ヴァーユ

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ヴァーユ(वायु, Vāyu、ワーユとも)はインド神話における風の神[1][2]。その名は「風」の意[1]。アニラ(Anila、「風」の意)[1]、マルト(Marut、「風」の意)[1]、ガンダヴァハ(Gandhavaha、「香を運ぶ者」の意)[1]、パヴァナ、プラーナとも呼ばれる。

解説[編集]

『リグ・ヴェーダ』の「プルシャの歌」(X・90・13)によれば、ヴァーユは原人プルシャの生気(プラーナ)から生まれたという[3][4][5]。その速さはしばしば駿馬と比喩される。ヴァーユが乗るのは2頭の赤毛の馬が牽く乗る車で、その車には御者としてインドラ神も乗ることがあるという[2][4]

ヴァーユはインドラ神と密接に結びつき、インドラに並ぶ神だとされている[2]。三界(天・空・地)のうち、空界をインドラとともに占める。『リグ・ヴェーダ』にはヴァーユの他にもヴァータという風神が登場しているが、ヴァーユのほうがより擬人化が進み、讃歌の数も多い。イランにおける風神ワーユにあたる[6]。『マハーバーラタ』の英雄ビーマや、『ラーマーヤナ』の猿将ハヌマーンはヴァーユの息子とされる[7]

時代が下ると、インドラら他の神々と共に8つの方角に配され、ヴァーユは北西の守護神となった[2][8]。また、ヴァータと共に[2]仏教に取り入れられて風天となった[1][2]。ゾロアスター教においては、ワーユはインドラと共にダエーワ(悪魔)とみなされた[9]

また、ヴァーユはインド哲学の五大要素(パンチャマハーブータ)の一つであり、その意味は「風」、「空気」あるいは「気」である。

ヴァーユに由来する名称[編集]

  • かつて東日本フェリーおよび津軽海峡フェリーが所有していたフェリー『ばあゆ』の名称はこの神の名に由来する。
  • マルチ・ウドヨグ→マルチ・スズキ・インディア - この神の名(マールティ)を、自動車が軽快なスピードで颯爽と走るイメージを意識してつけた。

参考文献[編集]

  • Wikipedia:ヴァーユ(最終閲覧日:24-12-30)
    • 稲葉義明ほか, 山北篤監修, 西洋神名事典, 新紀元社, Truth In Fantasy事典シリーズ 4, 1999-11, isbn:978-4-88317-342-6
    • 沖田瑞穂, 松村一男他, 神の文化史事典, 白水社, 2013-02, ヴァーユ, p100-101, isbn:978-4-560-08265-2
    • 蔡丈夫, インド曼陀羅大陸 - 神々/魔族/半神/精霊, 新紀元社, Truth In Fantasy 11, 1991-12, isbn:978-4-88317-208-5
    • 菅沼晃, インド神話伝説辞典, 東京堂出版, 1985-03, ヴァーユ, p66-68, isbn:978-4-490-10191-1
    • 辻直四郎, リグ・ヴェーダの讃歌, ヴェーダ アヴェスター, 訳者代表 辻直四郎, 筑摩書房, 世界古典文学全集 第3巻, 1967-01, p310, 全国書誌番号:55004966, NCID:BN01895536

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. 1.0 1.1 1.2 1.3 1.4 1.5 『インド曼陀羅大陸』 131、244頁。
  2. 2.0 2.1 2.2 2.3 2.4 2.5 『神の文化史事典』 100頁。
  3. 『神の文化史事典』 100-101頁。
  4. 4.0 4.1 『インド神話伝説辞典』 66頁。
  5. 「リグ・ヴェーダの讃歌」102頁。(プルシャ(原人)の歌(10・90))"...生気より風生じたり。"
  6. 『西洋神名事典』258頁。
  7. 『神の文化史事典』 101頁。
  8. 『インド神話伝説辞典』 67頁。
  9. ミルチャ・エリアーデ, 松村一男訳, 世界宗教史2 - 石器時代からエレウシスの密儀まで(下), 筑摩書房, ちくま学芸文庫, date:2000-04 , isbn:978-4-480-08562-7, 第13章 105 アケメネス朝の宗教, 213頁