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5,072 バイト追加 、 2024年12月7日 (土) 23:47
アプロディーテーはアドーニスの死を、大変に悲しんだ。やがてアドーニスの流した血から、アネモネの花が咲いたという。
 
=== アネモネについて ===
語源はギリシア語で「'''風'''」を意味する Άνεμος (anemos) から。ギリシア神話中に、美少年アドニースが流した血よりこの植物が産まれたとする伝説があり、稀にアドニスと呼ぶこともある。なお、adonisはフクジュソウ属の学名である。
 
アネモネには「プロトアネモニン」という有毒成分が花だけでなく全草、汁液にも含まれている。茎を折ったときに出る汁に触れると皮膚炎・水泡を引き起こすことがあるので、園芸時には注意が必要である。古代エジプトではアネモネは有毒植物であることから「'''病気の印'''」とされていた<ref>[https://tokyo-kotobukien.jp/blogs/magazine/71487 アネモネには毒がある?!毒性から安全に管理する方法まで]、東京寿園(最終閲覧日:24-12-07)</ref>。
== アドーニスの園 ==
<blockquote>古代ギリシャでは, アテネでアドニス祝祭が女性により壮厳に行なわれた。それが, いまもギリシャの所々でアドニス・ガーデンの風習として生き続け, とくにセェレェー村では復活祭にこの行事が盛んである。文献によればアドニス祝祭は紀元前5世記に遡る。美男アドニス神の若い逝去を悼んで, 若い女性らが, こわれたエムプラ (ギリシャの壺) を逆にして, なかに土を埋め草花を栽培した。草花の枯死はアドニス神の死と復活を象徴するもので, 植物の再生と成長を促進する呪術的な行為とされた。とくに注目すべきことは, こわれたエムプラの残りを逆さにして, それを鉢として使用した点である。この風習はギリシャ人の生活に深くしみ込み, 形こそ変わったが, いまでもいたるところでアドニス・ガーデンがみられるし, ポット・ガーデンのオリジンとみることもできる。なおアドニス・ガーデンは豪華な造園ではなく, 庶民の情緒的な小庭園であるところに, 大きな意味があると思われる。([https://cir.nii.ac.jp/crid/1410009221410957568 アドニス園について]、金 龍沫、1979(最終閲覧日:24-12-07))</blockquote>
 
== 私的解説 ==
=== 禁忌破りの婚姻について ===
アドーニスは、両親の「禁忌の結婚」から誕生したことが分かる。これは近親婚という禁忌でもあるし、神話的な「見るな」の禁忌でもある。父親のキニュラースは、妻を追いかけて殺そうとするので[[祝融型神]]、母親のミュラーは[[吊された女神]]と考える。父親が母親を追いかけるところに[[伏羲]]・[[女媧]]型神話の名残が見える。ミュラーはミルラの木に変化するので、これは結局彼女の死を意味すると考える。
 
=== アドーニスの誕生 ===
ミルラの木に、イノシシがぶつかってアドーニスが生まれる。この場合、ミルラの木はやはり[[吊された女神]]だし、イノシシが[[祝融型神]]といえる。イノシシは'''キニュラースの別の姿'''ともいえるのではないだろうか。
 
=== アドニースの成長 ===
アドニースには二人の養母が存在する。アプロディーテーとペルセポネーである。そしてアドニースは[[祝融型神]]の生まれ変わりで、疫神でもあった。アプロディーテーは不死の女神なのだがアドニースを箱に入れて、封印したように思える。これはアドニースの疫神としての性質を抑えるためのものだったのではないだろうか。
 
っして、冥界の女神ペルセポネーはなるべくアドニースを冥界にとどめておこうとするのだから、アプロディーテーとペルセポネーは、共同して
 
* 疫神を冥界に封印する。
 
ということを志しており、いずれも「[[養母としての女神]]」といえると考える。しかし成長したアドーニスはなるべく地上で生活することを望む。しかも狩を好む。疫神の狩とは、「'''病気を流行らせて人の命を狩る'''」ということなのではないだろうか。
 
=== アドニースの死 ===
アドニースは狩の最中にアレースが化けたイノシシに襲われて死ぬ。女神たちだけでアドニースの力を制御できなくなったのであれば、アレースの力でアドニースを強制的に冥界に送り返すしかなくなったのだろう。この物語でのアレースは、疫神と戦う[[黄帝型神]]である。
 
アドニースの「死」の象徴であるアネモネは、有毒植物で、古代エジプトでは「'''病気の印'''」と考えられていたとのことだ。まさに疫神であるアドニースの死後の姿に相応しい花なのではないだろうか。草花を育てて、盛夏にあえてこれを枯死させてしまうのは、'''花が象徴している疫神を冥界に追い払う'''という、'''厄払いの儀式の一種'''なのではないだろうか。
 
=== まとめ ===
物語の前半、ミュラーとキニュラースの禁忌婚からアドニースの誕生までは、キニュラースの生まれ変わり譚であると考える。後半部分のアドニースの成長から死の部分までは、疫神払いの物語である。アドニースの園の祭祀は、日本でいうところの「夏越の祓」の本来の「穢れを払う」という意味に近いものと類似しているのではないだろうか。(現在の日本の「夏越の祓」は疫神である[[須佐之男命]]に「自分だけは病を免れさせてください」とお願いするものだから、むしろ自分勝手な'''鬼信仰'''といえる気がするのだが。)
 
アドニースの神話は、[[ミャオ族]]の伝承では[[チャンヤン]]の神話に類似している部分があるのだが、名前はむしろ[[ダロン]]に近い名なのではないか、と考える。
== 参考文献 ==
** マルタン, ルネ監修、松村一男訳, 1997-07, 図説ギリシア・ローマ神話文化事典, 原書房, 978-4-562-02963-1
** コッテル, アーサー, アーサー・コットレル, 左近司祥子、宮元啓一、瀬戸井厚子、伊藤克巳、山口拓夢、左近司彩子訳, 世界神話辞典, 1993-09, 柏書房, 978-4-7601-0922-7
* Wikipedia:[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%8D%E3%83%A2%E3%83%8D アネモネ](最終閲覧日:24-12-07)
== 関連項目 ==
* [[チャンヤン]]:アドニースの物語の前半部分は[[チャンヤン]]の誕生譚と類似している。
== 脚注 ==
{{デフォルトソート:あとにす}}
[[Category:ギリシア神話]]
[[Category:祝融型神]]
[[Category:風神]]
[[Category:人身御供]]
[[Category:陰]]

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