ということで、最初の職場でPhotoshopの使い方を覚えました。そして、その職場は結構な「ブラック職場」でした。どこが一番駄目だったかというと上司が一番駄目でした。仕事の内容に関しては、「教科書を読んで、標本をたくさん眺めればできるようになる。」と言って、ほとんど何も教えてくれませんでした。そして、部内の人間関係が悪くなるようなことばかり画策してた人でした。
例えば、部下にAさん、Bさん、Cさんといたとします。Cさんはいわゆる「上司の腰ぎんちゃく」です。例えば、上司の私設秘書だから何でも上司の意向のとおりにする、とか、上司が部長だとするとCさんはその下の課長で、将来上司が更に出世したら一緒に出世させてもらいたいから上司に盲目的に従っている、とかそういう立場の人です。
上司はこっそりBさんに「Aさんは駄目だなー。」みたいな悪口を言うのです。業務上、Aさんによろしくないと思う点があるのなら上司が直接注意すべきです。ともかくそうすると、BさんはAさんによくない感情を持つかもしれません。「仕事のできない人だ。」とか「仕事を真面目にやらない人だ。」と思うようになるかも。
そして、その一方でCさんからAさんに「Bさんは駄目だなー。」と悪口を言わせるのです。そうしたら、Aさんは逆にBさんのことを「仕事のできない人だ。」とか「仕事を真面目にやらない人だ。」と思うようになるかもしれません。
こうしてAさんとBさんは互いによくない感情を持つようになるかもしれません。そして、AさんはCさんから話を聞いているから、元の悪口の出所が上司だとは知りません。だから、AさんとBさんが互いに話を付き合わせて、どちらの悪口も上司が言いふらしている、ということに気がつきにくいのです。
そして、部内で仕事が円滑にいかなくなったりすると、それがAさんかBさんのせいにされるようになったりします。そうすると、個人的な二人の仲だけではなく、部内全体で二人が悪者にされて、浮いた存在みたいになってしまいます。上司というのは、そうやって部内の雰囲気を悪くするのではなく、全体に仕事が旨く回るように調整するのが仕事なんじゃないの? と思う。
でも、ある時、「こういうことは誰かを悪者にするために、わざとやってるんだなー。最初から部内の仕事が旨く回るようにする気なんかない上司なんだ。」と気が付いたわけです。
私もまだ若かったので、わりとあっさり「こんなとこもういいや。」と思いました。私もかなりこのようなパワハラの標的にされていたように思いますし、今から思えば飲み会の席で体を触られたりとか、「個人的に、私から上司を食事に誘え」とほのめかされたりとか、セクハラも受けていたように思います。
上司も良くないけど、上司に美味しい思いをさせて貰いたくて、仲間を陥れるようなCさんみたいな人もけっこういた職場でした。というよりもそういう人しかいないし、居ることができない職場だったのかもしれない、と思います。とても耐えられなかったし、「気の合う人達だけで仲良くしてれば?」と思ったので、私は辞めることにしました。内容の軽重を問わず、上司の非道徳的な行動を見て見ぬふりをする、を超えて部下が協力する、という構図はもしかしたら、どこの職場でもあるのかもしれない、と思います。でも、世間で一般的にはパワハラ、セクハラというと、まだまだ個人対個人の問題で片付けられてしまうように思います。職場そのものに責任を問えば「管理の責任」ということになって、やはり「協力した人たち」の責任を直接に追及する傾向は少ないと感じます。でも、パワハラやセクハラといった問題についても、刑法でいう「共犯」といえるような責任をもっと追及すべきだし、追求できる世の中にならないかなあ、と思います。純粋に「上司と部下」とか「先輩と後輩」とか「特定の同僚AさんとBさんの関係」とか、個人対個人の関係で成立し得る職場でのハラスメントって少ないと思うのです。職場というのは、一人でやる仕事でない限り、どこでも大抵は複数の人が関わって一つの仕事をするもので、そんなに閉鎖的に「2人だけでやる仕事」って少ないと思うのです。
辞めると決めて、上司にも辞職の意思を伝えたら、その後、正式な話の場ではなく、わざわざ自宅に個人的な風を装って上司から電話があり、「僕に黙ってどこかへ行っちゃわないでね。」と言われました。仕事を辞めてしまえば、上司でも部下でもないので、そんななれなれしい口のききかたをされる覚えはありません。しかも、働いている時も、そんなに仲が良かったわけではなく、冷遇されていて、最低限仕事に必要な話をする以外は、親しく話をしたことなどない上司でした。後輩たちは何人かまとめて個人的に食事に誘ってもらって、お寿司をおごってもらったりしていたのに、私には一言も声をかけてくれなかったとか、そういう間柄だったのです。その上、パワハラ・セクハラ的なことだけはあれこれあった上司ですから、異性としては当然のこと、人間としても関わりを持ちたくない相手から、このそれまでにない「なれなれしい口調」で動向を探られたのが私にとってとどめになり、本当に気持ち悪くて関わりたくない、と感じてしまったのです。元の職場の上司として、その後の部下の動向を把握しておきたいというのなら、「次の仕事や学校が決まったら、部に一言連絡を入れておくように。」とでも職場で言えば良い話ではないですか。なんで個人的に元上司の他人にあれこれ言わなければならないのでしょうか。しばらく、これがトラウマになって電話に出られなくなり、家の電話線を抜いて生活していました。まだスマホどころか携帯もない時代だったので、電話といえば当然「固定電話」の時代のことでした。
仕事を辞めて、次の仕事がないと困ります。当時、Mac関連のコンピューター雑誌で、「DTP」という言葉が流行っていました。どうやら、その業界ではPotoshopとIllutratorというソフトを使うらしいです。Photoshopなら使えます。そこで、Illustratorを買って勉強することにしました。Ver7の時代でした。
結果、とある印刷会社でDTPオペレーターとして働くことになったのです。そうしてデザイン的なことを学んでいくうちに、フォントというものが好きになりました。その後は、DTPオペレーターの仕事を辞めて、また医者を少しやったりしました。そこもとてもひどいところで、最近話題の不機嫌ハラスメントを上司から受けて、仕事も教えてもらえなかったり、「辞めて最初の職場へ戻れ。」と組織的に言われたりして働いていられませんでした。また個人的にも、都会から田舎へ戻ったりとかしました。最近ではスマホを使う人が多いですが、私が若い頃はまだスマホがなくて、インターネットを利用するにはパソコンが主流でした。パソコンがないと生活できないくらい。そこで、デザインの仕事を離れてもパソコンは使い続けていましたし、そのうちにフリーフォントで素敵なフォントをみつけるようになったり、一太郎を買うとお手軽な値段で有料フォントが手に入るようになったり、フォントが好きすぎて自前でモリサワの有料フォントを買ったりして、フォントを集めていきました。そして今の私がいます。
とても若い頃にパワハラとセクハラがなかったら、普通の生活と医者の仕事で忙しくて、こんなにフォントが好きにはならなかったかもしれない、という昔話でした。(251201)