5.妹は人類を増やすために結婚しようと兄を説得した。兄は近親結婚を行ったら雷の怒りを買うのではないか、と恐れたが、天にいるアペが結婚を許した。雷はアペに追い回され、もう子供達に罰を与える力は残っていなかったのだ。アペは息子に「石臼のような子が生まれたら切り刻んで四方にまくように。」と言った。
6.結婚後、妻は石臼のような子を一つ産み落とした。石片をあちこちにまくと人間になった。落下した場所の名をとって彼らの名とした。最後の一切れは薬草になった。ミャオ人は兄妹をしのんで秋におまつりをし、子供のいない夫婦は先祖のバロンとダロンに子宝を願うようになった。<ref>袁珂『中国の神話・伝説 上』青土社、1993年、110-115頁</ref>。
== 私的解説 == [[伏羲]]・[[女媧]]の父が雷公をとじこめていたが、兄妹であった子供たちがそれを解放してしまう。父は鉄船を作って洪水に備えた。洪水が起きると父の乗った船は水に浮き、天に届いた。父が天門を叩くと、天神はこれを恐れ、水神に水を引かせるよう命じた。水があっという間に引いたので、鉄船は天から転げ落ちた。父親は鉄船と共に粉々になって死んだ。 2.その頃は天門がいつも開いていたので、兄妹は天梯を昇ったり下りたりして天庭に遊びに行っていた。二人が大人になると兄は妹と結婚しようと考えた。二人は大木の周りを回って追いかけっこをし、兄が妹に追いついたら結婚することにした。妹は素早くて捕まえることができなかったが、兄は計略を使って妹を捕まえ結婚した。 3.結婚後、妻は肉の塊を一つ産み落とした。夫婦は奇妙に思い、肉の塊を切り刻んで天庭に持って行こうとした。途中で強風により紙の包みが敗れ、切り刻んだ肉片があちこちに飛び散り、大地に落下するといずれも人間になった。落下した場所の名をとって彼らの名とした。こうして人類はよみがえった<ref>袁珂『中国の神話・伝説 上』青土社、1993年、110-115頁</ref>。袁珂子が採用したヤオ族の伝承と比較すれば、似ているけれども、'''全然違う主旨の話'''、といえる。分かりやすいところから述べれば、「'''女性の方から求婚が行われている'''」ので、こちらの方が女性の地位が高かった'''母系の時代の文化を残している'''古い形式の神話と言える。ともかく、血なまぐさくて残虐なディオニューソス式祭祀の匂いがプンプンする伝承よりも、こちらの方が原型に近いし、よっぽど素朴で感じが良い、と個人的には思う。
== 関連項目 ==