ヤナギの漢字表記には「'''柳'''」と「'''楊'''」があるが、枝が垂れ下がる種類(シダレヤナギやウンリュウヤナギなど)には「柳」、枝が立ち上がる種類(ネコヤナギやイヌコリヤナギなど)には「楊」の字を当てる<ref name="ken0229">http://miyakanken.co.jp/modules/p04/index.php?content_id=9, https://web.archive.org/web/20160308020608/miyakanken.co.jp/modules/p04/index.php?content_id=9, ネコヤナギ(猫柳), 株式会社宮城環境保全研究所, 2016-2-29, archivedate:2016-3-8, deadlinkdat:2020年1月28日</ref>。これらは万葉集でも区別されている<ref>ken0229</ref>。
== ヤナギの種類 神話等 ==日本では、ヤナギといえば、街路樹、公園樹のシダレヤナギが代表的であるが、生け花では幹がくねったウンリュウヤナギや冬芽から顔を出す花穂が銀白色の毛で目立つネコヤナギがよく知られている。柳の葉といえば一般的にシダレヤナギの細長いものが連想されるが、円形ないし卵円形の葉を持つ種もある。マルバヤナギ(アカメヤナギ)がその代表で、野生で普通に里山にあり、都市部の公園にも紛れ込んでいる。* メソポタミア神話:世界樹の一種である「フルップの木」は柳であろう、と言われている。イナンナ女神がこの木を自分の庭園に植えて育て、木から自らのベッドと玉座を作った。* 朝鮮神話:朱蒙の母の名を柳花夫人という。実際には、一般の人々が考えるよりヤナギの種類は多く、しかも身近に分布しているものである。やや自然の残った河原であれば、必ず何等かのヤナギが生育し、山地や高原にも生育する種がある。それらはネコヤナギやシダレヤナギとは一見とても異なった姿をしており、結構な大木になるものもある。さらには高山やツンドラでは、地を這うような草より小さいヤナギも存在するが、綿毛状の花穂や綿毛をもつ種子などの特徴は共通している。 ただし、その同定は極めて困難である。日本には30種を軽く越えるヤナギ属の種がある。これらは全て雌雄異株である。花が春に咲き、その後で葉が伸びて来るもの、葉と花が同時に生じるもの、展葉後に開花するものがある。同定のためには雄花の特徴、雌花の特徴、葉の特徴を知る必要がある。しかも、自然界でも雑種が簡単にできるらしいのである。 == 植生 ==ヤナギは水分の多い土壌を好み、よく'''川岸や湿地などに、生えている'''。自然状態の河川敷では、河畔林として大規模に生育していることがある。これは出水時に上流の河川敷から流木化したものが下流で堆積し、自然の茎伏せの状態で一斉に生育するためである。 '''川の侵食を防ぐため川岸に植林される'''。オーストラリア南部でも入植時に護岸目的で植林されたが、侵略的外来種(国家的に深刻な雑草(Weeds of National Significance))として認定され、在来の樹木への置き換えが進んでいる<ref>[https://pir.sa.gov.au/biosecurity/weeds_and_pest_animals/weeds_in_sa/weeds_of_national_significance_wons Weeds of National Significance (WoNS)] 南オーストラリア政府</ref>。繁殖力もさることながら、川の流れを阻害したり、秋には葉を大量に落とし、葉が分解されることで水質を悪化させ環境を激変させることが、オーストラリア政府の関心をひいている。* 日本神話:伊邪那岐命の語源はヤナグ(柳の古語)ではないか、と管理人は個人的に思う。
== 人の利用 ==
=== 文化 ===
* 空海が中国を訪れていた時代には、長安では旅立つ人に柳の枝を折って手渡し送る習慣があった。この文化は、漢詩などにも広く詠まれ、王維の有名な送別詩「元二の安西に使するを送る」においても背景になっている。「客舎青青 柳色新たなり」の句について、勝部孝三は、「柳」と「留」(どちらも音はリウ)が通じることから、柳の枝を環にしたものを渡すことが、当時中国において、旅人への餞の慣習であったと解説している。「還」と「環」(どちらも音はホワン)が通じて、また帰ってくることを願う意味が込められているわけである<ref>勝部孝三『桃源詩話』国文社, 1987年11月25日初版, pp.21‐22</ref>。
* 柳の枝を生糸で編んで作った箱を柳筥(やないばこ)と言い神道では'''重要な神具'''である。柳筥に神鏡を納めたり、また柳筥に短冊を乗せたりもするもので、奈良時代から皇室や神社で使用され続けている<ref>神社本庁『神社有職故実』1951年7月15日発行全129頁中24頁</ref>。
* 花札では1月の絵柄として、「柳に小野道風」、「'''柳に燕'''<ref>これは本来は「初夏」のイメージの図である。</ref>」、「柳に短冊」、カス(鬼札)が描かれる。
=== 土木工事への利用 ===
挿し木で容易に増えることから、治山などの土留工、伏工ではヤナギの木杭や止め釘を用い、緑化を進める基礎とすることがある。
=== 柳女 ===
また、ヤナギそのものが霊の宿る木と考えられ、ヤナギの枝が風になびく様子が幽霊の手の動作と同じように見え、風に揺れるヤナギの古木の枝に頬を撫でられたり傘を取られたりすることがヤナギの精の仕業と恐れられたことを「柳女」の由来とする説もあり、同様にヤナギのイメージから生まれたと考えられている『絵本百物語』の妖怪に「[[柳婆]]」がある。また怪談や民間伝承において「柳女」と同じく死んだ女の霊が子供を抱いて現れる妖怪に「[[産女]]」がある<ref>岩井宏實, 暮しの中の妖怪たち, 2000, 河出書房新社, 河出文庫, isbn:978-4309473963, pages118-119</ref>。
== ヤナギの種類 ==
日本では、ヤナギといえば、街路樹、公園樹のシダレヤナギが代表的であるが、生け花では幹がくねったウンリュウヤナギや冬芽から顔を出す花穂が銀白色の毛で目立つネコヤナギがよく知られている。柳の葉といえば一般的にシダレヤナギの細長いものが連想されるが、円形ないし卵円形の葉を持つ種もある。マルバヤナギ(アカメヤナギ)がその代表で、野生で普通に里山にあり、都市部の公園にも紛れ込んでいる。
実際には、一般の人々が考えるよりヤナギの種類は多く、しかも身近に分布しているものである。やや自然の残った河原であれば、必ず何等かのヤナギが生育し、山地や高原にも生育する種がある。それらはネコヤナギやシダレヤナギとは一見とても異なった姿をしており、結構な大木になるものもある。さらには高山やツンドラでは、地を這うような草より小さいヤナギも存在するが、綿毛状の花穂や綿毛をもつ種子などの特徴は共通している。
ただし、その同定は極めて困難である。日本には30種を軽く越えるヤナギ属の種がある。これらは全て雌雄異株である。花が春に咲き、その後で葉が伸びて来るもの、葉と花が同時に生じるもの、展葉後に開花するものがある。同定のためには雄花の特徴、雌花の特徴、葉の特徴を知る必要がある。しかも、自然界でも雑種が簡単にできるらしいのである。
== 植生 ==
ヤナギは水分の多い土壌を好み、よく'''川岸や湿地などに、生えている'''。自然状態の河川敷では、河畔林として大規模に生育していることがある。これは出水時に上流の河川敷から流木化したものが下流で堆積し、自然の茎伏せの状態で一斉に生育するためである。
'''川の侵食を防ぐため川岸に植林される'''。オーストラリア南部でも入植時に護岸目的で植林されたが、侵略的外来種(国家的に深刻な雑草(Weeds of National Significance))として認定され、在来の樹木への置き換えが進んでいる<ref>[https://pir.sa.gov.au/biosecurity/weeds_and_pest_animals/weeds_in_sa/weeds_of_national_significance_wons Weeds of National Significance (WoNS)] 南オーストラリア政府</ref>。繁殖力もさることながら、川の流れを阻害したり、秋には葉を大量に落とし、葉が分解されることで水質を悪化させ環境を激変させることが、オーストラリア政府の関心をひいている。
== 人の利用 ==
=== 土木工事への利用 ===
挿し木で容易に増えることから、治山などの土留工、伏工ではヤナギの木杭や止め釘を用い、緑化を進める基礎とすることがある。
== 参考文献 ==