月桂樹(植物)

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ゲッケイジュ(月桂樹[1]、学名: Laurus nobilis)は、クスノキ科ゲッケイジュ属の常緑高木。英語名からローレルともよばれる[2][3]。葉に芳香があり古代から用いられた。乾燥した葉は香辛料ローリエになり、葉と小枝は丸く編んだ月桂冠がよく知られている。

リンネの『植物の種』(1753年) で記載された植物の一つである[4]

名称[編集]

英語の Noble Laurel(ノーブル・ローレル)を中国語に訳して「月桂樹」と名付けられ、それを日本では音読みしてゲッケイジュの和名がつけられた<ef>田中孝治, 1995, p144</ref>[5]。別名、英語名からローレル(Laulel)[6]、ベイツリー(Bay Tree) [7] 、スイート・ベイ (Sweet Bay) [8] 、ベイ (Bay) [9]、フランス語名からローリエ (Laurier)[10]</ref>山﨑誠子, 2019, p48</ref>とよばれる。

学名の小種名 nobilis(ノビリス)は、「高貴」「気品ある」を意味する[11]

特徴[編集]

地中海沿岸地域の原産といわれ、地中海沿岸地域に広く分布するが、寒さによく耐えることからヨーロッパ、イギリス、アメリカなどに広く伝えられた[12]。日本へは明治時代に渡来し、明治初年には開拓使の青山の圃場に入ったといわれており[13]、日露戦争の戦勝記念として東郷平八郎、上村彦之丞の両海軍大将によって日比谷公園に植栽されて各地に広まった[14][15][16]。日本では関東地方から九州までの範囲で植栽される[17]。萌芽力が強く、海岸や屋上などの条件が悪いところでも、丈夫に育つ[18]。雌雄異株であるが、日本には雌株が少ない[19]

常緑広葉樹の中高木で、高さは9 - 12mほどになる[20][21]。株立ちすることも多い[22]。樹皮は灰白色から灰色で、皮目が散在する[23]。一年枝や若枝は緑色をしている[24][25]。枝葉を傷つけると独特の芳香がある<ef>田中孝治, 1995, p144</ref>[26]。葉身は、長さ5 - 12cmの狭長楕円形で、濃緑色の革質で光沢があり、葉縁は波打つ[27][28]。葉裏はやや硬い[29]

花期は(4 - 5月)で、葉腋に短い花柄を出して、その先端に黄白色の小花を群がって咲かせるテンプレート:Sfnテンプレート:Sfn雌雄異株で、日本の株は、ほとんどが雄株であるテンプレート:Sfn。果実は直径1 cmほどの球形で、10月頃に黒紫色に熟し香りがあるテンプレート:Sfnテンプレート:Sfn

冬芽は葉芽が楕円形から卵形、花芽は球形をしているテンプレート:Sfn。側芽は(葉芽)は頂芽よりも小さく、そのすぐ下にある葉痕が白っぽくよく目立つテンプレート:Sfn。葉痕には維管束痕が1個あるテンプレート:Sfn

利用[編集]

庭木、公園樹としての利用のほか、ハーブとして、葉は香辛料(スパイス)として煮込み料理の香味づけに、葉や実は薬用として利用される。刈り取った枝葉を採集して、陰干ししたものが月桂葉(英:ローレル、またはベイリーブス、仏:ローリエ)であるテンプレート:Sfn

葉には精油1 - 3%が含まれており、精油成分はシネオール約50%、オイゲノール約1.7%、ゲラニオールピネンテルピネンセスキペルテンなどであるテンプレート:Sfn。果実には、ラウル酸グリコシドを主成分とする脂肪油約25%と、シネオール、ピネン、ラウル酸などの精油約1%を含んでいるテンプレート:Sfn。ゲッケイジュに含まれる精油はヒトの味覚神経を刺激し、唾液や胃液の分泌を促して食欲増進作用があるほか、浴湯料として血液循環作用があるテンプレート:Sfn

葉から蒸留した油から作られる香料は、英名ベイからベイラムとよばれ、さっぱりとした香りで男性用化粧品に多いテンプレート:Sfn

植栽[編集]

庭木や生け垣に植栽されるテンプレート:Sfn。生長が早く、剪定にも強いという特徴があり、刈り込みすぎや形が不揃いであっても、それを早くリカバリーすることができ、トピアリーを容易に作ることもできるテンプレート:Sfn

食用・薬用[編集]

葉、実は、それぞれ月桂葉月桂実という生薬名を持つ。ゲッケイジュがもつ芳香は、古代から香料や料理の香りづけに使われてきたテンプレート:Sfn

葉にはシネオールと呼ばれる芳香成分が含まれ、葉を乾燥させたものをローリエテンプレート:Lang-fr)、ローレル(テンプレート:Lang-en)、ベイリーフ(テンプレート:Lang-en[30]などと呼び、肉料理などで使われる香辛料として広く流通しているテンプレート:Sfnカレーシチューなどの煮込み料理に、好みの応じて1 - 3枚ほどのローリエ(ローレル)が使われるテンプレート:Sfn

浴湯料として月桂葉を布袋に入れて風呂に浮かべておくと、肩こり神経痛リウマチ冷え症腰痛筋肉痛などの痛みを和らげたり、疲労回復に役立つテンプレート:Sfn。果実は健胃剤につかわれるテンプレート:Sfn。民間では、実を日本薬局方アルコールやローションに1週間ほど浸した液が、頭髪の発毛・育毛剤として利用できるテンプレート:Sfn

ゲッケイジュ葉には強いアルコール吸収抑制活性が認められる。その活性本体は、α-メチレン-γ-ブチロラクトン構造を有するコスチュノリド (costunolide) などのサポニンであるセスキテルペン類であり、その作用機序として、胃液分泌の亢進や胃排出能抑制作用などが関与している[31]

2001年、カゴメ株式会社総合研究所は、月桂樹の中に血管を拡張する作用を示す物質が含まれていることを明らかにした。なお、人体への効果については検証されていないという情報もある[32]

果実を搾って得られるローレルオイルは主に石鹸の原料として使われ、ニキビ・フケ・体臭等を抑える効果が謳われている[33]

栽培[編集]

水はけの良い土を選び、日なたから半日陰地で育てるテンプレート:Sfn。土質は全般で、適度に湿度を持たせた土地に根を深く張るテンプレート:Sfn。植栽適期は、4月下旬 - 5月、6月下旬 - 7月とされるテンプレート:Sfn。生長は早く、剪定期は3月 - 4月上旬か7月下旬 - 8月上旬とされテンプレート:Sfn、庭などの日当たり良い場所に植栽すると枝葉を伸ばすため、年に2 - 3回ほど刈り込むテンプレート:Sfn。施肥は1 - 2月に行うテンプレート:Sfn。ゲッケイジュは風通しが悪いと虫がつきやすくなるため、風通しの良いところに植えるようにするテンプレート:Sfn

文化[編集]

ゲッケイジュは、ギリシャ神話アポロンダフネ(ダプネー)の物語に由来し、美しい娘ダフネはアポロンの求愛を拒み、逃れようとして川の神である父親に変身を頼んで、ついには月桂樹に変えられたというテンプレート:Sfn[34]。これにちなみ、ダフネという呼称は古代ギリシアではゲッケイジュのことを指していたが、現在では同じ芳香のあるジンチョウゲ属の学名に採用されているテンプレート:Sfn

葉冠[編集]

ギリシャやローマ時代からアポロンの聖樹として神聖視された樹木である。古代にはピュティア競技祭など特定の競技会で優勝者に月桂樹やセロリなどで作られた葉冠が授与されており「神聖競技会」として特別視されており、賞金や高価な品物が授与される賞金競技会とは区別されていた[34]。古代ギリシアでは葉のついた若枝を編んで「月桂冠」とし、勝利と栄光のシンボルとして勝者や優秀な者達、そして大詩人の頭に被せたテンプレート:Sfn。古代の四大競技祭のうち月桂冠が授与されていたのはデルフォイで行われたピュティア競技祭である[34]。古代オリンピックではオリーブの葉冠が授与された[34]。オリーブの木の幹で作られた葉冠には月桂樹の小枝を飾りに付けたものもある[34]

また月桂冠を得た詩人は桂冠詩人と呼ばれるテンプレート:Sfn

ゲッケイジュを由来とする名称[編集]

脚注[編集]

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参考文献[編集]

外部リンク[編集]

参照[編集]

  1. 辻井達一, 2006, p63
  2. 平野隆久監修 永岡書店編, 1997, p22
  3. 辻井達一, 2006, p64
  4. Linnaeus Carolus, 1753, Species Plantarum, Holmia[Stockholm], Laurentius Salvius, page369, https://www.biodiversitylibrary.org/page/358388
  5. 辻井達一, 2006, p64
  6. 山﨑誠子, 2019, p48
  7. Useful Tropical Plants Database 2014
  8. 田中孝治, 1995, p144
  9. 正木覚, 2012, p58
  10. 田中孝治, 1995, p144
  11. 辻井達一, 2006, p63
  12. 辻井達一, 2006, p64
  13. 辻井達一, 2006, p64
  14. 平野隆久監修 永岡書店編, 1997, p22
  15. 辻井達一, 2006, p64
  16. 正木覚, 2012, p58
  17. 山﨑誠子, 2019, p48
  18. 正木覚, 2012, p58
  19. 正木覚, 2012, p59
  20. 田中孝治, 1995, p144
  21. 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文, 2014, 235
  22. 平野隆久監修 永岡書店編, 1997, p22
  23. 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文, 2014, p235
  24. 平野隆久監修 永岡書店編, 1997, p22
  25. 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文, 2014, p235
  26. 平野隆久監修 永岡書店編, 1997, p22
  27. 平野隆久監修 永岡書店編, 1997, p22
  28. 山﨑誠子, 2019, p48
  29. 山﨑誠子, 2019, p48
  30. 「ベイリーフ」はシナニッケイの葉に対しても使われる言葉である。
  31. 吉川雅之、薬用食物の糖尿病予防成分 『化学と生物』 2002年 40巻 3号 p.172-178, テンプレート:Doi
  32. テンプレート:Wikiref
  33. アレッポの石鹸」HPより、石鹸の原料
  34. 34.0 34.1 34.2 34.3 34.4 アテネオリンピック 2004の文化的側面.{{{date}}} - via {{{via}}}.