歳徳神

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歳徳神(としとくじん、とんどさん)は、陰陽道で、その年の福徳を司る神である。年徳歳神正月さまなどとも言う。

どんど焼きには、お正月に迎えた歳神様がどんど焼きの煙とともにお帰りになるのを、感謝をこめて見送る意味があると伝えられている[1]

ほとんどの暦では、最初の方のページに王妃のような姿の美しい姫神の歳徳神を記載している。(歳徳神の由来には諸説あり、『簠簋内伝』では、牛頭天王の后・八将神の母の頗梨采女(はりさいじょ)であるとしているが、[2]もある。また、牛頭天王が須佐之男尊と習合したことから、その妃の櫛稲田姫とも同一視される。

恵方[編集]

歳徳神の在する方位恵方(えほう、吉方、兄方)、または明の方(あきのかた)と言い、その方角に向かって事を行えば、万事に吉とされる[3]

歳徳神の在する方位(すなわち恵方)は、その年の十干によって下記のように決まる。

恵方
十干 西暦の一の位 24方位 十二支 時計法 方位角 32方位 16方位
甲・己 4・9 寅卯間 75° 東微北やや北 東北東やや東
乙・庚 0・5 申酉間 8時半 255° 西微南やや南 西南西やや西
丙・辛
戊・癸
1・6
3・8
巳午間 5時半 165° 南微東やや東 南南東やや南
丁・壬 2・7 亥子間 11時半 345° 北微西やや西 北北西やや北

ただし、西暦2028年については例外的に通常とは異なる方角になる「飛坎年」と定められている。なお、飛坎年は3600年周期で戊申の年に訪れるため、次の飛坎年は西暦5628年である。この年は通常とは異なり、「坎」より歳徳神が訪れるとされているため、「北」が恵方となる。[4][5]

かつては、初詣は自宅から見て恵方の方角の寺社に参る習慣があった(恵方詣り)[3]。また、節分の行事として恵方を向いて「太巻きの丸かぶり」を行う恵方巻の風習が関西を中心に行なわれていたが、コンビニエンスストア等の宣伝やキャンペーンで全国に認知されつつある。なお、宣伝やキャンペーンにあたっては24方位ではなく日常的な16方位による簡便な説明が行われることが多い。

私的解説[編集]

左義長、いわゆる「どんど焼き」の主役となる女神である。「どんど焼き」そのものはイ族が年の初めに行う密枝(ミジ)という火祭りと意味的に似ている部分がある。なので、どのように解説するか悩んだが、「密枝(ミジ)」にも「どんど焼き」にも2重の意味があるように思う。

  • 火によって、境界や共同体を清める。
  • 爺婆を焼いて食べる。

という意味である。この2つは起源がやや異なるように思う。「火によって世界を清める」という概念は「穢れを清める」でもよいし、「疫神と戦う」という意味でも良いと考える。朝鮮神話の三神婆が一番良い例だと思うが、この女神は天然痘大王と対峙する医薬神の性質を持っている。彼女たちは、火をもって世界を清める太陽女神だったのだと考える。とすれば、歳徳神も古い時代の「火による清めの性質」を持つ太陽女神だったのだと思う。密枝(ミジ)にも境界や共同体を清める、という意味がある。

一方、密枝(ミジ)では酒を伴う宴、舞踏といった「清め」だけではない面があり、それは「どんど焼き」で爺婆を焼いたり、餅を焼いて食べることと共通している。「どんど焼き」で爺婆を焼くのも一種の「再現劇」といえ、これは「爺婆を焼いて食べた疫神」を慰撫するためのものといえる。

だから、太陽女神に「火による清め」をお願いしているのだけれども、その一方で疫神の機嫌をとって太陽女神を焼いてしまい、疫神を太陽神として持ち上げる、という矛盾したことをしている祭祀が、「どんど焼き」でもあり、「密枝(ミジ)」でもあるといえる。

なので、歳徳神は「敬われる清めの女神(太陽女神)」でもあり、「恵方巻きにして食べられてしまう女神」でもあるということになる。この2つを合わせて、

女神に清めの仕事をやらせた上で、疫神と一体となって女神を殺して食べると無病息災になる

という神話に基づくのが「どんど焼き」でもある、といえる。よくよく自分勝手で、自分だけが良ければ、誰でもこき使ったあと殺してしまえばいいというのが日本の「どんど焼き」、疫神を一応もてなすけれども、その後村の外に捨ててしまう密枝(ミジ)は、とても良心的だ、と考える管理人である。

参考文献[編集]

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. 「どんど焼き」とはどんな行事?意味と由来、全国の有名などんど焼きを紹介 祐徳稲荷神社・お炊き上げコラム、(最終閲覧日:24-11-20)
  2. 2024年10月, これはでたらめであるとの批判
  3. 3.0 3.1 『年中行事事典』p.103-104 1958年(昭和33年)5月23日初版発行 西角井正慶編 東京堂出版
  4. 干支②方位神(ほういじん), https://www.ndl.go.jp/koyomi/chapter3/s2.html, www.ndl.go.jp, 2024-09-16
  5. 『日本の方位神大全』(1974年)