:丹後の国に浦島という者がおり、その息子で、浦島太郎という、年の頃24、5の男がいた。太郎は漁師をして両親を養っていたが、ある日「ゑじまが磯」というところで亀を釣りあげ、「亀は万年と言うのにここで殺してしまうのはかわいそうだ。恩を忘れるなよ」と逃がしてやった。数日後、一人の女人が舟で浜に辿り着き、漂着したと称して、なんとか本国に連れ帰してくれと請願する。実はこれは逃がしてもらった亀の化身であった<ref>素性はここでは明かさず、浦島が去ろうとするときに初めて明かす。</ref>。二人が舟で龍宮城に到着すると、女性は太郎と夫婦になろうと言い出す。龍宮城は、東西南北の戸を開けると四季の草木と眺めがみえるように作られていた。ここで共に三年暮す頃、太郎は残してきた両親が心配になり帰りたいと申し出た。姫は自分が助けられた亀であったことを明かし、開けることを禁じたうえで「かたみの筥(はこ)」(または「箱」、挿入歌では「玉手箱あけて悔しき」と詠まれる<ref>「いつくしき筥」とも。</ref>)を手渡した。太郎は元の浜に着き、老人に浦島(太郎の父)の行方を尋ねるが、それは七百年も昔の人で、近くにある古い塚がその墓だと教えられる。龍宮城の三年の間に、地上では七百年もの年月が経っていたのであった。絶望した太郎が箱を開けると、三筋の紫の雲が立ち昇り、太郎はたちまち老人になった。太郎は鶴になり蓬萊山へ向かって飛び去った。同時に乙姫も亀になって蓬莱山へ向かった。丹後では太郎と乙姫は夫婦の明神となって祀られた<ref name="bunko-yomikudashi">蘆屋, 1936, p1888-191: 御伽草子の「浦島太郎」の読み下し</ref>。
<!--=== 「鶴亀」バージョン ===--><!--「御伽文庫」にも鶴亀の変身、と"夫婦の[[明神]]となり給ふ夫婦の明神となり給ふ"の文句はあるのでバージョン替えとするのは誤解をまねく。-->一説に、ここから「亀は万年の齢を経、鶴は千代をや重ぬらん」と謡う[[能楽]]『[[鶴亀]]』などに受け継がれ、さらに、鶴亀を[[縁起物]]とする習俗がひろがったとする{{要出典|date=2017年9月}}。一説に、ここから「亀は万年の齢を経、鶴は千代をや重ぬらん」と謡う能楽『鶴亀』などに受け継がれ、さらに、鶴亀を縁起物とする習俗がひろがったとする(要出典:2017年9月)。
『[[御伽草子]]』では『御伽草子』では[[龍宮|竜宮城]]は海中ではなく、島か大陸にあるように描写され、絵巻や絵本の挿絵もそうなっている。春の庭、夏の庭、秋の庭、冬の庭の話はメインストーリーの付け足し程度に書かれている。
=== 異本と系統 ===
[[File:Urashima Taro handscroll from Bodleian Library 1.jpg|thumbnail|300px|亀を助ける浦島太郎。{{right|{{small|―オックスフォード大学ボドリアン図書館所蔵の絵巻より、16世紀末~17世紀初。}}}}]]浦島太郎の御伽草子の諸本は、実際には50種以上存在する。それらをテキストの類似性で分類すると、おおよそ4つの系統に分かれる{{sfnp|<ref>林|, 2011|p=4}}{{sfnp|, p4</ref><ref>林|, 2013|p=5}}, p5</ref>。御伽文庫は、IV類系統に該当する{{sfnp|<ref>林|, 2011|pp=20, p20, 30}}</ref>。
=== 近代版に近い系統 ===