木と鳥

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神話・伝説上の神鳥・霊鳥が特別な木に住んでいる、という物語は多い。その中には、特別な魔法のアイテムを盗む鳥もいる。盗む物は、「人の運命が書かれた書物(ズー型)」と「不死になる薬(ガルダ型)」である。

天命の書板[編集]

ズー[編集]

単頭のライオン頭の鷲「ズー(アンズー)」。紀元前2550年~2500年。ルーブル美術館蔵

ズー)は、メソポタミア神話(バビロニア神話)に登場する。現在ではアンズーAnzū)がより正確な呼称であるとされる。ライオンの頭を持つワシの姿で表されることがある。

ズーは天の主神エンリルの随獣であり彼に仕えていたが、主神権の簒奪を目論み、主神権の象徴である「天命の書板」を盗み出してしまう。この話はいくつかバージョンがあり、あるバージョンでは、「天命の書板」を取り返すために神々がルガルバンダを送り込み、彼がズーを殺したことになっており、また別のバージョンでは、エアとベレト・イリがニヌルタを書板の奪還に向かわせたという。また、アッシュールバニパルの讃歌では、マルドゥクがズーの討伐を命じられている。

トゥプシマティ(Tupsimati)[編集]

「天命の書板(Tablet of Destinies)」のこと。 メソポタミア神話では、運命の石版[1][2]は、楔形文字で刻まれた粘土板に円柱の印章を押したもので、エンリル神に宇宙の支配者としての最高権威を与える永遠の法的文書と考えられていた。

シュメール語の詩『ニヌルタと亀』では、石版を持つのはエンリルではなくエンキ神であり、エンキが石版を盗んでアプスー(apsû、abzu)に持ち込んだためである[3][4]。エンキは、世界の創造者であり、知識および魔法を司る神とされる。この詩とアッカド語の『アンズー』の詩もまた、鳥イミュグド(シュメール語)またはアンズー(アッカド語)に石版を盗まれるという懸念を共有している。

後期バビロニアの文書エヌマ・エリシュによると、神々の父であったアプスーは、若い世代の神々に平穏な眠りを乱されたため、彼らを滅ぼそうとした。アプスーの孫にあたり、当時神々の中で最強であったエンキは、若い世代の神々の代表に選ばれた。彼はアプスーに魔法をかけて深く眠らせたうえ、地底深くに閉じ込めて殺した。エンキ(エア)は、世界を豊かに保つ力をアプスーから獲得し、そのまま地底を住処として、淡水および繁殖を司る神としての役割を継承した。夫のアプスーを殺されたティアマトは、エアの子供世代の神々を殺そうと企み、キングーに石版を与え軍の指揮権を委ねるが、エアの息子マルドゥクがキングーから天命の粘土板を奪い勝利を収めた。天地の秩序を取り戻し、確立したマルドゥクはエンリルに代わって神々の王となった(「運命の石版」を手に入れた。)

マルドゥクの息子とされた書記と書記官の神ナブーが、人類の運命が記された「運命の石版」の保持者であった。ナブーは文字の神として、個々の人間に与えられた運命を石版に刻み、書記神ニヌルタと関連付けられた[5]。知恵者としては、メソポタミアの月神シンと関連があった。メソポタミアにおいてシンは月を司り[6]、大地と大気の神としても信仰されていた[7]。月の規則正しく満ちては欠ける性質から「暦を司る神」とされた。「暦の神」としてのシンは「遠い日々の運命を決める」力を持っていたとされ、彼の練る計画を知った神はいないとされる。シンはエンリルとニンリルの息子である。

もともとナブーは西部セム族の神であり、アムル人によって紀元前2000年過ぎ頃、恐らくマルドゥクが導入されるのとほぼ同時期にメソポタミアに導入された[8]。ナブーは当初はマルドゥクの書記官で大臣であるとされていたが、後に息子であるとされた。

「運命の石版」はシュメール時代にはエンキの持ち物とされていたが、その頃(前3500年頃 - 前3100年頃)から鳥イミュグド(アンズー)に盗まれる、という神話があったようである。

イナンナとフルップ(ハルブ)の樹( "Inanna and the Huluppu Tree")[編集]

これはシュメール語のギルガメシュ叙事詩(前3500年頃 - 前3100年頃)にみられるエピソードである[9]

ブラヌン川(ユーフラテス川)のほとりに一本のフルップ木(柳)が生えていた。ある日、激しい南風によって木は倒され、川が溢れて洪水となり、フルップ木は流れ出した。

イナンナはブラヌン川に流れていたフルップ木を引き上げ、彼女の神殿があるウルクに運び、「聖なる園」にこれを植えた。彼女はこの木を育てて、自分の椅子と寝台を作ろうと考えた。

しかし、木が成長すると、樹の根にはヘビが巣を作り、梢にはズーが巣を作り、樹の幹には魔女リリトが住みついてしまい、木を切り倒すことができなかった。

イナンナは悲しみ、兄弟の太陽神ウトゥを尋ねて、助けを求めた。

ウルクの城主・英雄ギルガメシュが助力を申し出た。ギルガメシュは蛇を倒し、ズーは親子で山へ逃げ去り、魔女リリトは砂漠へ逃げた。ギルガメシュの家来達がフルップ木を切り倒したので、イナンナは立派な椅子と寝台を作ることができた。

イナンナは、感謝の印として、その樹の根から「プック(Pukku)とミック(Mikku)」(輪と棒、太鼓とバチだと考えられている)を作り、ギルガメシュへ贈った。

喜んだギルガメシュはウルクの若者たちを集めて宴会を開いた。ところが、若い娘たちの叫び声のためにプックとミックは大地の割れ目から地下界へ落ちてしまった。

ズーに関連するもの[編集]

トートとナブー:書記の神・月と関連する神[編集]

トート(ギリシャ語:Θωθ)は、古代エジプトの知恵を司る神。エジプト初期王朝時代(第1 - 2王朝)以前から(紀元前3100年よりも前)から信仰されていた。古代エジプトでの発音は、完全には解明されていないがジェフティ(エジプト語:ḏḥwty)と呼ばれる。聖獣は、トキとヒヒである。主にヘルモポリスで信仰された。

多くの信仰を集め、長い間、様々な広い地域で信仰されたため、知恵の神、書記の守護者、時の管理人、楽器の開発者、創造神などとされ、王族、民間人問わず信仰された。

ヘリオポリス神話において世界ができた時、自らの力で石から生まれたとされる説が有名である(この場合、早く生まれたために足が悪くなったとされる)。神話では、世界は、八柱神(オグドアド)によって作り出されたとされている。その後この神々が眠りにつくが世界が終焉を迎えた時、また新しい世界を生み出すために神々を目覚めさせなければならない。この役目を請け負ったのがトートだとされる。あるいは、トートが創造神とされた。

トートは神々の書記であり、ヒエログリフを開発したことから書記の守護者とされた。死者の審判においては、全ての人の名前や行動を生前の内から記録しているとも、アヌビスが死者の心臓を計りにかけ、トートは、死者の名前を記録する作業を行うともいう。王が即位した時には、その王の名前をイシェドと呼ばれる永遠に朽ちない葉に書き記す。

トートは月と賭けをして勝ち、時の支配権を手に入れた。そこで太陽神の管理できない閏日を5日間作った(太陰暦と太陽暦の差)。月としての属性を得たため太陽の沈んだあとの夜の時間は、トート神が太陽にかわって地上を守護するとされる。

トートは、魔法に通じておりイシスに数多くの呪文を伝えた。病を治す呪文も熟知していることから医療の神の面もある。

トートはナブーと同様、「人の運命が書かれた書物」を使用している。トートにはこれを盗まれた、という神話はないようである。トートそのものが、管理者であり、鳥神である。

ヘルメースとアポローン[編集]

神話[編集]

ギリシア神話のヘルメースは早朝に生まれ、昼にゆりかごから抜け出すと、まもなくアポローンの飼っていた牛50頭を盗んだ。ヘルメースは自身の足跡を偽装し、さらに証拠の品を燃やして牛たちを後ろ向きに歩かせ、牛舎から牛が出た形跡をなくしてしまった。翌日、アポローンは、占いによりヘルメースが犯人だと知る。アポローンはヘルメースに、牛を返すように迫るが、ヘルメースは「生まれたばかりの自分にできる訳がない」とうそぶき、ゼウスの前に引き立てられても「嘘のつき方も知らない」と言った。それを見たゼウスは、ヘルメースに対してアポローンに牛を返すように勧めた。ヘルメースは牛を返すがアポローンは納得しなかった。ヘルメースは生まれた直後(牛を盗んだ帰りとも)に洞穴で捕らえた亀の甲羅で作った竪琴を奏でてみせた。それが欲しくなったアポローンは牛と竪琴を交換してヘルメースを許し、さらにヘルメースが葦笛をこしらえると、アポローンは友好の証として自身の持つケーリュケイオンの杖をヘルメースに贈った(牛はヘルメースが全て殺したため、交換したのはケーリュケイオンだけとする説も。なお、殺した牛の腸を竪琴の材料に使ったとも)。このときアポローンとお互いに必要な物を交換したことからヘルメースは商売の神と呼ばれ、生まれた直後に各地を飛び回ったことから旅の神にもなった。

ヘルメースの性質[編集]

上位の神と知恵くらべ(ある意味「力くらべ」)を行って勝ち、相手の友情を得る点は、ガルーダとインドラとの関係に似る。

後世に錬金術と関連づけられていることから、「知恵と魔法の神」として、ヘレニズム時代(紀元前4世紀~1世紀)にトートと習合したか?

本項の鳥神達とは

  • 泥棒に関連する点
  • 死者を冥界から出し入れする点に、「人の運命と関連する」点
  • 鳥ではないが、空を飛ぶ性質を持つ点

が共通する。

モイラ・運命と秩序の女神[編集]

モイラΜοῖρα, ラテン翻字:Moira)は、ギリシア神話における「運命の三女神」である。幾つかの伝承があるが、クロートー、ラケシス、アトロポスの3柱で、姉妹とされる。

最初は単数で一柱の女神であったが、後に複数で考えられ、三女神で一組となり、複数形でモイライ(Moirai)と呼ばれる。プラトーン(紀元前5~4世紀)の『国家』の末尾にある『エルの物語』ではクロートーが「現在」、ラケシスが「過去」、アトロポスが「未来」を司る神として登場している。

モイライはゼウスの権威に従っており、ゼウスは彼女達に、物事の自然の秩序が尊重されるべく計らうよう命じたとされている。しかし、トロイア戦争(紀元前8~2世紀頃成立)の物語においてはゼウスがモイライの決定に逆らえないことが示唆されている[10]。この様に神々と運命との関係はしばしば矛盾に陥っており、ゼウスは時に運命を支配しているようであり、時に運命の決定に従っているようにも描写されている[11]

  • 人の運命を定める女神
  • 物事の自然の秩序を守る女神

である。

モイラは「誕生」「人生」「死」の流れを定め、その秩序を維持する神のように思える。それに反して、死者をよみがえらせる等、いわば「秩序の流れを逆向きにさせる」ことで人の運命に関わる神がヘルメースといえる。

ノルンとアルファル[編集]

ノルン(norn)は、北欧神話に登場する運命の女神。

通常は巨人族の3姉妹である長女ウルズ、次女ヴェルザンディ、三女スクルドのことのみを意味する場合が多い。彼女ら3人の登場により、アースガルズの黄金の時代は終わりを告げたとされている。

スノッリ・ストゥルルソンによる『古エッダ』の『巫女の予言』の解説によれば、世界樹ユグドラシルの根元にあるウルザルブルン(「ウルズの泉」)のほとりに住み、ユグドラシルに泉の水をかけて育てる。ウルズとヴェルザンディは木片にルーン文字を彫る。スクルドはワルキューレの一人。[12]

彼女たち3柱のノルニルに加えて、人が生まれたときその人の将来を予め定めるために、多くの他のノルニルがその場に到着する。悪意あるノルニルと善意のノルニルがおり、後者がいわゆる守護女神である一方で、前者は世界中にすべての悪意と悲惨な出来事をもたらしたという。

3柱の主要なノルニルがいるという考え方は、ギリシア神話・ローマ神話において同様に糸を紡いでいる運命の女神モイライ・パルカが後世に及ぼした影響である可能性がある。

利益と損失の両方をノルニルが運んで来るという言い伝えは、キリスト教が入ってきた後も信じられていた。その証拠として、ボルグンド・スターヴ教会で見つかった「ルーン文字銘 N 351 M」が挙げられる。

ノルニルに関する古ノルド語の出典元が多数残っている。ほとんどの重要な出典は、『散文エッダ』(スノッリのエッダ)と『詩のエッダ』である。前者が古い詩に加えて12世紀から13世紀にかけての族長であり学者であるスノッリ・ストゥルルソンによって改作された物語、説明、解説を含んでいる一方で、後者はノルニルが頻繁に引き合いに出される古い詩を含んでいる。

神以外のノルンはアルファルに属するとされた。スカンジナビアのエルフは気に入った人に「エルフの本」を与えるが、それを読めば未来のできごとを予め知ることができるとされた。

まとめ[編集]

人や国家の運命を定める「天命の書板」系のアイテムは時代が遡るほど、高位の重要な神の持ち物とされているようである。時代が下ると、所有する神々の地位は次第に低下しはじめ、北欧では神よりも低い地位の精霊的なエルフの持ち物とされる。ただし、ギリシア神話や北欧神話にあるように、運命の女神達の定めた運命からは高位の神々でさえ逃れられない、とされており、本来の「運命を定める神」の地位の高さが窺える。

「天命の書板」が盗まれる、というモチーフはメソポタミア神話のみの特徴のように思われる。

不死の霊薬[編集]

シームルグ[編集]

シームルグ[13](またはスィームルグ[14]スィーモルグ[15]シムルグ。سیمرغ、Simurgh)は、イラン神話に登場する神秘的な鳥である。サムルク(Samruk)などともいう。

ハオマの木に宿る鳥[編集]

ガオケレナは、ペルシャ神話、ゾロアスター教の伝説に登場する白きハオマの巨木(生命の植物)である。世界海ヴォウルカシャ(Vourukasha)の中心に立つとされ、1万の癒しの植物に囲まれた、"癒しの木の王"とも呼ばれる[16]。この植物は食すと癒しをもたらし、死者を復活させ不老不死にする。ハオマ(Haoma)は、ゾロアスター教において重視される神酒の名でもあり、この植物の実から作られるとされる、不老不死の霊薬である。ガオケレナは「雄牛の角」「雌牛の耳」の意である。

悪霊がトカゲとカエルを作り、この木を攻撃しようとしたが、10匹のカラ魚と9個の口と6個の目を持つロバによって保護された。またこの木には、シームルグが巣を作っている。

参考・ハオマとソーマ[編集]

ハオマ (Haoma)とは、ゾロアスター教において重視される神酒。

ハオマはアヴェスター語形で、パフラヴィー語形ではホーム、現代ペルシア語ではフームと言う。この名はインド神話のソーマに対応し、従ってインド・イラン共通時代にまで遡る古い信仰に基づくものである。

ハオマ草を搾って造る酒であると伝えられるが、早くからその実物は手に入らなくなったようで、儀式ではザクロの枝などで代用されている。

ゾロアスター教において、酒は狂騒をもたらす悪魔の飲み物とされ、悪神アエーシュマに属すると説く。しかし、このハオマだけは神聖な酒として特別視され、アシャ・ワヒシュタに属するとされる。

また、ハオマは神格化され、中級神ヤザタに分類されている。生命力を活性化させる力を持ち、身体を健康にし、死を遠ざけ、子孫繁栄を司る。金色の身体を持ち、高山の頂上に座すという。


ソーマsoma)は、ヴェーダなどのインド神話に登場する神々の飲料。なんらかの植物の液汁と考えられるが、植物学上の同定は困難である[17][18]。また、その植物を神格化したインドの神でもある。

飲み物のソーマは、ヴェーダの祭祀で用いられる一種の興奮飲料であり、原料の植物を指すこともある。ゾロアスター教でも同じ飲料(ハオマ)を用いることから、起源は古い。神々はこれを飲用して英気を養い、詩人は天啓を得るために使った。高揚感や幻覚作用を伴うが酒ではない。ソーマは神々と人間に栄養と活力を与え、寿命を延ばし、霊感をもたらす不老不死の霊薬という。『リグ・ヴェーダ』第9巻全体がソーマ讃歌であり、その重要性が知られる。

ヒンドゥー教で月が神々の酒盃と見なされたためにソーマは月の神とも考えられ、ナヴァグラハの1柱である光と月の神チャンドラと同一視される。


 要するに、ハオマもソーマも「神話的飲料」ではあるが、現実にも祭祀で用いられるこの名の飲料があったようである。何らかの酒類か、精神に作用する成分を含む植物の汁だったのかもしれない。後述するアムリタは、乳海攪拌で作られたものなので、神話の中だけに存在し、現実にはないものだった、といえる。

ガルダ[編集]

ガルダगरुड, Garuḍa)は、インド神話に登場する炎の様に光り輝き熱を発する神鳥。ガルダはサンスクリットやヒンディー語による名称で、パーリ語ではガルラGaruḷa)、英語やインドネシア語などではガルーダという。カシュヤパとヴィナターの息子で、ヴィシュヌのヴァーハナ(神の乗り物)である。

その一族はインド神話において人々に恐れられる蛇・竜のたぐい(ナーガ族)と敵対関係にあり、それらを退治する聖鳥として崇拝されている。これは、インドにおいて猛禽類や孔雀は蛇を食べると解釈されていたことによる。単に鷲の姿で描かれたり、人間に翼が生えた姿で描かれたりもするが、基本的には人間の胴体と鷲の頭部・嘴・翼・爪を持つ、翼は赤く全身は黄金色に輝く巨大な鳥として描かれる。

ガルダとアムリタ(amṛta)[編集]

アムリタ(amṛta), 甘露は、インド神話に登場する神秘的な飲料の名で、飲む者に不死を与えるとされる。乳海攪拌によって醸造され、神々によって厳重に保管された。

ガルダはナーガたちの奴隷だった母親を助け出すために、天界にある乳海攪拌から生まれた不死の聖水アムリタを神々から力ずくで奪ってくるとナーガたちに約束した。

ガルダは天上に乗り込むと、守備を固めて待ち受けていた神々を次々に払いのけ、アムリタを奪い飛び去った。

ヴィシュヌはガルダの勇気と力に感動したため、アムリタを用いなくてもガルダを不死とする、と告げた。ガルダはそれを受けてヴィシュヌのヴァーハナとなることを誓った。インドラはガルダと戦って敵わなかったので、ガルダに永遠の友情の誓いを申し込んだ。ガルダはナーガたちを食料とするという約束を神々と交わした。

約束を守るために、一旦ガルダはアムリタをナーガたちの元へ持ち帰った。しかし、ナーガたちが飲む前に、インドラがアムリタを取り返してしまった(『マハーバーラタ』第1巻14~30章[19])。

アルナ(Aruna)・半分男と両性具有[編集]

ガルダには双子の兄がおり、それがアルナ(Aruna、暁光)である。彼らの母親ヴィナター(Vinata)は2個の卵を生んだ。卵がなかなか孵らなかったので、ヴィナターは恥ずかしさのあまり卵の1つを割った。すると、上半身しかない子供が出てきた。卵を早く割ったために下半身がまだ作られていなかったのである。この息子は暁の神アルナであるが、母親に対して怒り、500年の間、競った相手の奴隷になるという呪いをかけた。

アルナ(Sanskrit: अरुण; IAST: Aruṇa)は、ヒンドゥー教におけるスーリヤ(太陽神)の戦車の御者である[20]。朝日の赤々とした輝きを擬人化した存在である[21]

また、『ラーマーヤナ』に関連するインドの民話によく登場する伝説として、アルナがアルニ(Aruni)という女性になって、天女たちの集まりに入り、そこでは天の王インドラ以外の男は許されなかったというものがある。インドラはアルニと恋に落ち、彼女との間にヴァリという男の子をもうけた。翌日、スーリヤの求めに応じてアルニは再び女性の姿になり、スーリヤは息子スグリーバをもうけた。二人の子供はアハリヤに与えられて育てられたが、夫の聖者ゴータマは二人を嫌って猿に変えて呪ってしまった[22]

ガルダに関連するもの[編集]

竹取説話[編集]

今昔物語集 巻第31、第33「竹取の翁女児を見付けて養ふ語」

「竹取物語」の類話である。「竹取物語」が本話の直接の出典ではない、というのが現在の通説とのこと。

粗筋は、「竹取の翁が竹藪で女児を見付けて、育てたところ、三ヶ月で成長し、成人となった。翁が竹を取りに行くと、今度は竹の中に黄金を見付けた。そこで翁は大金持ちになった。女児は成長すると非常に美しくなり求婚者が殺到した。娘は「空に鳴る雷」「優曇華の花」「打たぬのに鳴る鼓」を求婚者達に求めたが、誰も持ってくることはできなかった。そのうち、評判を聞きつけた天皇が直接求婚に来て、女の美しさを素晴らしいと思った。天皇は女に求婚したが、女は「私は人ではありません。空から迎えが来ます。」と述べて、迎えと一緒に天に帰ってしまった。」というものである。

創作物である「竹取物語」では女主人公は「月の都」に帰ることになっており、別れの手向けに、天皇に「不死の薬」を贈っている。すなわち、「竹取物語」の方が、民間伝承よりも「嫦娥的」な要素を含んでいる、といえる。おそらく、中国の伝承に詳しい者が、民間流布の「竹取説話」に嫦娥の伝説を取り入れて作り上げたものが「竹取物語」と思われる。 本来の「竹取説話」は、「小さ子」的な女神に親切にしてくれる翁夫妻に対する報恩譚に、女主人公が直接求婚者達に難題を出す「難題婿」の要素と、鶴女房的な禁忌破りを伴った失踪譚の要素を組み込んだ物語だろうと思われる。 平安時代の高貴な女性はめったに人前に姿を表すものではないので通常は見ることができないものだし、鶴女房のように人間のふりをしていたのかもしれない。しかし、天皇にその正体を見破られてしまった(天皇には直接会わないわけにいかない、正体(真名)を尋ねられれば答えないわけにいかない、からである)ので、鶴女房のように魔法が解けて、本来あるべき場所に戻らざるを得なかった、というのが本来の物語だったではないか、と考える。本来前半は難題婿の要素が含まれた「たまご姫」的物語、後半は「こびとのチュルリヴィルリ」的な物語だったと思われる。魔女の要素が欠けて、自分から失踪する「とくさむすめ」のようなもの。禁忌破りの部分が消失して、主人公の所業が気に入らなくて女主人公が失踪するモチーフは西欧の「ラ・ラメー」にもみられる。

まとめ[編集]

「不死の霊薬」の窃盗と逃走には「女性」が絡むもののように思われる。ガルダの母は、賭けに負けて奴隷になるという罰を受けている。嫦娥は夫の罪に連座する形で地上に追放されるという罰を受けた。いずれも物語の結末では霊性を取り戻すが、ガルダの母ヴィナターと嫦娥ではその方法が異なる。

竹取説話に関しては、女主人公の側から見れば、「会ってはならない者」と会ったために、昇天(死ななければならなかった)物語、ともいえる。三輪山の百襲姫伝説(見るな)、不完全ではあるが宮簀媛と日本武尊(月の穢れ)等である。そのように考えると、かぐや姫は会ってはならない者(天皇)と会ったために死ななければならなかった。なぜなら彼女自身が「月(穢れ)」そのものだったから、という見方もできるかもしれない、と思う。要は「竹取説話」の場合は、昇天そのものが罰だったのかもしれない。ただ言えることは竹取説話は、様々なモチーフが組み合わされた創作性の高い物語である、ということである。

関連項目[編集]

参考文献[編集]

特に記載のないものはWikipediaからの抜粋なので★☆☆☆☆:レベル1。

ズー[編集]

トゥプシマティ(Tupsimati)[編集]

イナンナとフルップ(ハルブ)の樹( "Inanna and the Huluppu Tree")[編集]

Wikipedia記載内容の原典がはっきりしていないようなので、神話の内容は以下からの抜粋です。だから、★★☆☆☆:レベル2。

  • メソポタミアの神話 世界の神話I、矢島文夫著、筑摩書房、117-120p

関連するもの[編集]

トートとナブー:書記の神・月と関連する神[編集]

ヘルメースとヘルマ[編集]

モイラ・運命と秩序の女神[編集]

ガルダ[編集]

ガルダとアムリタ(amṛta)[編集]

アルナ(Aruna)・半分男と両性具有[編集]

関連するもの[編集]

嫦娥[編集]

竹取説話[編集]

原典を参照しているので、★★★★★:レベル5。 「竹取物語」の粗筋は誰でも知っていても、原典を読んだことのある人はあまりいないのではないでしょうか。

参照[編集]

  1. Not, as frequently misquoted in general works, the Tablets of Destiny.
  2. http://etcsl.orinst.ox.ac.uk/cgi-bin/etcsl.cgi?text=c.1.6.3&display=Crit&charenc=gcirc&lineid=c163.B.1#c163.B.1, The Electronic Text Corpus of Sumerian Literature, etcsl.orinst.ox.ac.uk, access-date=2017-08-28
  3. http://etcsl.orinst.ox.ac.uk/cgi-bin/etcsl.cgi?text=t.1.6.3# , Oxford.
  4. シュメール語はシュメール地方の都市文明を担った人々が使用していた言語である。前3500年頃 - 前3100年頃。
  5. Leick, Dr Gwendolyn, A Dictionary of Ancient Near Eastern Mythology, date=2002, Routledge, isbn=9781134641024, page=127, https://books.google.com/books?id=_pqEAgAAQBAJ&pg=PA123, =March 7, 2019, en
  6. 『オリエントの神話』36-38頁
  7. 『世界神話辞典』50-51頁(シンの項)。
  8. url=http://www.mythencyclopedia.com/Mi-Ni/Nabu.html , Nabu - Myth Encyclopedia - mythology, god, ancient, children , publisher=Mythencyclopedia.com , 2010-12-24
  9. メソポタミアの神話 世界の神話I、矢島文夫著、筑摩書房、117-120p
  10. マイケル・グラント、ジョン・ヘイゼル『ギリシア・ローマ神話事典』566頁。
  11. 高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』290頁。
  12. Nordisk familjebok(1913年)のNornorの記事による。
  13. ローズ,松村訳 (2004)で確認した表記。
  14. カーティス,薩摩訳 (2002)で確認した表記。
  15. フェルドウスィー,岡田訳 (1999)、ヘダーヤト,奥西訳註 (1999)で確認した表記。
  16. Darmesteter, Introduction, Pg lxix
  17. 山本昌木, 1985, 古代インドにおける植物病害と菌類について, 日本植物病理学会報, volume=51, issue=3, pages=251, https://doi.org/10.3186/jjphytopath.51.249
  18. John Brough, 1971, Soma and "Amanita muscaria", Bulletin of the School of Oriental and African Studies, University of London, volume=34, issue=2, pages=331-362, https://www.jstor.org/stable/612695
  19. 「マハーバーラタ」の成立年代は一般に、紀元前4世紀頃から紀元後4世紀頃とされている。
  20. Roshen Dalal, Hinduism: An Alphabetical Guide, url=https://books.google.com/books?id=DH0vmD8ghdMC, 2010, Penguin Books, isbn=978-0-14-341421-6, pages=39–40
  21. अरुण aruṇa: reddish-brown, tawny, red, ruddy (the colour of the morning as opposed to the darkness of night). Sanskrit-English Dictionary by Monier-Williams, Monier Williams (1899)
  22. Freeman, 2001, pp=201–4