第二の夫の[[キングー]]を指名し、「天命の書版」なる権威の象徴を託した。しかし、神々により選ばれティアマト討伐に来たマルドゥクと対峙するとキングーは戦意喪失してしまう。ティアマトは呪文を唱えつつ、自らマルドゥクとの戦いに挑むが、マルドゥクは4つの風を配した網でティアマトを絡め取る。さらにマルドゥクが暴風をティアマトの顔に放つと、ティアマトはそれを飲み込むが、そのために口を閉じられなくなり、激しい風が腹の中に溢れてティアマトを苦しめた。その隙を突いたマルドゥクはティアマトの腹を弓で射抜いて倒した<ref group="私注">これは女性が弓矢で射られて殺された神話である。日本神話には[[鳴女]]の逸話がある。</ref>。
戦いの後、マルドゥクはティアマトの死体に立ち、その頭蓋を棍棒で砕いた。さらに動脈を切り裂くと、北風にティアマットの血を運ばせて自らの勝利を神々に知らせた。そしてマルドゥクはティアマトの亡骸を二つに引き裂いて、それぞれを天と地とした。ティアマトの乳房は山になり(そのそばに泉が作られ)、その眼からは[[チグリス川]]と[[ユーフラテス川]]の二大河川が生じた。こうして母なる神ティアマトは、世界の基となった。戦いの後、マルドゥクはティアマトの死体に立ち、その頭蓋を棍棒で砕いた。さらに動脈を切り裂くと、北風にティアマットの血を運ばせて自らの勝利を神々に知らせた。そしてマルドゥクはティアマトの亡骸を二つに引き裂いて、それぞれを天と地とした。ティアマトの乳房は山になり(そのそばに泉が作られ)、その眼からはチグリス川とユーフラテス川の二大河川が生じた。こうして母なる神ティアマトは、世界の基となった。
また、マルドゥクは「天命の書版」を捕らえたキングーから奪って父祖の[[アヌ (メソポタミア神話)|アヌ]]に手渡し、キングーを殺してその血から神々の労働を肩代わりさせるための「人間」を創造した。
=== 天命の書版 ===
「天命の粘土版」とも呼ばれる「天命の書版([[w:Tablet of Destinies|Tablet 「天命の粘土版」とも呼ばれる「天命の書版(Tablet of Destinies]], <small>{{cuneiform|𒁾𒉆𒋻𒊏}} {{transl|akk|DUB𒁾𒉆𒋻𒊏、DUB.NAM.TAR.RA}}</small>)」は、全ての神々の役割や個々人の寿命が書き記された、最高神が所持する代物であり、最高神の権威(Anuship / heavenly power, <small>{{cuneiform|𒀭𒀀𒉡𒋾}} {{transl|akk|𒀭𒀀𒉡𒋾、<sup>D</sup>A.NU.TI}}</small>)の象徴である。所持神が「天命の印」を押すことで、記述された内容が有効になると信じられていた<ref>{{Cite book|和書|author=, 岡田明子・[[小林登志子]]|year=, 2008 |title=, シュメル神話の世界 粘土版に刻まれた最古のロマン |publisher=[[粘土版に刻また最古のロマン, 中央公論新社]] }}, p.45</ref>。
=== 優しさが招いた悲劇 ===