=== 菊姫物語 ===
主人公の娘とその家族全員が「非業の死」を遂げて「そして誰もいなくなった」という状態になるのは「おかねの恩返し」と同じである。「おかねの恩返し」では、龍女自身は池の中に帰るだけで「死んだ」とはされていないが、菊姫物語では姫自身が自殺してしまう。その首をわざわざ切り落として完全に「死んだ」ことにしてしまっている点は、古代よりも時代が下った中世~戦国の説話の方が、話の内容が人道的になるどころか、陰惨さを増している。姫の夫は入水自殺しないが、かわりに家来の掃部介が入水している。「掃部」という言葉は「清掃する人」という意味もあると思うが、こちらがいわば「清い人」であって、無体に攻めてくる「秋月家」と「島津家」が「汚い人」という意味も暗にあるのではないか、と思う。
秋月氏は実際に久留米にいた武家である。北九州には古賀という名前もみられ、何らかの歴史的事件を投影してもいる伝承かもしれないが、詳しくは不明である。
== 参考文献 ==