== 神話 ==
=== 結婚 ===
ゼウスと結婚するにあたって、以下のエピソードが有名である。掟の女神[[テミス]]と結婚していたゼウスは、ヘーラーの美しさに恋に落ち、[[カッコウ]]に化けてヘーラーに近付き犯そうとした。しかし、ヘーラーは抵抗を続け、決してゼウスに身体を許さなかった。ヘーラーは交わることの条件として結婚を提示した。ヘーラーに魅了されていたゼウスは仕方なくテミスと離婚すると、ヘーラーと結婚した。また、ゼウスとヘーラーの関係は結婚前から久しく続いており、キタイローン山で交わっていたともいわれる<ref name="F" />。
ある時ヘーラーはゼウスと争った後にオリュンポスから離れキタイローン山に隠れた<ref name="J">高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』233,242頁。</ref>。ゼウスはヘーラーを誘い出すため、花嫁衣装で着飾った大きな女性の木偶人形を造り、新しく結婚すると言って同山中を通行した<ref name="J" />。それを聞いたヘーラーが飛び出して新しいゼウスの妃の衣装をむしり取ると、木像であることに気付いて和解した<ref name="J" /><ref group="私注">ヘーラーにも「隠れる女神」の性質があることが分かる。</ref>。
=== 嫉妬 ===
オリュンポス十二神の中でも情報収集能力に優れた描写が多く、ゼウスの浮気を迅速に察知するなど高い監視能力を発揮する。ギリシア神話に登場する男神は総じて女好きであり、ゼウスはその代表格である。そのため、結婚の守護神でもあるヘーラーは嫉妬心が深くゼウスの愛人([[セメレー]]、[[レートー]]、[[カリストー]]、[[ラミアー]]、[[アイギーナ]]とヘーラーに仕える女神官・[[イーオー]]など)やその間に生まれた子供([[ディオニューソス]]、[[ヘーラクレース]]など)に復讐する<ref name="G" />。自分の子孫にも容赦の無い一面も持ち、ゼウスの愛人になった曾孫[[セメレー]]に人間が直視すると致命的な危険があるゼウスの真の姿を見たがるように仕向ける、[[ヘーラクレース]]に惚れ込んで黄金の帯を譲る約束をした孫の[[ヒッポリュテー]]の部下を煽動してヘーラクレース一行を襲わせ、最終的には潔白を示すために無抵抗のまま弁明を試みるヒッポリュテーをヘーラクレースに殺させる、と両人に悲惨な最期を遂げさせている。しかし、浮気な夫とは対照的に、ヘーラー自身は貞淑である<ref name="G" />。