あとは、最近親が「指輪物語」を読んでいるらしい。で、「何を意味するのか」と言われてちょっと困る。それは、今のロシアとウクライナが「何を意味するのか」と聞かれても困る、というのと同じことで、自分で目の当たりにして気がつけないことをどうやって教えろと?? とちょっとそんな気がするわけで-;。サウロンのことを単純に「魔王」とか「悪魔」と言うならそれでも良いわけですが、ともかく、「自分では表には出てこないで、部下になんでもやらせる」とは言っておいた。で、部下はいくらでも作れるから、いくらいなくなっても、サウロンの権力というか魔力が続く限りは問題ない。部下の頂点はかつて人間だった「幽鬼の王」である。まあ、神話的には「死んで冥界の王」になった者、というかそんな感じである。生きていて、学生だった時があれば見苦しく主席になることばっかり考えていたかどうかは知らない-;。
で、味方の筆頭のガンダルフ。賢く、優れた年降りた魔法使いであって、主人公のホビットから見れば、年齢がいくつであるのかも検討がつかない。北欧神話を知っていれば、「杖を持った賢い老人」というのは主神のオーディン、巨人のユミルを退治したオーディン、の姿が投影されていることは知っている人には分かる。たぶん、「巨人(河伯)を倒していて」、おそらく6000年くらい生きているのがガンダルフなんだと思う。というか、ここまで書いて、誰のことなのか分からなければ、実際にその人にあっても、誰のことなのか分からないと思う-;。
で、頼もしい守護者であるアラゴルン。かつて存在した大国の王の末裔で、この王国は北と南に分裂して、北の方は滅びてしまった。なので、アラゴルンは亡国の王子である。国は無くなっても、王としての義務は忘れず、かつての領地を見回ったり、警備をしたりしている。というか「北と南」に分裂してしまって、北の方の関係者が、世界史の上からは行方不明なのは、「どこの国のこと」なのか、やっぱりかなりあからさまだと思うので、これも「長州と武藤と小峠の出雲大社詣で」とか見てても何のことなのか分からなきゃ、わかんないままですよ、ってそんな感じである-;。キリスト教圏の人なら「北と南」って言っただけで一発で分かるネタな気がするわけですが-;。
ということで、サウロンとその一党が「何を意味するか」というよりも、ざっくりと彼らの性質、乱暴狼藉を平気で働くし、汚いし、汚い物が好きだし、絶えず世界を見張っているし、権力を常に欲している、という性質を理解して貰えれば、それが「指輪」の意義なんじゃないのか、と思うわけですが。そうすれば、今のロシアが何であって、ウクライナが何であるのかが分かるかも、とそれだけのことである。
例えば、太古からの「お約束」として、「神を再生させるには生贄が必要」とされる。あらゆる神話にそういう意味が書かれている。「指輪物語」でも、勝利に至るまでに多くの人々の血が流され、命が失われる。再生されるのが「世界」であるならば、救いようがあるけれども、「神」を再生させるために他の人が死なねばならぬ理由なんてあるの、そもそも自分で自分の始末もつけられない者を神と呼ぶ価値などあるの?、と思う。「指輪物語」には、トム・ボンバディルといって、強い魔力を持っているけれども、自分の領域から出ることを望まず、生贄も求めず、自らの魔力が自然に朽ちていくままで、それで良い、と思っている者も登場する。太古の「神」とは、そのようなものであって良いのではないのか、と思うわけですが。
でも、そう思うと、「映画版の指輪物語で、トム・ボンバディルが登場しないのは何故ですか。それは、そのようであってはならない、という強いメッセージなんじゃないの?」と言われる気がするわけで-;。だから、自分のやるべき事をやり続けるしかないわけです。穴掘りと、お裁縫その他である。現実とはこのようなもので、人の真剣な真心も何もかもが、恐ろしいものであり、なにげない「やるべき事」をやり続けるために、どれだけ多くの犠牲が払われているのか、それを理解することが「指輪物語」の真の意味でもあると思う。アラゴルンとその仲間達は、ホビット庄を含めて、平和を守るために、密かにホビット達の警護を続け、時に命を賭けて犠牲を払い、その事をホビット達にいちいち告げないし、恩を着せることもない。誰も私達にいちいち告げたりしないし、恩を着せたりもしない。でも、色々なものを見て、誰が密かに私達の警護を続け、今この瞬間に命を賭けて犠牲を払っているのか理解できねば、私達は「ホビット庄の中しか知らないホビット」だし、「井戸の中しか知らない蛙」だって、それが「指輪物語」の意味だってことです。読んで、こうしなきゃいけない、とかああしろとかどうしろ、とかそういうころではない。ただ、理解せねばならない、とそういうことです。雄々しい雄牛の子らに栄光あれ、神よ彼らを救い給え、と一番言いたいのはこの私なのです。