宇宙の王となったゼウスは、すぐにその支配を脅かされることになる。ティターンはオリンポスの神々と戦い、「ギガントマキア」と呼ばれる戦いで、その力に挑戦してきた。ヘーシオドスによれば、ティターンはクロノスが父ウラヌスを去勢した際に地面に落ちた血の滴から生まれたガイアの子である<ref>Hard 2004, [https://books.google.com/books?id=r1Y3xZWVlnIC&pg=PA86 p. 86]; Hesiod, ''Theogony'' [http://data.perseus.org/citations/urn:cts:greekLit:tlg0020.tlg001.perseus-eng1:173-206 183–7].</ref>が、『神統記』には神々と巨人の戦いについての記述はない<ref>Hard 2004, [https://books.google.com/books?id=r1Y3xZWVlnIC&pg=PA86 p. 86]; Gantz, p. 446.</ref>。 『ギガントマキア』について最も完全な記述をしたのはアポロドーロスである。ガイアは、ゼウスが自分の子供である巨人を幽閉したことに怒り、ウーラヌスに巨人を産み落としたと言うのだ<ref>Gantz, p. 449; Hard 2004, [https://books.google.com/books?id=r1Y3xZWVlnIC&pg=PA90 p. 90]; Apollodorus, [http://data.perseus.org/citations/urn:cts:greekLit:tlg0548.tlg001.perseus-eng1:1.6.1 1.6.1].</ref>。巨人は神々だけでは倒せず、人間の力を借りなければ倒せないという予言が神々にもたらされる。これを聞いたガイアは、巨人を倒さない特別なファルマコン(薬草)を探すが、その薬草は巨人を倒してしまうことになる。しかし、ゼウスはエーオース(夜明け)、セレネー(月)、ヘーリオス(太陽)に光を止めるように命じ、自らすべての薬草を収穫し、アテーナーにヘーラークレースを召喚させる<ref>Hard 2004, [https://books.google.com/books?id=r1Y3xZWVlnIC&pg=PA89 p. 89]; Gantz, p. 449; Apollodorus, [http://data.perseus.org/citations/urn:cts:greekLit:tlg0548.tlg001.perseus-eng1:1.6.1 1.6.1].</ref><ref group="私注">ゼウスに太陽や月の動きを統括できる能力がある、と考えられていたことが分かる。</ref>。しかし、ゼウスはポルピュリオーンにヘーラーへの欲望を抱かせ、ポルピュリオーンはヘーラーを犯そうとしたところをゼウスに雷で打たれ、ヘーラークレースには矢で致命傷を負わされてしまう<ref>Hard 2004, [https://books.google.com/books?id=r1Y3xZWVlnIC&pg=PA89 p. 89]; Gantz, p. 449; Salowey, p. 236; Apollodorus, [http://data.perseus.org/citations/urn:cts:greekLit:tlg0548.tlg001.perseus-eng1:1.6.2 1.6.2]. Compare with Pindar, ''Pythian'' [http://data.perseus.org/citations/urn:cts:greekLit:tlg0033.tlg002.perseus-eng1:8 8.12–8], who instead says that Porphyrion is killed by an arrow from Apollo.</ref><ref group="私注">[[射日神話]]的な展開といえる。</ref>。
『神統記』では、ゼウスがティターン族を倒してタルタロスへ追放した後、彼の支配に巨大な蛇のような怪物テュポーンが挑戦し、宇宙の支配権をめぐってゼウスと争うことになる。ヘーシオドスによれば、テュポーンはガイアとタルタロスの子であり『神統記』では、ゼウスがティターン族を倒してタルタロスへ追放した後、彼の支配に巨大な蛇のような怪物テューポーンが挑戦し、宇宙の支配権をめぐってゼウスと争うことになる。ヘーシオドスによれば、テューポーンはガイアとタルタロスの子であり<ref>Ogden, [https://books.google.com/books?id=FQ2pAK9luwkC&pg=PA72 pp. 72–3]; Gantz, p. 48; Fontenrose, [https://books.google.com/books?id=wqeVv09Y6hIC&pg=PA71 p. 71]; Fowler, p. 27; Hesiod, ''Theogony'' [http://data.perseus.org/citations/urn:cts:greekLit:tlg0020.tlg001.perseus-eng1:820-852 820–2]. According to Ogden, Gaia "produced him in revenge against Zeus for his destruction of ... the Titans". Contrastingly, according to the ''Homeric Hymn to Apollo'' (3), [http://data.perseus.org/citations/urn:cts:greekLit:tlg0013.tlg003.perseus-eng1:305-348 305–55], ヘーラーは父親のいないテュポーンの母である。アテーナーを一人で産んだゼウスに腹を立てた彼女は、手で地面を叩き、ガイア、ウラヌス、ティターンにゼウスより強い子を授かるように祈り、その願いを受け、怪物テュポーンを産む。 ヘーラーは父親のいないテューポーンの母である。アテーナーを一人で産んだゼウスに腹を立てた彼女は、手で地面を叩き、ガイア、ウラヌス、ティターンにゼウスより強い子を授かるように祈り、その願いを受け、怪物テューポーンを産む。 (Fontenrose, [https://books.google.com/books?id=wqeVv09Y6hIC&pg=PA72 p. 72]; Gantz, p. 49; Hard 2004, [https://books.google.com/books?id=r1Y3xZWVlnIC&pg=PA84 p. 84]); cf. Stesichorus [https://www.loebclassics.com/view/stesichorus_i-fragments/1991/pb_LCL476.167.xml fr. 239 Campbell, pp. 166, 167] [= ''PMG'' 239 (Page, p. 125) = ''Etymologicum Magnum'' 772.49] (see Gantz, p. 49).</ref><ref group="私注">テュポーンとは中国神話のテューポーンとは中国神話の[[共工]]、[[相柳]]に相当する神であると考える。</ref>、100の蛇のような火を噴く頭を持っていると描写されている<ref>Gantz, p. 49; Hesiod, ''Theogony'' [http://data.perseus.org/citations/urn:cts:greekLit:tlg0020.tlg001.perseus-eng1:820-852 824–8].</ref>。ヘーシオドスは、ゼウスがこの怪物に気づいて素早く退治してくれなければ、「人間と不死人を支配するようになっていただろう」と言っている<ref>Fontenrose, [https://books.google.com/books?id=wqeVv09Y6hIC&pg=PA71 p. 71]; Hesiod, ''Theogony'' [http://data.perseus.org/citations/urn:cts:greekLit:tlg0020.tlg001.perseus-eng1:820-852 836–8].</ref>。2人は激動の戦いで出会い、ゼウスは雷で簡単に彼を倒し、怪物はタルタロスへ投げ落とされた<ref>Hesiod, ''Theogony'' [http://data.perseus.org/citations/urn:cts:greekLit:tlg0020.tlg001.perseus-eng1:820-852 839–68]. According to Fowler, [https://books.google.com/books?id=scd8AQAAQBAJ&pg=PA27 p. 27], the monster's easy defeat at the hands of Zeus is "in keeping with Hesiod's pervasive glorification of Zeus".</ref>。エピメニデスは、テュポーンがゼウスの宮殿に侵入したのはゼウスが眠っているときで、ゼウスが目を覚ますと雷で怪物を殺してしまうという別の説を紹介している。エピメニデスは、テューポーンがゼウスの宮殿に侵入したのはゼウスが眠っているときで、ゼウスが目を覚ますと雷で怪物を殺してしまうという別の説を紹介している<ref>Ogden, [https://books.google.com/books?id=FQ2pAK9luwkC&pg=PA74 p. 74]; Gantz, p. 49; Epimenides ''FGrHist'' 457 F8 [= [https://books.google.com/books?id=j0nRE4C2WBgC&pg=PA97 fr. 10 Fowler, p. 97] = [https://archive.org/details/diefragmenteder02diel/page/190/mode/2up?view=theater fr. 8 Diels, p. 191]].</ref>。アエスキルスやピンダルは、ヘーシオドスと似たような説明をしている。ゼウスは、テュポーンを雷で比較的簡単に倒してしまうのだ。アエスキルスやピンダルは、ヘーシオドスと似たような説明をしている。ゼウスは、テューポーンを雷で比較的簡単に倒してしまうのだ<ref>Fontenrose, [https://books.google.com/books?id=wqeVv09Y6hIC&pg=PA73 p. 73]; Aeschylus, ''Prometheus Bound'' [http://data.perseus.org/citations/urn:cts:greekLit:tlg0085.tlg003.perseus-eng1:343-378 356–64]; Pindar, ''Olympian'' [http://data.perseus.org/citations/urn:cts:greekLit:tlg0033.tlg002.perseus-eng1:8 8.16–7]; for a discussion of Aeschylus' and Pindar's accounts, see Gantz, p. 49.</ref>。これに対してアポロドーロスは、より複雑な物語を提供している<ref>Apollodorus, [http://data.perseus.org/citations/urn:cts:greekLit:tlg0548.tlg001.perseus-eng1:1.6.3 1.6.3].</ref>。テュポーンは、ヘーシオドス同様、ガイアとタルタロスの子供で、ゼウスが巨人を倒したときの怒りから生み出されたものである。テューポーンは、ヘーシオドス同様、ガイアとタルタロスの子供で、ゼウスが巨人を倒したときの怒りから生み出されたものである<ref>Gantz, p. 50; Fontenrose, [https://books.google.com/books?id=wqeVv09Y6hIC&pg=PA73 p. 73].</ref>。怪物は天を襲い、神々は恐怖のあまり動物に変身してエジプトに逃げ込むが、ゼウスだけは雷と鎌で怪物に襲いかかった<ref>Hard 2004, [https://books.google.com/books?id=r1Y3xZWVlnIC&pg=PA84 p. 84]; Fontenrose, [https://books.google.com/books?id=wqeVv09Y6hIC&pg=PA73 p. 73]; Gantz, p. 50.</ref>。テュポーンは傷つき、シリアのカシオス山に退却し、ゼウスは彼と格闘し、怪物に巻きつき、手足から筋を引き抜く隙を与えた。テューポーンは傷つき、シリアのカシオス山に退却し、ゼウスは彼と格闘し、怪物に巻きつき、手足から筋を引き抜く隙を与えた<ref>Hard 2004, [https://books.google.com/books?id=r1Y3xZWVlnIC&pg=PA84 p. 84]; Fontenrose, [https://books.google.com/books?id=wqeVv09Y6hIC&pg=PA73 p. 73].</ref>。傷ついたゼウスは、テュポーンによってキリキアのコリキア洞窟に連れて行かれ、そこで「女龍」デルフィーネに見張られた。傷ついたゼウスは、テューポーンによってキリキアのコリキア洞窟に連れて行かれ、そこで「女龍」デルピュネーに見張られた<ref>Fontenrose, [https://books.google.com/books?id=wqeVv09Y6hIC&pg=PA73 p. 73]; Ogden, [https://books.google.com/books?id=FQ2pAK9luwkC&pg=PA42 p. 42]; Hard 2004, [https://books.google.com/books?id=r1Y3xZWVlnIC&pg=PA84 p. 84].</ref>。。しかし、ヘルメースとエーギパンはゼウスの筋を盗み、鍛え直してゼウスを蘇らせ、戦いに復帰させる。ニサ山へ逃げたテューポーンを追い、そこでテューポーンはモイライから「無常の果実(ephemeral fruits)」を与えられ、力を弱められる。