ペタソス帽

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テッサリア
ペタソス帽
メルクリウスの帽子

ペタソス帽(ギリシア語: πέτασος)は、古代ギリシア人がしばしばマントの一種であるクラミスと組み合わせて着用していた、テッサリア起源の日除け帽である。この帽子には幅が広くて柔らかいつばが付いており、通常フェルト、革、わらで作られた。これは主に農民と旅行者が被る帽子で、農業従事者といった田舎の人が被る帽子だと考えられていた。特に「翼のついた帽子」としてギリシア神話の伝令神ヘルメースローマ神話メルクリウスに相当する)の象徴ともされていた。

アテネの騎兵隊が着用していた金属製兜のある種類は「ペタソス帽」の形で作られた。そのうちのいくつかはつばの外縁に穴が開けられており、おそらく布の覆いを取り付けたものと思われる。この帽子のことは浮き彫りや花瓶の絵によって知られており、少なくともアテネの墓から発見された考古学的な1例からも知ることができる。[1]

ギャラリー

私的解説

テッサリアギリシャの穀倉地帯であり、紀元前2500年頃の新石器時代の遺跡が発見され、古くから人が居住していた地域である。ペタソス帽は古代においてこの地方の農民が被る帽子で、現代の日本で考えるといわゆる「麦わら帽子」というイメージが当てはまる帽子なのだと思われる(但し材料はわらだけではなかったようである)。紀元前480~470年頃に製作された壷に描かれたヘルメース神はこの帽子を被っており、古い時代においてテッサリア地方の神で、かつ「農業」に関連する神であったことが示唆される。
ギリシア神話が形成される過程で、ゼウスの息子にして、伝令神としての地位を与えられたヘルメースはやがて「翼の生えたペタソス帽」を被る姿で描かれるようになり、その姿で空を飛ぶと考えられていたようである。そして、それがローマ神話メルクリウスへと引き継がれたのであろう。紀元前215~211年のコインに描かれたメルクリウスはこの帽子を着用している。
また、ヘルメース(Hermes)が太陽神であるのか、月神であるのかという点であるが、名前に「m」が入る点、「農業」の豊穣に関する点からみて、本来は古代エジプトにおける「ミン神」に近い神ではなかったかと思う。要するに、月神ではなかったのではないだろうか。

References

  1. Nicholas Sekunda(ニコラス・セクンダ)、The Ancient Greeks(古代ギリシャ) (Osprey Publishing, 1986, 2005), p. 19.